動かない時計と私
僕の部屋には、動かない時計がある。
別に僕が生まれたときに買ってきた時計でも、100年休まずに動いていたご自慢の時計でもなんでもなくて、いつの間にかそこにあって、知らない間に止まっていた平凡な時計だ。
大学の同期がみんな就職してる中、大学を留年して今だに就職活動している僕は、そんな動かない時計に自分を投影させて、感傷に浸る毎日を送っていた。
そんなある日。
朝目覚めて、ふとその時計を見てみると、なんと、時計の針が動き出していた。
なぜ動き出したのか理由は分からない。
しかし僕の心はそんな疑問が浮かぶより先に、不思議な高揚感に満たされていた。
止まっていた時間が動き出したんだ!
僕は一瞬そんなことを思ったが、すぐに、僕の心の中に素朴で残酷な疑問が生まれた。
あれ?僕の人生、なんか動き出したっけ?
正直な話、別に就職活動も今の所上手く行ってない。第一希望の会社もこの前落とされた。
コロナの影響もあって、新しい人にも会えてない。
うーん、なにか変わったっけ?
でもそう言えば、昨日ふと禁煙しようと思ってタバコ吸わなかったなぁ。
あと、僕の趣味であるポーカーのYouTube始めようと思って、動画編集始めたなぁ。
NISAを始めようと思って、ネットでめちゃめちゃ調べたなぁ。
...
そんな事を考えながら、また時計を見てみると、もう、時計は動いていなかった。
その時、僕は、思った。
なるほど。
皆より進みは遅いけど、少しづつ、進歩はしてるのかもな。
明日もこの時計が少し進んでいることを願いながら、僕は昨日やり残したポーカーの動画編集に取り掛かった。
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