「子どもの素直な好奇心や想像力を守り、大人になっても心が固まる必要のない世界を作りたい」~Buddy's Voice Vol.1~
2020年3月に立ち上がったWe are Buddiesプロジェクト。
このプロジェクトでは、子どもと大人ボランティアがバディとなり、オンライン・オフラインで、遊んだり、話したりしながら、細く長い関係性を築いていく。バディとなった二人は、月に2~3回オンライン、月に1~2回オフラインで、 時間を過ごす。対象年齢は、5~18歳。保護者の方だけが子育てを頑張るのではなく、多くの大人が関わり、登場人物みんなが力を抜いて、優しい気持ちになれる社会を目指すべく、立ち上がった。
このプロジェクトには、大人ボランティアの存在が必要不可欠だ。今年度にボランティア(バディ)として参加しているメンバーたちは、このプロジェクトの土台づくりにも積極的に関わっている。
バックグラウンドも得意分野も異なるバディたちが、なぜWe are Buddiesに参画し、どんな経験をし、これを通して何を実現しようとしているのか。代表でもありバディでもある加藤愛梨が、バディたちにインタビューを重ねながら、発起人の意図とは別のところにある、バディにとって、子どもにとって、社会にとってのこのプロジェクトの意義を探求していく。そんなバディたちの生の声を "Buddy's Voice" にてお届けしていきたいと思います。
第1回目は、現在酒類メーカーに勤務し、中国の事業推進に携わる岡田美衣(おかだ みえ)さん。中国語が堪能な岡田さんは、中国にお酒と食を味わう文化を創造するべく、現地メンバーのサポートなどを行っている。
小学校2年生の女の子のバディとなり、2020年4月からスタートし、あっという間に半年が経った。今は月に1回以上は必ずオフラインで会い、月に2~3回ほどオンラインでコミュニケーションをとっている。
共通の世界を増やしていくこと
加藤愛梨(以下、愛梨):今日はありがとう~。初期バディとして参加してくれているからこれまでも色々話してきたけど、まだ話されていない美衣の心の内が聴けるといいな。Sちゃん(バディの相手)とはどんな風に時間を過ごしているの?
岡田美衣(以下、美衣):出会ったばかりの頃はコロナ影響もあってオンラインが中心で、Sちゃんの好きな本や手作り作品の話を聴いたり、LINEゲームで遊んだりしてました。コロナが落ち着いてきた辺りからオフラインでも会うようになって、一緒にお菓子作りをしたり、とあるイベントのボランティアを一緒にやってみたり、映画を一緒に見に行ったりと色んなことして遊んでいます^^Sちゃんは、得意なことがたくさんあるし、自分のやりたいこともはっきりしているから、色んなアイディアが出てくるの!最近は、次回オフラインで会うとき何して遊ぶ〜?みたいな感じで一緒にブレストっぽいことして計画立てることも増えてきたかも。
愛梨:わ~、二人で何して遊ぶか相談して決めている感じなんだね。
美衣:そう!Sちゃんがおすすめのアニメを教えてくれて、それを私がNetflixでみて、オンラインのときに感想を伝えて…みたいなことをしていたら「あ、今度映画やるから、一緒に観に行く?」みたいな流れになったこともある!決めようとして決めるんじゃなくて、こういう風に自然な流れで決まっていくのが嬉しい。あと、お互い知っている共通の世界が増えるのもとてもいい。話題が尽きないし、「あのシーンが好きだった!」という言話を聞くと、「あ~、Sちゃんはこういうシーンでこう感じるんだなぁ」と、Sちゃんについての理解も深まる。
愛梨:大人同士でも、共に経験したり、相手の好きなものを知っていく中で、お互いの理解を深めて行ったりするもんね。オフラインとオンラインとの使い分けとか、日程調整の工夫とか、もしあれば教えてくれる?
