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B2B事業企画者が「ユーザー視点」を発見するためのフレームワークのお話

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事業企画を考える時に「ユーザー視点」を大事にしよう、と言われますね。

ユーザーの気持ちになって事業を考えることはすごい大事です。

ただ、この時点でぜひ立ち止まって気づいて欲しいのは、事業企画者にとって「耳障りのよい言葉(流行り言葉)」「カタカナ用語」は大敵だということです。

「ユーザー視点」や「ユーザー目線」は、わかったようでわからないカタカナ用語の代表例と言ってもよい程、心地の良い言葉ですね...笑
今回は、「ユーザー視点」の対象と意義、ユーザー視点を発見するための「手法」のフレームワークについてお話ししましょう。

「ユーザー視点」の対象とは・・

結論から。B2B事業企画者が考慮すべきユーザー視点の対象は関係者(ステークホルダー)です。

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当たり前すぎ!(と思った方正しいです)。 正しいと思った方が、なぜ正しいと思ったかを整理してみましょう。

ステークホルダー(利害関係者)を全方位的に意識する必要性は年々高まっている

SDGs(エス・ディー・ジーズと読みます)は2015年に国連サミットで採択された国際目標です。

持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。
持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。
SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。
SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

17項目のラインナップには、経済成長やインフラ・イノベーション等のビジネス目標も入っていますが、貧困や飢餓、教育、気候変動、不平等、平和など、先進国や営利企業の利益に偏らない目標が掲げられています。

日本では経団連が「KeidanrenSDGs」を掲げ、積極的な活動を行っています。

この流れ、つまり、私企業の営利の最大化を追求する考え方から、「社会」「環境」、あるいは「未来(の地球人)」というステークホルダー意識した事業活動を行うことは10年後は標準になっていく、というのが個人的な意見です。

逆に言うと、関係者(ステークホルダー)視点を欠いた企業や事業は、社会に受け入れられないというリスクも抱えることになるでしょう。

B2C事業であれば、それを利用してくれる「お客様」を意識し、企画を遂行すれば成立する場合もありますが、B2B事業は利害関係者との相互協力関係で成り立っていますので、ユーザー視点は「関係者視点」となります。

「ユーザー視点」の発見というと「お客様」の深層心理を知ること、と思われがちですが、それ「だけ」ではないんですね。

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背景にあるのはデジタル化

利害関係者をより大事にしなければいけない背景にあるのは、デジタル化により情報の発信者と受け手という一方通行ではなくなったこと

また、個人や団体など、伝統的なマスメディア以外が情報発信者となり得る環境が整ったことが大きく影響していると考えます。情報の民主化ですね。

たとえば、少し前にあった吉本興業の闇営業の問題も、インターネットの力が大きかったですね。

問題が発覚したのち、批判的な声がインターネット上で広がり、世間の声となり(『世論』のように聞こえる状態になり)、

最後は、インターネットで謝罪生会見を行うに至り、総視聴数は1,100万を記録しました。

企業が「社会」という関係者視点をどのように持ち、対応すべきなのか、を考えさせられる象徴的な出来事といえるでしょう。

「ユーザー視点発見まっぷ」で考えてみよう

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前置きが少し長くなりましたが、ユーザー視点を発見するために私が考えたフレームワーク「ユーザー視点発見まっぷ」を簡単に紹介します。

この方法がすべてだとは思っていませんが、事業企画には「網羅性」と「再現性」が求めれますので、考え方として意識してみるとよいでしょう。

<手順>
1、目的を明確にする
2、自社・自社事業の関係者を書き出す
3、自社の事業にとって影響力(機会・リスク)の大きい順番にならべる
4、各関係者の潜在需要、顕在需要を書き出す
 (需要開発についてはアプローチが異なるため割愛)

まずはじめに、ユーザー視点を発見する「目的」を明確にしましょう。

よく見かけるのは、「目的」と「手法」のミスマッチです。

既存事業の延長線ではない事業刷新やイノベーションが目的にも関わらず、既存事業の改善手法である既存顧客への「ユーザーインタビュー」や「満足度調査」、それらを踏まえての「ペルソナ」づくりを熱心に行っても真の「ユーザー視点」を得ることは難しいでしょう。

続いて、事業に関係する関係者をリストアップし、事業機会やリスク観点から優先順位づけを行い、目的に見合った手法を用いて、関係者それぞれの「ユーザー視点」を確認していきましょう。

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「顕在需要」とは、関係者が要望していること(ポジティブ)と、不に思っていること(ネガティブ)です。多くの場合は、質問にたいしてYes/NOで答えられます。満足度調査やグループインタビュー等で確認できます。

一方「潜在需要」は、関係者の心の中にある感情で、誰かに解決して欲しいとも思っていないことも多く、顕在需要に比べて発見することが難しいものです。手法としては、行動観察やデザイン思考、ジョブ理論が該当します。

「需要開発」は、需要自体を生み出すことですので、上の2つとは違って、発見というよりは「創造」に近く、ユーザー視点を発見できる難易度は当然高くなります。手法としては、オープンイノベーションや破壊的イノベーションが該当します。

ビジネスモデルが変わるということは既存取引形態の否定も含む場合があり、たとえばこれまでビジネスパートナーであった企業との関係性が悪くなることも大いにあり得ます。

リスク回避の観点からも関係者が何を奪われるのが困るのか、把握しておく必要があります。

ユーザー視点の「意義」をあらためて

視点を別の言葉で言うと「立場」です。

立場が異なり、利害関係が発生する人々の声&声なき声を把握しておくことは、攻めの意味でも守りの意味でも事業を強固な構造とするためにとても重要であり、ユーザー視点を持つことの意義はそこにあります。

ユーザー視点を持ち、彼らの需要を確認・発見(創造)し、その需要を解決する策(ソリューション)を設計するのが事業であり、計画通りに遂行することまで含めて事業企画者の職域です。

ですから、ユーザー視点を持てば事業がすべて上手くいくわけではないのですが、B2B事業企画の「対象」「目的」「手法」の全体感を知っておくことが成功確率を高めることにつながるでしょう。

手法の活用方法等の詳細・具体的な話については、機会があればまた別の機会に。

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