会社を立ち上げて11年が経ちました「会社ではなく、個人が人生の選択をしよう」という話
こんにちは。
「『好き』で自信を創り、『好き』で社会とつながる」をビジョンに、発達障害児や不登校のお子さん向けにオンラインコミュニティとメンターマッチングサービスと教室運営をしている「Branch」の中里です。
去年、創業10年経ちましたのnoteを書いて、もう1年経っちゃいました。
■【おはようラジオ#95】そういえば創業11年目です、今日
この1年も色々ありました。
特に社員の中から、メンタルの不調が出た方がいて、それが連続で出てしまったので、経営者として自分の責任を強く感じ、正直かなりしんどい1年でした。
前職サイバーエージェント時代にもメンタルの不調でお休みになられた方はいらっしゃったのですが、明らかに仕事時間が長かったので(その頃は24時過ぎまで働くのが当たり前だった)理由は明白でした。
ただ、Branchの場合は仕事時間的にはホワイトで(1日8時間、週休2日、有給あり)、個人面談も月一で実施しており風通しの良い環境だと自分では思っていたので、なぜなのかが全く分からず混乱しました。
とにかくまずは休んでもらうことと、仕事環境から離れてもらうようにしましたが、1名はそのまま退職となってしまいました。
そういった中でいろいろな方に相談した中で分かってきたこと、自分なりに決めたことなどをここに書いていきたいと思います。
ケアの仕事をする人は、自分自身をまずケアしよう
まずはこれです。
この話の中でも近しいことが話題になっていますが
■【おはようラジオ#16】カウンセリングを受けること、場所や方法
「周りの人をケアする」という仕事は、自分自身のメンタルが不安定になる場合があります。
いろいろな原因があると思うのですが、自分なりに思っているのは
・ケアの際に仮面を被っていて、仮面疲れする
・ケアの際に、自分の感情を生のままストレートに出していて、トラブルがあったり、自分としては良いことをしていると思っていても悪い反応が返ってくると、自分自身を否定されたような気持ちになってしまう
上記2点です。
この2つは真逆なのですが、どっちも存在してるな、と。
どちらも、最初はなんとも思わないのですが、徐々に負の感情が自分に蓄積されていき、ふとした拍子に気づいたら「朝起きるのもつらい」という状況になってしまう。
対策としては
・自分の気持ちに気づけるようにする。周りの環境としては、本人の素を出せるように整え、言語化の支援をする。
・「休みたい」となった時に、何も気にせず休めるようにする
・できるだけ「この人しかできない」という仕事をなくす
・「仕事は仕事」とはっきり分けて、業務時間外はしっかり休む。仕事のことを考えない時間を作る。
というあたりかな、と思います。
Branchの場合は無責任な人がおらず、むしろ責任感の非常に強いメンバーがそろっています。
そのため、子どもや保護者から負の言葉をもらった時などに「自分が悪い」と自己否定に走ってしまいます(僕もそうです)。
また仕事においても「周りに悪いから自分一人でやろう」となりがちで、人に頼るのに時間がかかります。
採用時点でそういった責任感の強い良い方を採用できた後は「できるだけ無責任に」「できるだけ他者に頼れる環境をつくる」というのが大切です。
そして「周りがフォローできるからね」という状況を明確に作ることでその人自身のメンタル負荷を下げ、更に休みやすい状況を作ることが非常に大切であると学びました。
また、クレドの中にも「滅私はいらない」という一文を入れています。
夏前に一人のメンバーがメンタル不調でお休みになった際、非常に慕われているメンバーだったので周りのスタッフがすべての業務をすごいスピードで引き継いでくれました。
そのメンバーがいなくてもサービスが回るようにしてくれたことで、組織的にも良かったですし、そのメンバーも「あ、周りの人がフォローしてくれるんだ」と分かることで徐々に回復していきました。
また「もしかして、上司が中里しかいないことで実は休みづらかったりするのかな?」と、休みの連絡を1クリックでできるようSlackに実装したり(自分で作りました)、「簡単に休める」という状況を作っていきました。
Branchにいたら、自分の未来はどうなるのか?:Branch Work
Branchは
「好き」で自信をつくり、「好き」で社会とつながる
をビジョンに、目指すべき方向性はしっかりと決まっている会社です。
定期的に「この半期はどうするか」を議論したり、社内のメンバー全員で意思決定をする機会を作っています。
更に今年の夏にクレドを制定して、Branchの中で働く際の個人の指針も作りました。
ただ、社員の方の立場になって考えた時に「Branchにいたら、自分にはどんなスキルが身につくのだろう?」「仕事をする人間として、この会社にいることによって何か成長しているのだろうか?」と不安に思わせてしまう部分があったのではないかと考えました。