美衣:今は、月に1回は最低限オフラインで会うことにしているのね。大きい★日を決めて、そこは絶対にリスケしないようにして、★日と★日の間をちょこちょこオンラインで埋めていくようにしている。イメージで言うと…大きな石をボンっておいて、その間に小石をちょこちょこ置いていく感じ。大きな石の日はオフラインで時間もたっぷりとって、小石の日はオンラインで時間は短め、予定が合わなくなって最悪飛んでしまってもお互いそんなに気を揉まず、大きな石の日があるから大丈夫だね!って思えるように。
愛梨:なるほど!平均すると月1オフライン、月3オンライン位だと思うけど、月じゃなくて石の概念なんだね。(笑)既存の時間軸にハマってない感じが、美衣とSちゃんらしくて素敵だなぁ。
美衣:お互い心地よく続けていくためには、共に自然体でフラットな関係でいられることが大事だなと思ってるんだ。私はバディとして子どもと遊んであげているという感じは一ミリもなくて、単純に一人の友達として、Sちゃんとの関係を楽しんでいる。アニメも含めてSちゃんのおかげで新しい世界をたくさん知れたし、Sちゃんの視点にはいつも驚かされる。一緒に過ごしていても、「こんなところに気がつくんだ…」という発見が、毎回本当に面白い!あと、想像力が本当にすごくて。。。
愛梨:想像力ねぇ…気になる!例えばどんなところ?
美衣:この前Sちゃんとそのお友達が遊んでいるのを観察していたことがあったんだけど、そこら辺にあるものを使って、「ここは学校です!次は魔法の時間です~」とか言いながら、どんどん空想の世界で広げていくの。昔自分もやっていたなぁと童心に帰りながら観客として楽しんで観てました(笑)今は魅力的なゲームとかデジタルとかが世の中にたくさんあるけど、Sちゃんはそんなものがなくても自分自身で遊びを創りだすことができる。Sちゃんとは、デジタルに頼らずに、既にSちゃんが持っているクリエイティビティや発想力を活かして遊べるアナログな遊びをしたいな、ってそのとき思った。
愛梨:素敵な関係性だね。そんなSちゃんと関わるときに意識してることってある?
美衣:Sちゃんは、しっかりしてて、わんぱくで、規律正しくて、雰囲気でいうと生徒会長っぽい感じ?笑。今は大丈夫そうだけど、今後年を重ねるにつれて、自分に色々課しすぎてしまうとか、怠けてる自分が許せないとか、自分で自分を追い込んでしまうとか、もしかしたらそういう未来がやってくるかもしれない、と最近思ったりもしています。答えがすぐに見つかることばかりじゃないから、道草しても良いと思うし、そんなときに息抜きの相手になれたらいいな、って思う。何年後か、何十年後か、わからないけど。(笑)
愛梨:そこまで未来のことを想像しているんだね。いま、友達みたいな感じの関係性になれているからこそ、バディプロジェクトの枠を超えた、二人の未来も想像できてしまう感じがするね。
心が固まった大人を増やさないために
愛梨:ここからは少し美衣自身のことを聞いていくね。美衣はなんでバディをやろうと思ったの?
美衣:私ね、子どもの発する言葉や行動が本当に正直でピュアで、それが大好きなの。自分には、5歳の甥っ子ともうすぐ2歳になる姪っ子がいるんだけど、二人のはっとさせられる言動や行動がとても愛おしくて…。そんな私自身もありのままでいること/いられることを自分の中でとても大事にしていて。だからこそ、心に鎧をかぶっている人(特に大人)がいるととても気になってしまって、それを剥がしたいと思うんだよね。ありのままの状態にいろんな層が重なって、心が動かなくなっていって、感受性にも蓋が被さっていってしまっているように見える。私はずっとクラリネットをやっているんだけど、音楽の世界ではそれが顕著に表れる。心が固まっている人は、音を感じながら吹くということがなかなかできない。周りの人の奏でる音にも耳を傾けることができないんだよね。大学の時所属していた楽団でも、そういう状態に直面することが多く、それが悲しくて、そういう人とはよく対話をするようにしていた。
愛梨:切ない気持ちだっただろうなぁ。その対話は上手く行った?
