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カーフキックは禁止すべき技か?


 皆さん、こんにちは。格闘技大好き、木賃ふくよし(芸名)です。
 はい。ワタクシ、実はアニメはあんまり観ない(年間1~2本。ただし海外アニメと劇場用アニメ映画は別カウントとする)んですが、何故か多くの方にアニメをたくさん観ている人だと思われがちです。
 で。その逆に格闘技やプロレスが大好きだと言うと、なんか意外そうな顔をされます。

 (´・Д・)」 なんでだろ?
  ↑
  こんな顔文字を使うのでオタクっぽいと思われる模様。

 オタクっぽいかと言われると、格闘技の話に熱が入ると、そりゃもうベラベラベラベラ一方的に喋りますから、ジャンルが違うだけで単なる格闘技オタクなんですけどね。ええ。

 とは言え、大半の人が興味を示さない格闘技の熱い話をしてもドン引きされるだけなので、普段は話さないようにしてますし、このnoteでも控え目にしてます。

 ※ こんなのは書いてますが。


 しかし! しかしだ。
 昨年末の朝倉海vs堀口恭司の試合以降、急激にカーフキックが大流行していると言う。


 (´・Д・)」 流行?


 いや、イマイチわからんが、まあ、流行するのはいい。

 ただ、このカーフキックを、「反則だろ」とか「つまらない試合運び」「カーフキックを禁止しろ」とか評されてる、と聞いて、


 (´・Д・)」 へ? なんで?


 となったので、ちょっと解説する。
 なお、この文章は先日、Twitterに勢いだけでブワーッと書いちゃった長文の焼き直しとして大幅に加筆修正しただけだが、要するにブワーッと書いちゃうぐらいには格闘技オタクなのである。要するに、鉄道模型について早口で熱く語ってる鉄オタのようなモンだと思っていただけると大体正解である。


 まず、カーフキックとは何か?

 とりあえず、この動画を観て頂ければわかるが、非常に打点の低い蹴りである。


 カーフキック(ふくらはぎ蹴り)は、ローキック(下段蹴り)の一種である。ぶっちゃけ、今回話題になるまで、ワタクシはこの「カーフキック」なる名称を知らなかった。
 ローキックは相手の腿から足首までを蹴る技だが、コレを部位によって打ち分けはするものの、特にカーフキックなんて名称は使った事がなかったからである。使ってないと言うか、知らんかった。

 格闘技における技の名前には概ね2種類のパターンがある。「技が持つ固有の名前」「狙う(当てる)場所によって名前が決まる場合」だ。

 平たく言うと、技としては「ストレートパンチ」でも、腹部を狙えば「ボディブロー」という訳だ。この場合、技は「ローキック」だが、ふくらはぎを狙うので「カーフキック」となる。厳密には狙う場所でフォームやスタンスが異なるので違う技とも言えるが、細かいところは割愛しよう。

 で、幾つかの動画を観て、「ああ。膝より下のローキックをカーフキックと区分したのか」と知った感じである。てか、格闘技をやってたのは20年以上前の話なので、コレで合ってるのかどうかは自信がない。たぶん合ってると思う。たぶんね。

 そして、このカーフキックですが、ローキックの一種なので、普通に使う一般的な技である。
 だが、通常のローキックとハッキリ区別される名前がなかった(と思う)ぐらいには、有用な技ではなかったのである。
 詳しくは後述するが、決め技としてはほぼ使われてこなかった、と断言してもいいぐらいだ。

 理由は簡単で、ムエタイやキックボクシングはアップライト(垂直)に構え、重心は後脚を中心とするからだ。
 前脚はインパクトの瞬間以外は踏み込まずに浮かせる。だから、ふくらはぎへの有効打を与えるのは困難なのだ。
 動画のカーフキックの一撃目や二撃目を観て頂ければわかるが、前脚を浮かせてあるので有効打になっていない。わかりやすく言えば、「暖簾に腕押し」である。しなる木の枝を支えずに折るのは難しい。つまり、相手の打撃の踏み込みに合わせなければ、効果は薄いのである。
 しかし、コレだけは言っておく。


