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「教育のオンライン化」保護者が本当に求めているのはツール導入ではなく…

こんにちは。

「『好き』で自信を創り、『好き』で社会とつながる」をビジョンに、発達障害児や不登校のお子さん向けにオンラインコミュニティとメンターマッチングサービスと教室運営をしている「Branch」の中里です。



今回は学校で使われているミライシードロイロノートなどの「オンライン授業ツール」について書こうと思っていました。

ですが、Branchの保護者の方にもご意見頂こうとコミュニティで相談した結果、

「あれ、これってみなさん課題だと感じてるのはオンライン授業ツール自体ではなくて、学校側とのオンラインでのやり取りなんだな」

ということが分かってきましたので、今回はそのことを書きます。


保護者の方は、オンライン学習ツール以前に学校との連絡をオンラインにしてほしいと願っている

このコロナ禍で、日本全国の学校でオンライン学習ツールの導入が進みました。

新型コロナウイルス感染拡大下で新学期を迎えた小中学校で、登校するか、オンラインで授業を受けるかを選択できる「ハイブリッド授業」が広がっている。感染対策で登校を控える子どもに配慮した取り組みで、保護者からは「選択肢が増えてよかった」と歓迎の声が上がる。

広がる「ハイブリッド授業」 コロナ禍の新学期、増える選択肢

Branchのオンラインコミュニティでも、自然とオンライン授業についての話題があがるようになり、保護者の方がどのように利用するのか悪戦苦闘している様子が投稿されていました。


そんな中、オンライン授業ツールについての意見を求めたところ、オンライン授業ツール自体への改善点などよりも、そもそもの学校側とのやりとりについての記載が多かったのです。


「先生とメールのやりとりしたいです。やっぱり電話だと忙しいから気をつかいます。連絡帳だと、書く欄が狭いし、いろいろ考えてたらめんどさくて、やっぱりいいやと思ったりします。先生もお返事書くの大変だと思います。
メールだと、いつでも書いて下書きもできるし、文章で伝える方が冷静に伝えられます。お礼も素直にかけますしね。添付でオススメの記事とか送れたりできるので、少し目を通してもらえたらと。親と学校との連絡ツール希望です。」


「保護者と先生でやり取りできるツールが欲しいです。学校から一方通行での配信だと、保護者からの意見は受け付けたくないのでしょうね、と思ってしまいます。」

こんなご意見がありました。

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学校のホームページにメールアドレスが記載されている学校、ホームページ自体がない学校、校長先生だけ個別のメールアドレスを持っている学校、など公立校の中でも様々あります。


保護者が本当に欲しいオンラインツールは?

また、保護者が導入を希望するオンラインツールに関しても、学習以外にもたくさんのニーズがあることがわかりました。

これもBranchの保護者の意見を参考に記載します。


・学校からのお便り/プリントをPDFなどでオンライン上で配布してほしい

・遅刻欠席の連絡をWebフォームでできるようにしてほしい

・面談や保護者会をオンラインでできるようにしてほしい

・チャット機能など、オンラインで先生やクラスの友人に相談できるようにしてほしい

などなど。

なお、こういったことはどこの学校もできていないことかというとそうではなく、学校によってオンラインツールの導入状況はさまざまです。また、必ずしも私立は導入が進んでいて公立は遅れている、というわけでもありません。

自分の学校だけ見ていると気づきづらいですが、全般的にオンライン対応が進んでいる公立校もありますし、ほとんど進んでいない学校もあるのが現状です。

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下記は、実際の保護者の方の話です。

「息子の学校は、出欠席の管理に、リーバーというアプリを使ってます。
コメントも一応入れられます。

学校から配布される書類や連絡事項は、ミマモルメというアプリを使ってます。
メールは見落としがちなので、助かります。」


「○○区の学校から、来週から欠席連絡がWebフォームで出来るようになると連絡がありました。やっと!
コロナがなかったら、しばらくまだ変わっていなかった気もするので、こういう変化は良かったな~と思います」


授業のオンライン化に関しての希望はどうか?

