見出し画像

人類最後のアイドル、星空”デーモンスレイヤー”きらら

 廃墟と化した東京を悪魔の集団が歩いていた。
 彼らは地球を侵略せんとする魔界の尖兵であるが、しかしその胸中には悪魔にあるまじき心があった。
 恐怖である。
 集団の後ろから何かが聞こえてきた。少女の声。歌だ。

「輝く夜空見上げると、きらり流れるお星様。お願い、お願いお星様。想い伝える勇気をちょうだい」

 それは恋に臆病でありながら、それでも勇気を得んとする少女の青春を歌ったものだ。
 しかし。

「滅びの歌だ! やつ来た!」
「嫌だ! 助けてくれ!」
「もうダメだ。おしまいだ!」

 悪魔たちは歌に怖れ、怯えた。発狂して自害する者すらいた。
 歌に断末魔が重なる。
 悪魔が虐殺されていた。
 華やかなアイドル衣装に身を包んだ少女が、赤く輝く魔剣で悪魔を殺しているのだ。
 彼女は星空きらら。
 人類最後のアイドルにして、悪魔を滅ぼす者。

「この胸宿る恋心。貴方と合うたび強くなる」

 きららは歌いながら悪魔を殺す。それは彼女のデビュー曲であり、多くの人々に愛されていた。
 しかしその歌を愛した者たちは全て死に絶えた。

「好きで好きでたまらない。この想い、いつかこぼれ落ちてしまうかも」

 胴を真っ二つに切り裂かれた悪魔から内臓がこぼれ落ちる。

「もしも想いが伝わらなかったら、心がバラバラになっちゃう」

 きららが剣を振るうと、悪魔がバラバラに切り刻まれる。
 逃げ惑う者、立ち向かう者、その全てがきららによって惨たらしく殺される。

「でももう決めたんだ。私は決して止まらない。この想い伝えるまで」

 きららは決して止まらない。悪魔を皆殺しにするまで。
 かつてきららがファンに向けていた笑顔はそこにない。
 あるのは無限にも等しい悪魔への憎悪。
 なぜきららは戦うのか。
 ファンに夢と希望を与えるアイドルが、なぜ悪魔に死と恐怖を与える戦士となったのか。
 それは星空きらら初の武道館ライブまで遡る。

【続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?