 痛いぞ。


 受け流したから痛くない、なんて事はない。痛い。特に、ふくらはぎの付け根は筋肉の鎧を纏いにくい場所だし。めちゃくちゃ痛い。ただ、痛いなんてのはダウンの理由にならないと言える。
 当然、プロ選手だから鍛えてるだろうし、不思議と「試合中の痛みは意に介さない」のである。多分アドレナリンとか脳内麻薬が出てて、痛みをカットしてるんだろう。
 ただ、誤解してほしくないが、痛くなくても、脚の機能は馬鹿になる。

 わかりやすく言おう。

 長時間正座して、

 シビレが切れると立てなくなるだろう?


 ローキックを受け続けてると、それになる。マジで。立っていられなくなる。意思とは無関係に、立っていられなくなるのだ。
 無論、鍛えるほどに耐久力は増すし、カット(この場合はカーフキックの受け流し)が上達するにつれてダメージは減る。反応が早いほど、後脚に重心を移せる訳だ。
 しかし、ローを受け続け、ダメージが蓄積するほどに、脚の機能は下がり続ける訳で、そうなるとどうなるか?
 踏み込みと戻りが遅くなり、つまり、シフトウェイトが鈍くなる。
 ボクシングで言えば、ボディをひたすら叩いて動きを止める感じだ。ボディを殴られて喘いで息を吸い込んだ所にボディの強打を食らって立てなくなる。それを脚でやっちゃう版。要するに、ローを食らえば食らうほどローが効きやすくなるんだわ。

 で、じゃあ、

 なんでそんな便利な技を

 今まで使ってこなかったの?



 って疑問が出てくると思いますが。いえ。使ってます。最初に言ったように、一般的な技なんですよ。

 このカーフキックが特別な意味を持ったのは、基本的に「総合格闘技」という打撃あり、投げあり、寝技ありのルールだ。

 総合格闘家などは、体躯もあり、打撃だけでなく、タックルを考慮する必要がある。
 相手に体当たりするイメージをしてもらえればわかると思うが、タックル「する側」は姿勢が低くなる。同時に、タックル「される側」も相手のタックルに膝を合わせたり、タックルを切る必要があるので前脚に重心が行く。
 そう。おわかりいただけただろう。前脚に重心は、自分の上半身とマットを、前脚で繋いだ状態。しなる木の枝が固定されているのだ。

 つまり、こうなると重心の掛かった前脚は、ローキック(中でもカーフキック)の格好の的になるのだ。
 これが総合格闘技においては割とスタンダードな技となる理由だ。

 で。これが何故、立ち技打撃系で流行したのかはイマイチわからない。なにしろ普通の技だし、突如として流行する理由がない。

 正直、格闘技から離れて20年以上経つのでわからないが、可能な限り分析してみた。

 ワタクシの分析では、誰も使ってこなかった技(※後述)なので、対抗策が練られていないのが原因の1つだと考えている。
 そんな技で来ると思わなかった、ってのは格闘技に限らず、何においても命取り。
 「空手経験者」vs「喧嘩強い人」なんかだと、空手経験者の後ろ回し蹴りやバックハンド(裏拳)が決まりやすい。理由は簡単だ。


 「突然、目の前で背を向けられるので、どう対処していいかわからない」のである。


 通常、一回転する分だけ軌道が大きくなり、初動が遅い後ろ回し蹴りや裏拳が決まるのは、目の前でやる不意打ちだからである。反応が遅れるのだ。
 つまり、カーフキックなんて使ってくると思ってなかったから反応できなかった、という可能性だ。

 そして、もう1つの原因は近年の打撃系格闘技の、K.O.勝率の高さだと考えている。

 ワタクシは同意しかねるが、ノックアウト(K.O.)は格闘技の「華」とされる。
 派手に相手を負かした方が、勝敗はハッキリするし、見栄えもいい。顧客満足度は高いだろうし、興行としても好まれる訳だ。

