僕は「好き」を迷ってどちらも試して失敗した

「すごく落ち着いているよね」

僕はよくこういうことを言われる。

だけど友達には言われない。だからそういうことなのかもしれない。

数ヶ月前、年下の子に恋をした。

「かっこいい。すごい好き。早く会いたい。落ち着いてて一緒にいて素でいられる。」

その子は僕にたくさんの言葉をくれた。

人生で年下の子を好きになったのは初めてだった。

今思い返すと「あのクソガキ」と心底どうでもいいのだが、あの頃は大好きだった。

あるときその子に言われた。

「思ってることは言葉にして伝えないと分からないよ」

言葉に責任を持って生きている僕は「好き」という言葉を使うときはそれ相応の責任を持って使うことにしている。だから簡単には言わなかった。いや、一度も直接言わなかった。もうすでに好きだったのに。

そんなある日、何が起きたかは分からないけど急に「気持ちが冷めた」と告げられた。

僕は「好きだ」と伝えたがもう遅かった。

仮にもっと早くに伝えていたとしても遅かれ早かれの話だったのかもしれないが、言葉を慎重に躊躇ったがために、気持ちが届く距離に彼はもういなかった。

「思ってることは言葉にして伝えないと分からないよ」

僕はその言葉の大切さを学んだ。


それから数ヶ月経ち、僕は年上の人に好意を持った。

そしてその人も「めちゃめちゃタイプ。ふつうに会ってたらめちゃめちゃ好きになってたと思う」と僕に言った。

「ふつうに」

このたった四文字の言葉が、僕には後悔のような、悲しいような、早まったような、決して結ばれないような、僕だけが心を締め付けられるような、そんな言葉になって聞こえた。

どうせ無理だとわかっていた。だってその人には付き合っている人がいたから。でも「ふつうに」を除けば舞い上がるほどに嬉しいことを言われた。だから僕は会ってニ回目のときに伝えた。

「好き」

「付き合いたい」

明日どちらかが死ぬかもしれない。だから伝えれるときに伝えようと思った。結果はわかっていたのに。

「思ってることは言葉にして伝えないと分からないよ」

数ヶ月前にクソガキから教わったことだった。

もちろん答えはおあいにくさま。

「まだ会って2回目やで?」「感情のコントロールができやん子は苦手」

そう言い放って、翌日彼は東京へと引っ越した。

なんて言うんだろうか。

もしかするとこれは0か100の話すぎたのかもしれない。

でもいいんだ。いずれにせよ僕はあの人とでは幸せになれなかった。

だって付き合ってる人が別にいたんだから。

「付き合ってる子いてんのに付き合いたいとか言ってくる子と付き合いたいと思わんやろ」

ピロートークとは程遠い辛辣なセリフまで耳元で吐かれた。心に言葉のナイフが突き刺さった。極めて冷酷だった。

まぁでもいいんだ。

やっぱり会ってニ回目の「好き」は僕の大切にしている「好き」じゃない。

惹かれていたのは確かなんだけど、あの人と僕とではどうせ幸せになれなかった。

僕は迷ってどちらも試して失敗した。「好き」を言わないも「好き」を言うもどちらも試して失敗した。

でも一つ良かったことがある。

言葉にして「好き」を伝えたことで僕の心の中はスッキリしている。結果は失敗だったけれど、それ以上に得られたものがある。恋打ちひしがれた僕の心をあの嫌なキューッとした感覚が締めつけてきたけれど、今となっては学びをくれた二人には感謝をしている。

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