ここまでは授業以外の部分でのオンラインツールについて記載しましたが、授業についてもやはり「こんなことできたらいいな」という意見が集まりました。


・授業の生配信が欲しい。参加したい時に家からでも自由に参加できるように。

・外部とオンラインでつないで特別授業をしている時などは、欠席者 (不登校児)でもオンラインで授業参加できるようにしてほしい。

・教科書に沿った全体講義の録画版があると良い(欠席者も見られるし復習にも使える)。
→ ホームスクーリングでも公教育システムを利用したい
→ YouTube慣れした子どもたちに入りやすいものが欲しい(勉強を楽しめるように)

・授業は、全体講義の再生+少人数のグループアクティビティ+クラス全体のホームルームを基本にしてほしい。
→ 各グループ(4~5名程度)にTA(ティーチングアシスタント)がつく予算と人員を確保する。
→ グループアクティビティやホームルームは個人情報保護の観点からも録画配信なしにしてほしい。

・宿題・課題をオンライン化してほしい。
→ ホームスクーリング在籍者も使えるようにしてほしい。

・出欠席の判定を、例えば「オンライン講義とオンライン宿題とテストをこなせば一部出席扱い」などにできるような、行政側の仕組みが欲しい。

・ホームスクーリング児童/生徒については、学習を自由進度にするトライアルをしてほしい(公文式のような形式)


このような意見がありました。

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学校側の負担も考えてリクエストしていく

さて、ここまではアイデアブレストのように頂いたご意見を記載していますが、実際に何か保護者の方が行動を起こす際は注意が必要だな、と思います。

オンラインツール全般、学校によって導入速度が異なるため保護者の方からすると「これ他の学校ではできてるので、うちの学校でも入れてください!」という意見が出ると思います。


ただ、学校によっても予算が違ったり、地域や人によって「教育に求めるもの」が違ったりします。
コンセンサスがないまま、無作為に学校側に意見を出しても、ただでさえ運営が大変な中、すぐに学校が変わっていくのは難しいです。

現実問題として、現在は実際のリアルタイムでの授業がある中で、オンラインツールも様々試していますので、先生たちの負荷は上がっており、仕事は逆に増えています。

前項に書いたように「全体講義はオンライン録画授業にする」などのように、抜本的に先生の負荷が下がるようなことをしないとすべての要求を実現するのは難しいでしょう。

また同時に、「オンライン録画でも良い」vs「リアルタイムで先生に教えてほしい」という逆の意見のコンセンサスを学校全体で作り上げていくのは非常に難易度が高いと言えます。
(そのため、N中やN高のような場所が0から作り上げることにトライして人気が出ているのだと思います)


それでも、オンライン事務系ツールは早く入れるべきだし、オンライン学習ツールの導入も徐々に進めてほしい

ここからは中里の個人的な意見です。

まずは、学校と家庭のやり取りなど、事務系に関してのオンライン導入を早く進めるべきなのではと思います。

これは単純に先生側の負荷を下げることになるからです。変化の際は先生の負荷も上がるでしょうか、慣れればオンラインの方が良いはず。

出欠連絡や学校への意見を電話で都度受けるよりも、Webフォームを利用して、確認できる時に確認した方が効率化できます。


また、オンライン授業(学習)ツールに関しては時間がかかる問題だと思いますが、時間をかけてでもリアルでの授業一辺倒からの変化が必要なのではないかと思います。

・オンライン学習を制度として認め出席扱い化
→講義内容は学校独自のものではなく、民間のサービスや、他校・民間の先生が作った動画講義を受けることも可能とする。学校側の負荷も同時に下げる。
→教材自体も家庭側で選べたらベター(ですが、これは管理の面から導入難易度が高そう)

・進め方は一人ひとりの速度に合わせる
→これは進み方がゆっくり目なお子さんの学ぶ機会をなくさないためにも大切ですが、「吹きこぼれ」と呼ばれる高い知能を持っていて学校の授業をつまらないと感じているお子さんのためにも有用です。

・先生やTAは「教えること」より「子どもたちの質問への回答や、場をまとめること」に重心を置く
→「教えること」と「子どもと対話して支援する」ことを同時にやるのは難易度が高いと感じます。知識を仕入れるのは、オンラインツールや動画などに任せて、「子どもと対話して支援する」ことをメインにして行った方が良いと感じます

まとめ

今回は「学校のオンライン化」について書いていきました。

DXの議論でも「DXDX言う前にまずはFax/電話文化なくそうよ」みたいな話もありました。
これと非常に似ているな、と。

オンライン授業ツールについてだけ話が進んでいっていますが、そのまえに「ご家庭と学校をオンラインでつなぐ」ということを先に進められるといいのでは、と思います。



-- CM --

Branchオンラインコミュニティでは上記のような意見のやりとりが活発で、日本中から集まる保護者の方のおかげで市区町村によっての変化や差が分かりやすいです。
学校側に何か支援を依頼する際の参考になりますので、ご興味ある方はご連絡くださいませ。





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