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「例の漫画」が示した危険性


 皆さん、こんにちは。「例の漫画」ってもはや「鮫島事件」に近しいモノがありますよね。木賃ふくよし(芸名)です。
 さあ、早速ですが先日から話題になった「例の漫画」はご存知でしょうか。

 まあ、何かと言うと、ネット漫画なのですが。ええ。


 ゲームを作ってる会社に、デザイナーとして現役美大生が雇われる。
 で、美大生の出してきたデザイン案件に、社長はキッパリと「没」を出す。しかし、なぜ不採用なのかは明示されず、指示書もない。
 何が駄目なのかを問い詰める美大生に「それを考えるのがあなたの仕事」と突き放す社長。
 持ち前の負けん気で自信作を描きあげ、見事に採用され、次の仕事も持ちかけられる、というもの。


 まあ、言ってしまえばよくあるサクセスストーリー。んで、見方によっては社長の辣腕がパワハラになりかねんな、と言うところか。

 で。ワタクシは雇われの経験も、飲食店経営をしていた経験もあるので、どちらの気持ちのわかります。無職は現在経験中です。

 しかしこの漫画、社長のパワハラっぷりが叩かれまくってるんですよね。
 わからなくはないけど、目くじら立てるほどなのかがワタクシには疑問です。

 社長は3コマ目にして、口に出した事を相棒に「相談していない」ぐらいのワンマンっぷりを見せています。要するにこーゆー人なんだと、3コマ目で説明済みなんですよね。

 で。対する美大生は「何でも描ける」と豪語してしまうエリート。お互い我が強い感じですね。

 叩かれポイント1ですが、「学生なので報酬は安く済みました」という点。叩きたいポイントはわかるのですが、「何でも描ける」から安請け合いしたのか、相場を知らなかったのか、コレは契約成立した時点で美大生側の責任です。絵の技術はあっても世間知らずなのでしょうか。
 経営的にコストを下げるのは当然のことなので。
 しかも、社長自身は人件費自体を削る気はあまりない様子なのが、後の遣り取りから推察できます。この点から、ここを叩くのは割とお門違いかと。

 そして、この漫画における狂言回し役の相棒は、褒められて伸びるタイプらしく、社長はズバズバ褒めまくります。しかし、ダメな時はやはりハッキリと没を出す模様。

 コレに対し、美大生はにべもなく「全然ダメ」「ふつうすぎる」と一蹴。「何でも描ける」エリートの美大生は反感を持ちます。
 で。「世界観を詳しく説明する」という社長に「いりません」と答えてしまいます。これも素直に聞いてれば良かったはずなんですよね。

 なので、叩かれポイント2の「指示がない」も割と間違い。美大生が拒否しちゃってるんですよね。

 で。叩かれポイント3の「指示書通りに作った」「詳しい指示がない」をまとめますが、


 「指示書通りに作った」は
 求められてないんですよね。


 おっと、誤解しないでください。一般のお仕事の場合は、指示書通りに作る事が大事です。それがお仕事です。しかし、「魅力的な商品を作る」事が目的の場合、指示書はあまり意味がないんです。
 だって、


 誰もが喜ぶ商品は
 誰にも無難な商品
 にしかならないもん。


 んで、多く勘違いしてる人がいますが、この美大生が雇われたのは、


 イラストレーター
 としてではなく、
 デザイナーとして
 なんですよ。


 指示書通りに描かせるだけなら、イラストレーターとして雇うんですよ。
 社長は彼女の描く絵が上手だから雇ったんじゃないんです。彼女の描く世界が魅力的だと思ったから雇ったんです。
 そのデザイナーに、詳しい指示通りに描かせる意味はないんですよ。こちらが用意した舞台を、彼女がどう料理するかを見たいわけです。
 実際、「聴いて情景が浮かぶ音楽」をベタ褒めしていた訳ですし、これまでのゲームが「ドット絵」だった事からも、プレイヤーに世界の広がりを感じさせるゲーム作りこそが、社長の求める「良いゲーム」で、それがプレイヤーにも評価されているのではないでしょうか。

 そして、叩かれポイント4「パワハラがすぎる」点ですが、あくまでこの漫画内で言える事は、美大生は非常に負けん気が強く、腕にも自信がある。褒められて伸びる相棒とは違い、押さえつけられた方が伸びるという確信があっての事だと思われます。本人も人を見る目はあると言ってますし。
 実際、良い仕事を上げてきて、本人もスキルアップした、報酬も増えた、信頼関係も出来た。と結果だけ見れば良い事尽くしです。

 で。「無理なら、日当は払うから辞めていいよ」と言うのが実はかなりマシなんですよね。

 冷たいようですが、和食の板前なんて、掃除や皿洗い、よくて刺身のツマを下ごしらえするってだけの下積みという根性試しを数年、なんてザラです。理髪系なんて下積みが法で定められてますし。根性試しで数年。それを無理なら辞めていいよ、ってのは飼い殺されるよりはマシ。まあ、マシって話でしかない気もしますが。

 まあ、以上が「例の漫画」の叩かれポイントに対する反論ですが、怖いのは、この叩き方が、似非フェミニストみたいだって事なんですよね。


 ぶっちゃけさ、


 亭主関白でも、
 夫婦が幸せなら、
 他人が口出す事じゃ
 ないんですよね。 



 余計なお世話なんですよ。チャラ男に駄目男好きのカップルなんて、本人らは幸せなんですから。S嬢にM男と一緒。本人らが上手くやって行けてるなら、ほっとけって話です。
 実際、この漫画の中では最終的に全員が上手にハッピーを手に入れてるんですから。

 そこに個人のモヤモヤをぶつけて叩いてるのは、似非フェミニストと大差ねえよ、って話で。

 まして、

 漫画ですよ? フィクションですよ?


 これに目くじら立ててるようじゃ、似非フェミニストと変わんねえよ、と。
 あんたがどんな苦労させられてきたのかは知りませんが、それをいちいち漫画に投影して叩いてるのは違うんじゃねーの?


 てかさ、


 昔のスポ根漫画で
 よくある展開じゃん?
 こんなの。


 
 昔はそれで良かったけど今は違う? いや、漫画の話だぜ? 時代小説に今の倫理を求めるのはおかしい、って普段から言ってなかった? 漫画に現実の倫理を求める方がおかしいだろ。

 ワタクシはリアルな劇画が好きだけど、いちいち漫画にリアルを求めるなよ。
 そんなんじゃそのうち、かめはめ波も目玉が飛び出るギャグも許されなくなっちまうぜ。

 危険なのは、「例の漫画」で「パワハラが正しいんだ!と勘違いする人」が出てくる事じゃないよ。
 「例の漫画」で「パワハラが正しいんだ!と勘違いする人が出てくるぞ!」って声だと、ワタクシは思う。
 まあでも、皆ソレはわかってるけどモヤモヤしてるから「例の漫画」なんて呼ばれちゃうんだろうな。


(´・Д・)」 そして、約半年。同じようなパターンのモヤり方をした漫画が出てきたので、追記しておきます。




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 なお、この先には、ワタクシの「例の漫画」の感想が書かれてます。



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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。