 それだけではない。
 ムエタイなどは1ラウンド3分の5ラウンド。これが打撃系格闘技の基本ルールではあるが、5分3ラウンドなどを採用している団体もある。
 しかし、近年は選手・選手生命への安全性確保を考慮してか、3分3ラウンドを採用している団体が多い。
 つまり、長期戦や判定勝ちを視野に入れて、下手に出し惜しみをするより、短期決戦で畳み掛ける方が闘いやすい土壌になっているのである。

 そう。ボクシングでは選手生命と長期タイトルホルダーを意識してクラウチング(前傾姿勢)は廃れたが、キック界はその逆に進んだ可能性があるのだ。

 相手からK.O.を奪うには当然、致命打を与える必要がある。
 致命打は大きく分けて2種類だ。
 渾身の一撃を当てるか、脳震盪を起こさせるか。

 そりゃ棒立ち状態の相手を、渾身の一撃で殴ったら、まず立てない。だが、相手は動いてるし、こっちも動かないとやられるし、防御も攻撃もされる。つまり、渾身の一撃を当てる事は困難なのだ。
 では、狙うとすれば脳震盪となる。
 脳震盪を起こさせるには、渾身の一撃の威力よりも、相手が反応しきれないスピードや軌道、角度が重要。
 つまり、威力はあってもスピードや軌道で劣る頭部への蹴りは、パンチよりK.O.率が低くなってしまうのだ。
 顔面へのパンチでK.O.を狙いに行けば、当然重心は前に偏る。
 要するにキックボクシングのボクシング化が起きていたのではないだろうか。
 K.O.を避けるために前傾を捨てたボクシングと、K.O.する為に前脚に重心を掛けたキックボクシング。
 そこに、大した技じゃない、と意識していなかったカーフキックが見事に突き刺さったのではないだろうか。

 ちなみに、カーフキックが普通の一般的な技だと言ったり、誰も使って来なかったと言ったり、どっちなんだよ!? と思った人もいるだろうが、簡単に説明する。
 前述のようにローキックの一種なので、何一つ技自体は特別ではない。
 腿を狙ったのに前脚を上げられ、ふくらはぎに当たるなんて事もあるし。

 ただ、露骨に前脚に重心を掛けて来なかったので、カーフを狙う価値が低かったのである。


 だって、前脚さえ浮かせてれば
 受け流せる技なんだもん。(超★痛いけど)


 で、それでもふくらはぎや足首の付近を狙った蹴りはある。
 ふくらはぎ蹴りは自体はマイナーな技ではない。ムエタイなんかでも普通に使われるが、割と足首で、浮いた前脚を引っ掛ける感じにして「態勢を崩す」のである。
 シフトウェイトで後脚に重心を戻そうとしても、引っ掛けられると身体がブレちまう。どちらかと言うと、打撃よりは投げ技に近い使われ方をする厄介な脚技なのである。要するに「足払い」だ。
 厄介だが、それ自体は致命打にならない。
 つまり「足払い」が来ると思ってる相手には、カーフキックは「効く」のだ。

 更に、ここしばらくの試合を見る限り、近年のカーフキックは打点が非常に低い。前脚を浮かせれば致命打は避けられるが、とにかく軌道が小さいのだ。
 蹴り技における初動の早さの最強は、前脚による「前蹴り」で、避けにくい・軌道が小さい・速い・戻りも速い。しかも、途中からでも軌道を変えて別の技に変更でき、リスクも少ない優れモノだが、カーフキックはそれと並ぶぐらいに、軌道が小さく、速い。たぶん、足払いへの変更も利きそうな感じだ。(やった事ないから知らん)

 この辺が、突如としてカーフキックが台頭してきた理由なのではないかと推察している。
 とは言え、20年まともに身体を動かしてないおっさんの言う事なので、「違うよ」って意見があったら教えてほしいぐらいではある。

