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お年よりと絵本をひらく 第2回 「声を楽しむ、音とことばの絵本」中村柾子

声を出すって気持ちいい 毎週デイサービスを訪問していると、声の出にくいお年よりがいらっしゃいます。声は元気のもと。朗らかな笑い声や話し声を少しでも取り戻せたら、と思います。でも訓練で声を出すのは、気が滅入ります。声を出すって気持ちいい、と思える方法があると、いいですよね。   『あーと いってよ あー』を、持っていった日のことです。大きな声で、あーと言ったり、上を向いて、あーと言ったり、思いきり音をのばしたり、弾ませたり、絵本の主人公のすることを、皆でまねてみました。 す

    • お年よりと絵本をひらく 第1回 「食べ物絵本で、つながる」中村柾子

      お年よりも絵本が好きなのでは? 私は、保育現場で30年以上、子どもたちと絵本を読んできました。それは、とても楽しい日々でした。退職後考えたことは、「お年よりも絵本が好きなのでは?」ということでした。すぐれた絵本は時をこえ、国もこえて、子どもたちに迎えられた……それなら、年齢をこえても、絵本は喜ばれるはず。幸いなことに近所のデイサービスが、「週1回、午後の1時間をどうぞ」と、受け入れてくれました。   でも、いざ行くとなると絵本選びに迷います。あれこれ考えた末、頭に浮かんだ絵本

      • 『ブニーとブールド』新刊著者対談つづき

        福音館書店では、6月に新刊『ブニーとブールド』を刊行しました。お金はもちろん、パンも大好きという2ひきのブタの貯金箱を描いた愉快なお話です。前回につづき、この本の作者・山下篤さんと、お話の絵を描いてくださった広瀬弦さんの対談をお届けします。 お話に登場するキャラクターたち 広瀬 お話の中に意地悪なカラスが出てきますけど、あのカラスはいいですね。 山下 絵本から、もう少し長いこの物語を書こうと思ったとき、カラスのことは考えました。できれば、悪者になってくれる登場人物がほし

        • 『ブニーとブールド』新刊著者対談

          福音館書店では、6月に新刊『ブニーとブールド』を刊行しました。お金はもちろん、パンも大好きという2ひきのブタの貯金箱を描いた愉快なお話です。 今日から2回にわたって、この本の作者・山下篤さんと、お話の絵を描いてくださった広瀬弦さんの対談をお届けします。お二人に、作品作りの背景や貯金箱にまつわるお話など、あれこれたっぷり語っていただきました。 そもそもの始まりは・・・ 広瀬 このお話はどのくらい前から書き始めたんですか? 山下 この形になったのはもう3年以上前。でも、実は

        お年よりと絵本をひらく 第2回 「声を楽しむ、音とことばの絵本」中村柾子

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         きつね山の女の子 第一回

        お年よりと絵本をひらく 第1回 「食べ物絵本で、つながる」中村柾子

        ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第1話

        著者対談「これが好き!」が作品につながる 3

          きつね山の女の子 第二回

          山元ときえ 作 七、ボロボロになったくま太ズボン 「ただいまー!」  げんかんのドアをあけると、外に出ようとしていたお母さんと、ぶつかりそうになりました。  そのしゅんかん。 「るみな、いったい、どこへ行っていたの!」  お母さんの大きな声が、頭のうえからふってきました。 「くらくなっても帰ってこないから、これから、あなたをさがしにいくところだったのよ!」  それだけいうと、お母さんは力がぬけたように、だまりこみました。ところが、るみなのズボンを見て、また、新しいひめいをあ

          きつね山の女の子 第二回

          花音とモモのふしぎなぼうけん 第三話「春のオオカミ」

          柚木一乃 作 安井寿磨子 絵    その朝めざめると、部屋の中が昨日よりひんやりとしている感じがして、花音(かのん)はいきおいよくベッドからとびおりました。さいきん、どんどんさむくなるので、雪がふるのではないかと、とても楽しみにしているのです。  あわててカーテンをあけますが、外はいつもどおりのけしき。雪はまだのようでした。  花音は急にさむくなって、大いそぎできがえると、あたたかいリビングへと、かけこみます。モモがうれしそうに、しっぽをふってむかえてくれました。だきつくと

          花音とモモのふしぎなぼうけん 第三話「春のオオカミ」

           きつね山の女の子 第一回

               山元ときえ 作  るみなは、ふしぎなハンカチを一まいもっています。白地に、赤いコスモスの花が、一りんだけししゅうしてあるハンカチです。  もう、一年いじょうもつかっていて、せんたくをくりかえしているのに、赤いコスモスのししゅうは少しも色あせていません。たった今、糸をさしおえたばかりというように、つやつやとかがやいているのです。  そのハンカチは、るみなが小学二年生だったきょ年の秋、きつね山でいっしょにあそんだ、見知らぬ女の子からもらったのです。でも、るみなは、今

           きつね山の女の子 第一回

          花音とモモのふしぎなぼうけん 第二話「キリンのこもり歌」  

          柚木一乃 作 安井寿磨子 絵  花音(かのん)が学校から帰ると、モモが茶色のまゆをぴくぴくさせながら、ねむっていました。夏のはじめの光にてらされたまゆ毛に、白い毛がまじっています。花音がそっと近づくと、とつぜんモモはおきあがりました。そのとたん、「さんぽにいこう」と力いっぱいしっぽをふります。  すっかり年をとって、このところは、お昼ねばかりのモモですが、さんぽとなるとじっとしていられないのです。  今日は二人で家の近くにある、しばふ広場に行ってみることにしました。つゆあ

