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氷の移ろい【読み切り小説】

共同生活が始まって1年
ささやかな楽しみは、金曜日の夜に乾杯するハーゲンダッツ。
夏は窓を開けて、冬はコタツで。

「ちょっと柔らかいくらいがピークだよ」と少し置くあなた。
ほんの数分ぽっち。永遠を感じられる貴重な時間。
本を持つあなたの指だけが、ゆっくり時間をめくる。

カップの中
誰にも気づかれないまま、いつの間にか進んでいたんだな。


普段とは違う淀んだ華金。会話にならない話し合い。
二言目には「ごめん」。手を付けない二つの個体。

「もう一緒には進めない」
どうして?

「好きな人ができた」
聞きたくない。


少しだけ広くなった部屋で、カップの蓋を開く

もう進まず、もう元に戻らない液体が
甘い想い出を抱え、気体になって消える。

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