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点滴

口から摂取した覚えのあるのは
ヨーグルトとお茶だけだったが
急にお手洗いで具合が悪くなり
俯いていたら嘔吐してしまった。
と同時に全身から汗が吹き出て
瞬く間に体調を崩してしまった。
摂取した水分を全部失ったのに
身体中から冷や汗が止まらない。
すると末端から徐々にしびれて
呼吸がどんどん浅くなっていく。

賢い脳みそは脱水症を予測して
水分を取りに行くよう指示する。
目の前はすでに白けているので
立ち上がって気絶する可能性も
脳裏をうっすら過ぎったけれど
自分に相談しながら動いてみる。

まず上長に連絡しなきゃと思い
這うようにして現状を報告した。

ここからは自分の体調との戦い。

やっとのことで個室を這い出る。
洗面台で見合わせた自分の顔が
お手本のような蒼白具合で笑う。
特に唇の色味が一切感じられず
心なしか頬も痩せこけて見える。
口をゆすぐついでに少し含んで
微かに「気分」が回復していく。

平時では最も飲みたくない水を
飲まなければならないくらいに
身体は限界を訴えていたけれど
できるならまともな水が欲しい。
欲を言えば塩分や糖分を含んだ
水ではない水分が飲みたかった。

幾分症状が落ち着いたところで
ヨロヨロ歩きゼーハーしながら
何とか自動販売機まで辿り着く。
くそっ。こういうときに限って
そういう水は最上段に位置する。

ポカリスエットの偽物みたいな
イオンウォーターという飲物を
手に入れたところで記憶がない。

受け答えに応答した覚えはある。
鮮明に発音したつもりでいるが
会話になっていたかは自信ない。

というわけで簡易ベッドの上で
点滴を打って無事回復しました。

特に問題もなさそうとのことで
さっと支払いを済ませて終わり。

心配した上長が明日も休むよう
手配してくれたので明日も休み。

♪休暇の響きだけで
元気になれる気がしたよ
♪ささやかな喜びを
つぶれるほど抱きしめて

夏ですね。随分日が伸びました。

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