          花音とモモのふしぎなぼうけん 第二話「キリンのこもり歌」  

          花音とモモのふしぎなぼうけん 第一話「湖のしっぽ」  

          柚木一乃 作 安井寿磨子 絵    今日は家族でしおひがりです。 花音(かのん)はリュックをせおって、元気にテーブルのまわりをとびはねています。そのうしろを、しっぽをふってモモがついていきます。  モモは、花音が生まれるよりも前からこの家にいる大きな犬です。せなかは黒く、おなかは白、大きなひとみの上には茶色のまゆ毛があります。  花音が生まれると、お父さんがモモに、 「モモは、花音のお姉さんになったんだよ」 と、おしえました。すると、モモは花音の顔をじっと見つめ、わかったと

          花音とモモのふしぎなぼうけん 第一話「湖のしっぽ」  

          ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第6話

          月夜のトラとお正月  米の収穫が終わると、刈り取りの終わった村はずれの水田に、水牛が放されました。そのころは、水牛は、犂をつけて田んぼを耕す貴重な労働力となっていたので、どの家でも水牛をたくさん飼っていたのです。  ある日、その田んぼの周りでトラの足跡が見つかりました。数えると水牛が減っているようです。村の男たちは話し合って見張りに行くことにしました。午後遅く、出かけようとするお父さんに、チャンはついていこうとしました。でもお父さんは言ったのです。 「今日は、おまえのことは

          ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第6話

          ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第5話

          「夜」と「森」の住人たち  チャンたち村の子どもたちが、昼間には楽しく駆けまわって遊ぶ家の周りも、夜はまるで見知らぬ別の世界のようになりました。暗闇が支配する夜は、人間が思うようにふるまえる時間ではありません。夜は、トラやヤマネコなど森の動物たちが動きまわる時間でもあり、そして、なんと言っても「ピー(精霊、妖怪)」が支配する世界となるからです。  何度も言いますけれど、そのころは電気がなかったのですから、夜は漆黒の闇だったのです。もちろん、月は夜を照らしてくれました。満月が

          ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第5話

          ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第4話

          洪水、そして収穫の時  8月の終わりのころ、ずいぶんと雨が降りつづきました。夜中じゅう、雨は滝のようにザーザー降り、朝になってもまだ降っています。チャンのお父さんが窓から空を見上げて、お母さんに言いました。 「豚を少し高いところに連れていったほうがよかろうな」  豚は高床式の家の、床下の柵の中にいるので、まだ濡れてはいませんが、もし水が上がってきたら柵の中で溺れてしまうかもしれません。お父さんは、暗く垂れ下がるような空をもう一度見上げてから、ハシゴを降りていきました。そして

          ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第4話

          ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第3話

          山の畑にはみんなが集まる  ラオスには雨季と乾季があります。雨季に入るのは4月ごろで、雨はもちろんずっと降っているわけではありませんけれど、よく降ります。10月半ばごろになると急に空気がカラッと乾いたようになって、乾季が始まります。乾季になると、もう雨はほとんど降りません。  雨季には、種まき、田植え、草取りと、農作業が忙しくなります。そして乾季には、収穫をして稲を脱穀し、米倉にお米を入れる作業があり、休む間もなくまたすぐに次の畑の準備を始めなくてはいけませんでした。だから

          ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第3話

          ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第2話

          子どもたちの日々  8歳の女の子チャンは、ナーヤーン村の小学2年生です。2歳年下の妹のフォンも小学校に行きたいのですが、フォンはまだ行けません。それは「入学適齢期」になっていないからでした。  もっともチャンが小学生だったのは、もう何十年も前のことなのですけれど、そのころは今と違って、子どもの誕生日をちゃんと覚えている家なんて、あまりありませんでした。田植えのころに生まれたとか、稲刈りのころのお月さまがちょうど三日月のときに生まれたとか、そんなふうに子どもの生まれた日を覚え

          ラオスのひと昔前に、小さな女の子だったチャンの話 第2話

          著者対談「これが好き!」が作品につながる 3

          対談の最終回は、おふたりが経験されてきた「文房具」のお仕事の話題です。また、対談のあとにはツンタのように「ノート」を作っていただきます。どうぞお楽しみに! 文房具が好き!―この物語の、主人公がノートを手作りするという発想は、ななもりさんが以前文房具のデザインをする会社で働いていて「ノートって、いろんな種類があっておもしろい!」と思ったことがきっかけになったとうかがっています。原稿をいただいて、たかおさんに挿絵をお願いしたあとで、たかおさんにご自分も文房具のデザインのお仕事を

          著者対談「これが好き!」が作品につながる 3

          著者対談「これが好き!」が作品につながる 2

          ななもりさんとたかおさんの対談の続きです。 前回は、色が好きという話から、大グモの画家「オオナッパスキー」が登場する場面の話になりました。オオナッパスキーは、背中に怪物の顔のような模様がある大グモ。気むずかしくて、村を出て森のなかにひとりで住んでいる、ちょっと怖い存在の登場人物ですが、おふたりとも彼にとても思い入れがあって・・・・・・!? オオナッパスキーが好き! たかお この物語には、はりねずみにクモに、うなぎもいるし・・・・・・あらゆる分野の種が登場するというのもおもし

          著者対談「これが好き!」が作品につながる 2