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【小説ワンシーン集】パーフェクト・コントロール・ウィザード①

 はるかな昔、人は悪魔を倒すために神によって生み出された。
 神は人々に一つずつ祝福を授けた。体が強くなる、魔法が使える、傷と病を癒す。人々はそれらを使い悪魔の下僕を討滅していった。
 悪魔は人々に一つずつ呪いをかけた。体が弱くなる、魔力が少なくなる、薬を受け付けなくなる。人々は悪魔の下僕だけでなく、呪いとも戦わねばならなかった。
 そうして人がこの世に生を受けて気が遠くなる年月が立った。
 祝福と呪いは人々にとって日常となっていた。

「私の呪いが〈魔力微量〉だと知った時、お父様とお母様の落胆っぷりは相当なものだったそうだ。レッドウッド家と言えば魔法使いの大家だ。大事な跡継ぎが生まれた瞬間から戦力外通告を受けたとあってはまあ当然だろう。だからお前なんか要らないって捨てられてしまったんだよ」

 冒険魔法使いの少女、ピジョン・レッドウッドは自分のことをあたかも他人事のような気軽さで語る。

「そこを私の叔父様が拾ってくれたんだ。叔父様は私の祝福の真価を見抜いていたから、そりゃもう小さい頃から冒険者としてビシバシ鍛えられたんだよ」

 ピジョンは周囲に転がっている盗賊たちに語りかけた。彼らは体が全く動かずに転がっている。

「人間の体って脳から発せられた電気信号で制御されるよね。だから電撃の魔法をいい感じに調整して、君たちの電気信号に干渉したんだ」

 粗野な盗賊たちにピジョンの説明を聞く気などなく、彼らは唸り声を上げながらどうにかして立ち上がろうとしていた。

「こんなことができるのも、〈魔法完全制御〉の祝福があるおかげだね。〈魔力微量〉の呪いのせいで完全に役立たずって思われがちだけど、意外とそうでもないんだ」

 ピジョンは倒れた盗賊の一人の前でしゃがみ込むと、指先にマッチ程度の火を灯す。

「こんな火種にしかならないような炎の魔法でも、頭とか心臓の中で発動させれば、ドラゴンだってやってつけられるんだよ」

 盗賊の目が恐怖に染まる。

「まあ今回は生け捕りにって言われてるから安心するといい」
  
 ピジョンは捕縛用に持ってきたロープを取り出してニコリと笑う。

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