みなさん若いメンバーです。
僕のようにおじさんになるとそこまで自分自身のスキルについて思い悩んだりしないですが、僕自身も20代のころは「同世代と比べて、自分は劣ってるんじゃないか」と不安になったことがありました。
そこで夏から秋にかけて「Branch Work」という、人事制度とスキルチェックシートを作成しました。
プレイヤー→リーダー→マネージャー
のような職種があり、
その職種ごとに必要なスキルがあります。
毎月実施している個人面談にて、そのスキルチェックシートで個人の振り返りを実施して、そのメンバーがどういったスキルを身につけたいのか把握して、フォローできるようにしました。
これはまだ稼働したばかりなので、どういった結果になるか分からないのですが、メンバーの立場になった時
・このスキルがあれば、Branchやめて転職しても大丈夫だな
と思ってもらえるようなスキルの育成をしていければ、「個人の選択」が増え、人生の幸福度が増すのではないかと考えています。
会社と、自分の人生について:休暇制度
すべては「Branchが長く続いていて、ずっとそこにいる存在になる」ために。
端的に言うと「長く会社にいる人ほど(正社員)、長期休暇を取れるようにする」制度を作りました。
ヨーロッパなどの国々では、1ヶ月間のバケーションが当たり前。
日本が働き過ぎというのは古い価値観だけど(実際はそうではない)、長期休暇を取っていない国民であるのは今もそうですね。
長期に、会社という「自分を構成している社会膜」がなくなることで、本当に自分はどう生きていきたいかが見えやすくなり、より「自分の選択」ができるようになり、仕事を続けるにせよ別の場所に移動するにせよ納得感のある選択ができるようになり、より幸福な人生を歩めるようになるはず。
「勤続1年で1週間の連続長期休暇取得」「勤続5年で2週間の連続長期休暇取得」「勤続10年で1ヶ月の連続長期休暇取得」が取れるようになる制度を作ります。
その休暇期間、下記のようなことをしていただければと想定しています。
・家族と向き合う
・キャリアを考え直し、再構成する(結果、転職しようとなっても会社は応援する)
・自分自身を見つめ直す
・長期休暇内で、自分の人生の中で成し遂げたかったことを成し遂げる
中里個人の話にもどると、サイバーエージェント時代から「1人合宿」を実施していて、1泊2日1人で宿に泊まり、「今後どう生きていくか」「今の環境が自分にとって正しいのか」を考える時間を作っていたのが、今にいたる生き方の中でとっても良かったと感じています。
こういったことを考える時間があることが、自分が幸せに生き、周りにも良い影響を与えていけると考えています。
また、ケアの話のところでも書きましたが
休みを強制的に取ることで、属人的になっていた仕事を他の人でも回せるようになるので、組織全体にとっても良いことだと考えています。
ウェルビーイングを本気で目指せる会社に
僕個人としては「ウェルビーイングを本気で目指せる会社にしていきたい」と考えています。
ウェルビーイングとは
とのことですが、最近はこれを強く考えています。
社内のメンタル問題があった頃「アマゾンが週5出社へ」というニュースを見ました。
自分がアマゾンの社員だとしたら「え、めちゃくちゃ嫌だな」って思ったんです。
ただ、給料もいいでしょうし、まぁ辞めるのも自由だと思うので、僕のような社員がいれば辞めてるでしょうし、残った社員は納得の上残っていると思います。
このニュースを見た際に「人生に関わる決断を会社がするのか、個人がするのか」という問いが、今後社会的に大きな問いになってくるのではないかと考えました。
業績が安定していて高い給料も払えて求心力のある会社は「会社視点での決定」ができる。
ただ、僕らのような小さな会社やまだ求心力のない会社は「個人の決断を後押しして、決断しやすい環境を作る」という方向に行くのではないかと考えています。
・今は家族との時間を大切にしたい
・自分の成し遂げたい夢がある
・今はとにかくスキルアップ
・何よりもお金をまず稼ぎたい
人生のステージによって、個人の選択には優先度合いがあります。
ずっと同じであることは普通なくて、それは変遷していきます。
その際に「自分で決断できない」という状況は非常にストレスフルなのではないかと。
神戸大学が上記のような調査結果を発表しています。
自分としても非常に納得感のある結果でして、「個人が自己決定できる」というのは人生の幸福度において非常に大切な要素であると考えています。
そのため、会社に所属していても、常に自分自身の人生の自己決定は、会社からではなく個人がしていける状態にしておきたい。
この1年は、社内のメンバーにとっては幸福度の高い状態ではなかったと思います。
経営者としてその責任を感じ、次の1年はさらなる制度変革と、作った制度をしっかりと運用していきたいです。