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#95 「ちゃんとやれ」は言葉足らずすぎる

先日、学生さんの体幹トレーニングをしているときにうっかり学生さんに「ね、ちゃんとやればできるんだよ!」といってしまい、あわてて

「ちゃんとやればというのは、『練習を積み重ねれば』という意味だからね。〇〇さんがちゃんとやっているのはわかっているからね。」

と補足しました。


わたしは「ちゃんとやりなさい」といわれるのがむちゃくちゃ嫌いな子供でした。

学校の成績や習い事、部活での練習について、親から、先生から「ちゃんとやりなさい」といわれると、「えっ?ちゃんとやってるけど・・」という戸惑いと、「なんでそんな言い方するんだろ・・」と子供ながら不信感というかイラっとした気持ちを抱えていました。

あまりに言われようもんなら「んじゃ、同じようにやってみせてよ!!(どうせできないくせに!)」と心のなかで毒づいてました。


いまにして思えば「ちゃんとやりなさい」という言葉の裏には「しっかり確認しなさい」とか「わからないことは先生に聞きなさい」とか、そういう、親や先生なりの考えが表れていなかっただけかもしれません。

でもね、受け取る側にしたら「ちゃんとやりなさい」と言われてしまうと「ちゃんとできてない、あなたは全然ダメ、怠けてる」というメッセージと受けとってしまう。


そういえば何ヶ月か前にも体幹トレーニングの体験に来た学生さんに対して、レッスン中に親御さんから同じような言葉を投げかけられていることがありました。

その学生さんは、とある競技でかなりの上位成績をおさめていることもあって、親御さんもとても期待している様子。きっと、もっと強くなってほしいという思いが強くあるのだと思います。

実際、柔軟性も高く筋力もかなり強い。すでにアスリートの身体でしたが、体幹まわりはある一定の動きに対しては弱かった。なので、体験してもらったトレーニングも回数が重なるとできなくなったり、徐々に正しい姿勢を取れなくなったりしてました。

そういうときに見学していた親御さんから「ほら、ちゃんとやってよー」と何度も声がかかる。学生さんは戸惑いの表情を浮かべる。

いや、そもそもこのトレーニングがそんなにすんなりできたらもう鍛えなくていいわけだからさ、できなくて当然なんですけど・・ということばはグッと飲み込んで(笑)

「やり方は合っているけど、まだお腹の下のほうの筋肉の使い方に慣れていないね」とか「無意識に腰でバランスを取るクセがあるからうまく筋肉を使えてないだけだね」という感じで、なるべく親御さんにも「ちゃんとやってますよ~」というのが暗に伝わるようにフォロー。

もしかしたらその学生さんは「ちゃんとやれ」といわれるやり取りには慣れているかもしれませんが、わたしはちょっと気が気でなかったです。


そんなわけで、ふだんからお客さんに掛けることばには気をつけているのですが、つい言葉足らずになってしまうときがあるもんだなと改めて感じました。


「ちゃんとやれ」という言い方は、”できていない”という事象を見て相手の状態を勝手に推測して注意している、かなり配慮に欠ける言い方だと思うので口にしないように心がけています。


もし気に入っていただけましたら、次回の更新もぜひ楽しみにお待ちいただけたら嬉しいです。