アメリカ大統領選、投票開始前から、結局トランプの勝ち、CNNお通夜状態から日本の報道番組まで、テレビで見続けていた間の、Facebook投稿転載。保存・記録用。
11月5日 1昼の12時くらい
今日の午後からCNNは大統領選特番に突入。ずっとつけっぱなしにしておくことになる。
世界の民主主義度を比較するランキング(世界銀行のWORLDWIDE GOVERNANCE INDICATORS 2023)アメリカは57位。日本の42位より低い。
英国エコノミストの調査部門のランキングでも、日本16位に対してアメリカは29位。
世界のなかでの位置づけも、不完全な民主主義国家、「欠陥民主主義」の位置付け。民主主義国家の盟主みたいな振る舞いをするが、ヘンテコ民主主義の国である。
大統領選挙も、州の投票人(人口比で割り当てられている)を、州ごとに勝ったほうが総取りという不思議な制度である。投票人がとことこ歩いてなのか馬に乗って首都まで投票に行った時代のなごりなんだろうか。
合衆国って、ほんとはユナイテッド ステイツなんだから合州だよな。漢字で書くなら。誤訳定着である。いろいろ過去の不合理が放置されてそのまんまになるのが、政治まわりでは多い。
アメリカが内戦になっている近未来の映画がヒットしている。僕が今、読んでいる小説も、アメリカが内戦になっているパラレルワールドを扱っている。(小説内小説で描かれる。)
トランプが負けたら、ほんとに内戦のリスクはけっこうあるよな。日曜のNHKスペシャルでも、2割くらいの人が内戦になることを心配している、という調査を報じていた。トランプが勝つのもいろいろ不安心配だが、負けたときに起きることもすごく不安である。
民主主義がその不完全さを露呈すると、世界の権威主義国家が「やはりアメリカはダメだ、アメリカ型の民主主義はダメだ」とますます勢いを増して、世界の情勢も不安定になるよな。
自民党総裁選ですら、投票できないのにあれこれ心配するわけだが、アメリカ大統領選は他国のことだから投票できないのに、本当に心配である。
11月5日 昼過ぎ
民主主義を機能させるには、戦争をなくすには、いろいろと人間というのは能力が足りなかったり欠陥が多い生き物のように思われる。というのが61年生きて来て思うことだが、じゃあまあどの能力が足りなくて、どういう欠陥があって、ということを明確に「こうだ」と書かれた本だの研究だのと言うのをあんまり読んだことが無い。
人間・人類というのはこの程度にお馬鹿さんで欲張りで乱暴で狂暴で、だからそれらをなんとかひどいことにしないために、今の民主主義というところまで、何千年か、数万年かかかって人類というのはすこしずつ政治の仕組みを進化させてきたのだよ。という本なら、まあ、読んだことはあるような気がするが。
そういうポジティブな言い方というのは、ウソンコだよなあ、とこの年になると、思うのである。日本の総選挙が終わって、アメリカの大統領選挙が始まる今日、今朝、そんなことを思いながらぼんやりテレビを眺めている。
ほとんどの人間は飢えずに生きていくのに働くことに精いっぱいで、だから仕事以外の難しいことを考える余裕も時間もなく、いや余裕や時間がちょいとできると、政治や世の中のことについての勉強学習ではなくて、なんか楽しいこと酒飲んだりスポーツしたり音楽聞いたり歌ったり、そういうことで時間をすごしてしまうので、結局、民主主義が成立するのに必要な知識情報を身に着けることは一生できないんだよなあ。
志の高い人でも、「何が正しいのか」を熟考するよりは「これが正しい」と思う政治活動にバーンと飛び込んで活動行動している方が「いいことやっている感」が強いので「考えるより行動だー」になるよなあ。「行動が大事」主義はなかなか説得力があるからな。仲間もいるし、仲間に合わせて行動すればいいから、考えなくてよくなっちゃうしな。その方が楽なんだよな。
そのうち老いてくると難しいことを学んだり考えたりすることも、目も耳も悪くなるし尿意も頻繁に起きるしすぐ眠くなるしでどんどんできなくなって、やがて思考がいつもカスミがかかったようになって、結局、政治の難しいことは分からないや、となって「なんでこんな世の中、こんな世界なんだろうな」と思いながら死んでいくのだな。
