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Turnout「映画が開く、タゴール・ソングの100年」(1)歌と人が紡ぐ、ベンガルの魅力

 先日の1周年告知記事で、Turnoutというnoteでの新たな取り組みをご紹介させていただきました。その第一弾をいよいよスタートします。今回は2021年にご登壇いただく予定のTurntableのゲストにちなんだキャンペーンです。

 2020年春、私たちは現在公開中のあるドキュメンタリー映画の監督をTurntableのゲストにお招きする予定でした。その作品は、100年前世界に名をとどろかせた詩人ラビンドラナート・タゴールの残した歌に迫るドキュメンタリー映画『タゴール・ソングス』です。作品には今こそ知ってほしい、一人ひとりの心の平和に寄り添う哲学が詰まっています。(※イベントは新型コロナウィルスの流行状況を踏まえ21年以降で再調整中)

 これから道しるべでは本日から100日間にわたり、毎週最低1本の映画『タゴール・ソングス』、そして撮影の舞台を襲ったサイクロンからの復興にちなんだコンテンツをお届けしてまいります。ここでは映画の概要とともに、制作の背景をご紹介いたします。

◆詩人タゴールの魅力が詰まった100分間

いまから100年後に
わたしの詩の葉を心をこめて読んでくれる人
君はだれか―
(映画『タゴール・ソングス』ホームページ「予告編」)

 詩人の未来への想いを感じさせる詩とともに始まる映画は、100年経ってもなお色褪せない詩人タゴールの歌="タゴール・ソング"で彩られています。アジア初のノーベル文学賞受賞者であるタゴールは、現代に至るまでベンガル文学の源流をなす文学者です。

 タゴールの歌や詩は、言葉がとても抽象的なことが特徴だと言われています。誰もが自分の想いを乗せることができる不思議な歌の魅力を、映画は多様な歌い手を通じて文字通り"映像化"しています。

日本人にとってはるか遠いベンガル地方で生まれた歌なのにも関わらず、タゴール・ソングは懐かしくも新鮮に心に響きます。唱歌や演歌のようなクラシックでスタンダードな歌でありつつ、瀧廉太郎の抒情性、宮沢賢治の荘厳さ、中島みゆきの気高さ、ブルーハーツの激情を併せ持ったような、国境や民族を越えて、今を生きる全ての人々に伝わる普遍性を持つ歌々なのです。
(出典:映画『タゴール・ソングス』ホームページ「イントロダクション」http://tagore-songs.com/  ※一部ハイライトは、道しるべによる)

 歌が彩る群像劇は一人ひとりの人生を主役とし、歌の魅力を通じてベンガル地方の瑞々しい景色と人々の日常をフィルムに収めた、珠玉の一作となっています。

◆BGMを、テーマソングに変えてしまう映画-コロナ禍で発揮される芸術の底力

 この映画は、芸術や文化活動の意味を問いかけてくる作品でもあります。日常でイヤホンから何気なく聞いている歌のそれぞれが、日常に潤いを添えてくれていることを思い起こさせてくれます。

 映画を見た人からは、タゴール・ソングとともに生きているベンガルの人々をうらやむ声が上がります。これだけ人の心に寄り添う歌があること、100年を超えても口ずさまれる歌があるということは、日本でなかなか思いつかないことを考えても奇跡のような出来事です。

 けれども、皆さんの中にも自分のテーマソングとなるような、思い思いのお気に入りの歌があるのではないでしょうか。落ち込んだ時に元気をもらう歌、心を休めたい時に耳を傾ける歌―。『タゴール・ソングス』に登場する歌の数々と歌い手の表情は、国境を越えた歌や芸術の存在意義を耳元にささやきかけてくるようです。

 本来4月18日から上映を予定していた本作は、新型コロナウィルス流行に伴う緊急事態宣言により公開延期を余儀なくされました。その後はコロナ禍の間だけ映画作品をオンラインで配信する「仮設の映画館」プロジェクトに参加するなど、コロナ禍で映画の楽しみを届ける挑戦が続きました。

 ミニシアター関係者も危機感を募らせ、クラウドファンディングを実施することとなりました。スタートから3日で目標の1億円を集め、最終的に3億円に上る寄付金が集まり、ミニシアターへのファンの熱い思いが確認されました。しかし関係者の中では、今後の顧客層となる若年層の獲得が依然課題であると指摘する声もあります。