美衣:ううん、それがなかなか上手く行かなくて、途方に暮れてしまうことが多かった。そんなときに、楽器の先生に言われた言葉がすごく衝撃的で、今でも頭に残っているんだよね。「0に1をかけても100をかけても0は0です」と。(0=心が完全に固まってしまっている状態)そのときは、「そんなことない!0は0でも、0.00001くらいはあるかもしれない」と強く思って、可能性を信じて色々試行錯誤しながら動き回っていた。でも最近は、多くをかけるよりも、0にしないよう予防をしていくことの方が大事なのかな、って気がしてて。限りなく0を産み出さない世界。
愛梨:0.000001に数をかけてプラスにしていくことを諦めたわけじゃないけど、0にしないようにすることに意味を感じるようになったんだね。
美衣:うん、そう、0を諦めるわけじゃないけどね(笑)愛梨からバディの話を聞いたときに、まだ0からは程遠いところにいる子どもという存在に、家族以外でも心を通じ合えるような人ができることで、彼らのありのままの感受性や好奇心が守れるんじゃないかな、と思った。0を生み出さないために社会を変える!って程の意気込みではないけれど、そういった出会い一つ一つを大切に積み重ねていくことで、世界が少しずつ変わっていったらいいなって思う。だから参加した!
心の奥にある「本当の願い」を見つめる
愛梨:実際バディをやってみて、美衣自身はどんな感じ?変化とか、学びとか、あった?
美衣:バディ側としても結構学びがあるんだよね。Sちゃんと関わる中で、昔の自分を思い出したり、それが今の自分にどうつながっているのかを考える内省の機会になっている気がする。
愛梨:他人と向き合うことで、自分と向き合う機会になったりするのかもしれないね。
美衣:うん、それはすごくあると思う。あと、研修での学びがすごく深くて、それ以降、Sちゃんとのコミュニケーションはもちろん、職場などの周りの大人たちとのコミュニケーションも変わった。(研修レポートはこちら)研修での大きな学びは、表面的にでてくる言葉や行動の奥に、その人の本当の願いがあり、言葉をそのまま受け取るだけではなく、観察し、願いを探ることが大切ということだったんだけど。大人も子どもも、みんな本当の願いがあって、でも自分の願いがわからなくなっている人が多いような気がする。自分の願いと所属会社の願いを混ぜてしまったり、相手と自分の願いを混ぜてしまっていたり。「これは本当は誰の願いなのか?」という問いは自分の中にいつも持つようになった。あ!最近でも、普段口数が割と少ない旧友とやりとりをしていた時、「こやつの本当の願いは何か?」という視点を持って会話をいつもより丁寧重ねてみたら、いつもよりたくさん胸の内を話してくれたことがあって。それはすごく嬉しかったなぁ~。
愛梨:大人子ども関係なく、表面的な行動の奥に隠れている、本当のその人の姿を見るようになったんだね。想像以上に、壮大な学びだった!(笑)
親子間の間に立つ、調停役
美衣:美衣:今の話からも繋がるんだけど、バディで身につけた、いろんな立場の人の願いを聞くスキルを、バディの中だけにとどめておくのが勿体ない感じがしている。今後、折り合いがつかない親子とかがいるときに、当事者と当事者の間に立ち、それぞれの願いを聞き伝える代弁者の役とかができそう。例えば、最近姉が甥っ子に対してイライラしている光景をみることが多いけど(笑)、そういうときに間に入って姉の気持ちを代弁して甥っ子に伝えたりしてみたいな。
愛梨:世界が広がっていくね。親子にすら留めなくてもいいかもしれないしね。あらゆる、折り合いのつかない集団。では、最後に一言、メッセージをお願いします~!
美衣:最近ある方が発せられた「みんながもっとわがままになったら、この世界はよくなる」という言葉にすごく共感したの。心が固くなって、自分の願いもわからなくなってしまっているような状況にの人が、たくさんいる。彼らが、かつて子どもだったころのように、「本当は嫌だったんだ」とか、「これがやってみたい!」とか、心の声を言えるようになれば、社会は良くなっていくと思う。子どもの願いは守りたいし、大人も、自分の願いを認識して、発せるようになってほしい。
正直なところ、美衣さんが、半年の間にこれだけ多くのことを学んでいることに驚かされた。全くはじめましての子どもは、ある分け方によっては、バディにとって、属性の異なる人間だと思う。その子と、一人の人間としてしっかり向き合うという経験が、どれだけ尊いことで、どれだけ学び深いことなのかを、改めて感じた。
We are Buddiesの話をすると、どうしても子育て当事者(保護者とその子ども)に焦点が当たることが多いが、バディとして関わる第三者にとっても、とても価値のある経験になっていると感じる。それを世の中の方々に伝えていくために、2回目以降のインタビューも続けていきたい。
次回もお楽しみに!
INTERVIEW & TEXT :加藤愛梨
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