「すまんなあ、わしが生きている間に、この世は少しもよくならなかった。ちょいと悪化させて子供孫の世代にひきつぐことになってしまった」という後悔を残して。
そんな気持ちで大統領選のニュースを眺めているのである。
11月5日 15時過ぎ
アメリカ内戦について書かれたポール・オースターの小説の感想文を書く。
11月6日 朝起きて、テレビをつけて
アメリカの州の名前と位置と州都(州最大都市と州都がけっこう違う)、全部、正確に分かっている人というのは、日本人の何%くらいいるのかな。
僕の場合、読んだ小説の舞台になった州と、NBAチームがある都市、州は分かるけど、それ以外は怪しいというか、全く分からない州もあるよな。
大統領選挙のたび、一日中アメリカの、地図を見ていることになるので、「今度こそ全部おぼえてやる」と思うのだが、でもまあすぐ忘れるのだな。
鳥取県と島根県の位置と県庁所在地、と栃木県と群馬県の位置と県庁所在地、全部正確に言える人がどれだけいるか、日本人だって正解率7割くらいぽいもんな。(当てずっぽう)
11月6日 夕方四時過ぎ、トランプ勝利宣言を見ながら
ここ10日間くらいの、BSTBS「報道1930」BS日テレの「深層報道」、BSフジの「プライムニュース」、どの番組も、直近の各種米国世論調査からトランプ優勢の基本スタンスで番組をつくっていた。
民社党びいきのTBSまで、「民主党バンザイ」系のコメンテーターを呼ぶのをやめていた。
各局番組に出ていたパックンは熱心な民主党支持者だけれど、悲観的かつ冷静な分析をしていた。それまで重宝されていた日本人のアメリカ民主党支持系学者さんは明らかに非理性的ひいきの引き倒しみたいな人が多かったから、そういう人たちはもう呼ばれなくなっていたのだな。パックンが冷静な分析をしてくれていた。
ということからも、この結果はかなり予想通りである。
なので、夜の19時から22時までBSの3局の政治報道分析番組を欠かさずザッピングはしごで見ていた我が家では「まあトランプだよね」「トランプになっていいことはアメリカが内戦にならないこと。(トランプが負けたらまた負けを認めないで、前回の議会占拠みたいなことが全国規模で起きるリスクがけっこうあったから)」「ウクライナの戦争はひとまず停戦になる(ゼレンスキー支援を止めてプーチンと話をするだろう)」みたいな会話を夫婦でしていた。
ガザ中東イスラエル紛争はトランプで今より悪くなる可能性もあるから、僕は別にトランプになって喜んでいるわけではない。
経済についても日本の安全保障についても、トランプになって困ることは日本の立場でたくさんあるわけだが、他国の選挙だから、日本には「うまく対応するしかない」のである。
前からずーっと言ってるけど、夜の7時から10時まで、テレビ見るなら民放BSの報道番組のはしごをすることをお勧めする。地上波の、NHKの7時や9時のニュース見ても、何にも分からないよ。
11月6日 夕方 脱線投稿
アメリカ大統領選があってもUEFAチャンピオンズリーグも見る。見た。
レアルマドリード×ミラン、リヴァプール×レバークーゼン、
マンチェスターシティ×スポルディングCP(守田出場)
全部いろいろ面白かったぞ。
11月6日 22時、BSフジ、プライムニュースを見終わって
今日のBSプライムニュース、岸田前首相と、外交アナリストのジョセフ・クラフトさん(選挙前の出演でも民主党、ハリスにずっと批判的だったので、今日はご機嫌である。番組前にも共和党の選対幹部とメールのやり取りをしていたといっていた。共和党側の人だと思う。)。
もちろんアメリカ大統領選の話。これから日本がトランプとどう付き合うかの外交の話を岸田さんに聞く、という内容。
なんだが、ジョセフ・クラフトさんが、岸田さんのバイデンさんとの関係の作り方とか、広島G7とかについて、「別に岸田さんがここにいるからこんなこと言うわけではないですが」と前置きを何度もおきつつ、岸田さんのことを絶賛しまくる。よいしょしまくる。「バイデンさんはボディランゲージからして岸田さんのことを弟のように家族のように思っているようだ」「価値観の押し付けをしてグローバルサウスの反感を招いたドイツサミットの反省をして、岸田さんが「国際法の遵守」を合意点にしたことが大きな成果につながった。歴代のサミットでも最高のひとつ」みたいにほめまくるわけである。