 で。この技が「反則」かどうかと言われると、今のところ、ルールでカーフキックは禁止されていない。


 ぶっちゃけ、禁止する理由がないし。



 ハッキリ言うけど、武術において前脚に重心を置くのは超危険。下半身への攻撃がない剣道でだって後脚重心だぜ? 防御や後退を意識しないとそりゃやられるって。
 要は、後脚重心にするだけで概ね回避できるカーフキックを禁止にする理由がある?
 そりゃ、派手なK.O.は減るけど、そんなの知らんがな。

 で。地味な攻防が「つまらない試合運び」かと言われると、


 そんなの知った事かよ。


 ボクシングだって、ディフェンス重視になった時代は「もっと殴り合え!」とか言われたぜ? だけど、ディフェンスレベルが向上した結果、攻撃のレベルも格段に上がった。

 レフェリーストップが頻繁になり始めた頃は「レフェリー、止めるの早過ぎ!」とか言われたんだぜ? けど、レフェリーストップが早くなった結果、故障する選手は減った。

 30年前にグレイシー柔術が登場してきた時、ひたすら膠着状態が続く展開を「つまらない」と評した連中はいたが、今現在を見ろ。

 総合格闘技において膠着状態や馬乗りや「亀」は当然になったし、それをひっくり返す色んな技術が出てきた。

 たかだか一種類の蹴りが台頭してきただけで、


 「つまらねー」とか言ってるヤツがつまらんわ。



 オリンピック柔道で、諸外国が日本に勝てないから、って理由で「掛け逃げOk」にしたり、「双手(もろて)刈り」が禁止された時は文句言ってた癖に、カーフキックは禁止しろってか?
 パンクラスでは選手生命が危険って理由でヒールホールドは禁止になった。カーフキックがそれほどに危険ってのなら、いずれルールで禁止される。

 ※ カーフキックに限らないが、ローキックは相手に膝を合わせられると、蹴った方の足が「折れる」ことさえある。ワタクシが知る限り、ローで本当に危険な瞬間は蹴られた方より、蹴った方。しかし、流行りのカーフキックの軌道は低いので、膝を合わせられる危険は低そうだ。


 つまり、ハードパンチャーに対するカウンターパートが出てきただけの事だ。


 カードゲームで流行りの強いデッキに対し、攻略デッキが組まれただけのこと。ぎゃーぎゃー騒ぐな。見苦しいわ。


 悪いけど、


 「萌え絵を献血ポスターに使うな!」


 って騒いでた連中と何が違うのか教えてくれ。お前が気に入らんってだけの事で喚いてんじゃねえよ。
 選手は賞金かけて闘ってんだよ。勝ち筋を探って何が悪い。

 それに、ここまで何度も書けばわかると思うが、要するに、体重が乗った瞬間に蹴らないと効果は薄い。つまり、その瞬間を見抜いて、タイミングを合わせて蹴ってる事が凄いのである。


 凄いのは、


 「カーフキック」


 じゃなくて、
 選手の方です。


 と言う事が、これでおわかりいただけただろうか。


 ※ 20年も格闘技から離れてる人間の言う事なので、合っているかどうかは知らない。



 まあ、ゆーても興行だし、客からの不満が爆発的なら禁止もありうるが、ワタクシは禁止には反対である。だいたいジャッジが不明瞭すぎるわ。米豪みたいに腹部より下への蹴りを全面禁止にする気か?

 ぶっちゃけ、現実的な落とし所は「レガース着用」ぐらいしかないのよね。
 ワタクシはそれなら、割と賛成派。(パンチャー優遇になる可能性は否めないし、カーフキックが特別に危険は技とは思ってないのですが、安全性は上がりますし)

 どうでもいいけど、普段の倍ぐらいの文章量だな。コレがいわゆる早口オタクってヤツだな。


 ※ この記事はここまで無料ですが、お気に召したら、投げ銭(¥100)をお願いします。
 なお、この先にはちょっとしたボクシング観戦の思い出が、書かれています。

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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。