 新型コロナウィルスの流行は社会課題を浮き彫りにしましたが、様々な文化活動の存在意義を見つめ直すきっかけとなりました。ステイホームの生活では、動画配信サービスが心の支えとなった方々も多いのではないでしょうか。
 国内での感染者数が減少しつつある今も、自らの命を手にかけた悲劇が世間に悲しみの波紋を広げています。本作は人々を先の見えない不安が取り巻く今こそ、心の平和を支える芸術の底力を優しく、しかし強く語り掛けます。

◆芸術を支える、クリエイターたちの魂

 コロナ禍の困難にもめげず本作が全国に展開しているのは、作品を世に送り出した監督とプロデューサーなど制作陣の方々の情熱なくしては語れません。

 連日オンライン・オフラインで全国での劇場挨拶やトークイベントをこなし、現地の人との縁で育んだ映像に責任を取るべく最前線に立ったのが今回監督デビューを飾った佐々木美佳さんです。若干26歳でデビューを果たした監督は、東京外国語大学在学中にベンガル地方の魅力の虜となり、タゴール・ソングの魅力を詰め合わせた映画の製作を決意します。

 その監督からのラブコールにいい作品が生まれることを直感し、ゴーサインを出したのがノンデライコのプロデューサー大澤一生さんでした。大澤さんはこれまでも情熱ある監督が作り上げる、見た人に新たな発見のあるドキュメンタリー映画を世に送り出されていました。大澤さんは、佐々木さんの並々ならぬ熱意に可能性を見出し、彼女が学生の時点で映画製作を決定されました。

 監督自身がデング熱にかかってしまうなど、予期せぬハプニングの連続でしたが、監督が手繰り寄せた人々の縁で、歌と人が織りなす群像劇が形をとっていきました。単なる情報を超えた、味わいのあるドキュメンタリー映画はこうして生まれました。

◆映画の舞台を襲った天変地異に立ち上がる人々

 映画のオンライン上映が始まったのも束の間、5月20日にコロナ禍にあえぐベンガル地方を史上最大級のサイクロン"アンファン"が襲いました。

 ベンガル地方はベンガル湾で発達したサイクロンが北上するルート上に位置し、特にバングラデシュでは以前より甚大な被害が発生していました。折あしくも新型コロナウィルス流行の真っ只中、コロナ禍の複合災害の発生という日本でも想定されたシナリオが現実のものとなりました。

 その後の復興支援で立ち直りつつある地域もありますが、バングラデシュでは7月まで水が引かないエリアもあるなど、その爪痕は両国で痛ましいものでした。その後のインド・バングラデシュ両国は、コロナ禍の出口戦略を手探りしています。未曽有の豪雨災害に直面する日本にとっても、他人事ではない状況です。

 こうした中で現地の支援に奮闘する、志ある人々がいます。、まさに映画に描かれるような、ふるさと想いの人懐っこいベンガルの人々に寄り添うべく行動されている方々です。

 インド、バングラデシュは、日本では長らく貧困にあえぐ発展途上国のイメージが長らく伝えられ、援助をする先進国と援助を受ける発展途上国という垂直な関係に目が行きがちでした。しかしそうしたイメージとは裏腹に、両国の関係は経済的地位に囚われない、心と心の通い合う人々のつながりが支えています。

 道しるべはコロナ禍で自国中心主義が際立つ今、こうした血の通った人間同士のつながりこそが国際協調を育む土台になると考え、映画と現地への敬意を胸に、現地の復興を支える人々の軌跡もご紹介してまいります。

◆キャンペーン「黄金のベンガルへの100日」

 道しるべはこの100日間を通じて、映画をこれからご覧になる方々はもちろん、すでにご覧いただいた方も映画の魅力をよりご堪能いただけるような記事をお届けいたします。またコロナ禍からの復興を支える方々の取材を通じて、インド、バングラデシュ、ひいては南アジアという地域への貢献方法を模索してまいります。

 連載記事と合わせて、現在企画中の現地の復興支援の後押しにつながるプロジェクトにも着手し、「黄金のベンガルへの100日」というキャンペーンとして進めてまいります。
 ベンガル地方は、5月に続く第二のサイクロンの時期を迎えます。ベンガル地方がサイクロンもコロナ禍も乗り越え、稲穂が黄金に実るベンガルの原風景が戻る願いを込め、このタイトルとしました。

 次回は、文学者に留まらない多様な顔を持つ、タゴールの人物像に迫ります。どうぞお楽しみに!

 映画はまだ全国公開中です。是非お近くのシアターで100年語り継がれる歌の魅力を浴びてみてください!!

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