と、岸田さんが、首相時代には見たことも無いようなご機嫌の、もう顔赤くなって鼻のあなふくらんじゃって、口元ムフフってなって目元笑ってるというかうるんじゃっている、超ご満悦の表情で、自分の業績を振り返るというか自慢する。だれも反論せずに感心して聞いてくれるのである。
という、すごい展開であった。リラックスしてしゃべると、首相時代の記者会見や国会答弁のような、言葉ぶつぎりでの変な話し方にならず、なめらかに話す。一緒に見ている妻が「岸田さん、普通に話せてるね」というくらい。
ジョセフ・クラフトさん、もともとモルガンスタンレーからバンクオブアメリカの日本支社の金融ビジネスマンだから、っていうか今も本業はビジネスマンだから、相手を気持ちよくさせるのがすごく上手。ほぼ宴席でご接待してあげている感じである。
こんなにご機嫌でご満悦の岸田前首相を見るのは初めてかも。岸田さんの「誰も批判する人がいなくて、褒められるだけなんて、ここ何年もなかった、天国かここは」みたいな様子を面白がって鑑賞する、という番組になりました。
BS-TBSの報道1930は、ゲストが杉山晋輔元駐米大使、中林美恵子早稲田大学教授、前島和弘上智大学教授、これにパックン。前島教授はオバマ政権に近かった民主党寄りの人、中林さんはアメリカ上院委員会の共和党側で勤務経験がある、この選挙前もトランプ寄りではないが、民主党、ハリスには批判的だった立場。パックンは民主党支持の立場。民主党寄り2、共和党寄り1の配置。パックンは落ち込んでいたな。「ハリス勝利」をちょっと期待しての事前キャスティングぽいな。TBSとしてはハリスが負けても、民主党寄り立場から大統領選挙を振り返る、という番組でした。
比較して面白かったのはやっぱりプライムニュースでした。岸田さん接待番組ではあったが、これから日本がすべきこと、直面することについて考えるという意味で、前向きで有益なのはプライムニュースでした。
11月6日22時過ぎ、プライムニュースの録画を見直しながら
スーザン・ワイルズ。
トランプの勝利演説のなかで、トランプが感謝の気持ちを込めて彼女の名前を10回くらい呼んで、マイクの前までつれだしたが「彼女は後ろにいるのが好きなんだ」ということで何も語らず引っ込んじゃったが、それでもまたトランプが何度も名前を呼んだので、誰だろうと調べてみた。
トランプの回りの女性は金髪長身のイヴァンカみたいな容姿の人だけで、あとは男だらけの印象があったのだが、この人だけすごく違う感じである。妻も「この人、なんかすごくまともだよ」と感想を言うくらい。
自身は表舞台にでないが、選挙参謀として超有能で、今回の圧勝は彼女のおかげのようである。トランプが今回の選挙のために頭を下げてチームに入ってもらったという伝説の女性だと、雑誌「選択」に書いてあった。日本語記事は少ない。
と思ったら、さっきのプライムニュースでクラフト氏が
「彼女が事実上トランプを勝たせたわけです。で、彼女が望めば首席補佐官を与える。と言われているんです。彼女が首席補佐官になれば、要職にまともな人物を推薦してくれて、トランプも言うことをきくのは間違いないと言われています。」
スーザン・ワイルズ、この人の顔と名前は覚えておいたほうが良さそうである。
11月6日、23時過ぎ
トランプは外交も「ディール」、取り引き、損得と考えている。演説でも「ディール」という言葉を外交についてよく使う。ので、前回大統領のとき、プーチンや金正恩とも「ディール」だから平気で付き合ったのである。プーチンや金正恩から見てもその行動原理は理解できるのだと思う。民主党の大統領のように正義を押し付けないから。だから、トランプ時代に戦争がなかったのだ。(ほんとに少なかった)
トランプは選挙中、中国へのものすごい関税のことなんかをぶちあげたが、おそらく直接会って「ディール」をするための、まずは吹かしである。会ってしまって「ディール、ダン」となればニコニコ握手をするかもしれない。そして国内には「中国からこんな得を引き出したぞ。」とご満悦で自慢するだろう。
日本の首相、政権はどうしたらよいか。民主党の大統領なら、アメリカの「正義」「筋」に賛成してくっついていけば良かったのだが。アメリカの後ろにくっついていけば良かったのだが。
トランプはプーチンとも習近平とも金正恩とも、突然、どんなディールをおっぱじめるか分からない怖さがある。そうなったら日本独自の覚悟でそういう周囲の国との外交もしなければならなくなるかもしれない。トランプ大統領・安倍晋三首相時代を思い返すに、安倍さんが(成果はともかく)独自にプーチンと外交努力を重ねたのも、そういう側面、背景があったのだと思う。
11月7日に日付変わるころ
アメリカ大統領選を1日見ながら、州の名前と位置を覚えて、アメリカ地図の書き方もだいたいわかるようになりました。老化予防トレーニング。(名前は完全に覚えた。地図は何も見ないで書くのはまだちょいと無理。)
11月7日 午前2時 考えたことまとめの長文を書いてしまう。
アメリカ大統領選挙を丸一日、というか火曜日の昼くらいからCNNが特番体制になって、ずっと見ていたから一日半くらい、テレビ二台で、CNNつけっぱなしにしつつ、もう一台を日本の放送、NHKや民法をザッピングしながら見続けつつ、考えたこと感じたことをつらつら書いていきます。きっといろんな人の気に障ることを書くとおもうので、はじめに謝っておこう。
僕はトランプを応援していたわけではないが、カマラ・ハリスと、その前のバイデンのことは本当に大嫌いだったし、それがどういうことかは書きだすとすごく長くなる。でも、民主党政権万歳、トランプ大悪人という日本の地上波の報道は明らかに偏っている。トランプにもいいところがあるから、アメリカ人半分の人はトランプに投票したんだよ。そのことの意味をきちんと考えようとしないのは知的怠慢である。あるいは民主党、バイデン→ハリスには明らかにダメなところがあるから、この四年間で票を減らして負けたんだよ。今回は全体得票数でもトランプが勝ってるからな。そのこと、その理由をきちんと考えないのは知的怠慢である。
前回、バイデンが勝ったときのことを思い出すことから話を始める。
CNNの黒人の男性キャスターが泣いて喜んでいた。自分の家族の女性たちのことを思って、安堵の涙を流していたのだな。それを見て、トランプ時代、黒人の人たちは、特に黒人の女の人たちというのが、本当に命の危険が日々、増えていく、そういう生活感覚の中で生きていたのだなと思った。僕の友人の、もちろん日本人の女性、ニューヨークに住んでいる彼女も、当時「もうアメリカに住んでいるのが嫌になったというか、危険ですらある」ということを言っていて、トランプのことを本当に嫌っていた。トランプが負けてバイデンが勝って本当に喜んでいた。ので、僕も四年前は、「本当にトランプが負けて、バイデンが勝って良かったなあ」と思っていた。
今回、そのキャスターではなかったけれど、トランプの勝利が確定的になった後、CNNで、女性2人、黒人男性キャスター1人、白人のキャスターだか有識者2人の五人で敗因をお通夜のように語り合うのを見ていたのだが、黒人キャスターは四年前のキャスターと同じように「黒人や女性は、白人男性と同じように、トランプが勝手気ままに自由に言いたいことを言うようなことは、今もできない。そういう状況は改善されていないし、トランプが勝ったことで、またそういう状況は悪い方向に向かってしまう」と語った。
つまり、「アイデンティティ政治の視点で、トランプとの戦いをまず語る」という姿勢は四年前と変わっていなかったのだな。それは彼にとっては、アメリカに住む黒人や女性にとってはそれは生存を直接脅かされるという深刻な問題だから、変わらないのは当然だろうとは思う。
でもね、トランプが取り上げた経済問題と移民問題は、これは白人も黒人も男性も女性も関係なく、生存に関わる問題として支持の幅が広かった、ということだと思うのだよな。
白人の有識者らしい初老の男性は、「経済の問題を、現政権の責任として追及する。ハリスにその責任があるという、トランプの論法の方が強かった」という指摘をして、お通夜なんだけれど、議論になっていたんだな、CNNで。
四年前も今も「アイデンティティ政治」(黒人や女性やLGBTQの立場の主張が正しく、男性白人という強者加害者側(トランプはその代表)を批判する政治姿勢)というのを、民主党は結局変えられなかった。
そういう主張はできるだけ前面に出さないように、注意してカマラ・ハリスとその陣営は論戦をしていたのだれど、やはり「黒人(アジア系とアフリカ系のミックス)で女性」という候補を立てた時点で、アイデンティティ政治の文脈がどうしても前面に出てしまい、「それじゃあない」という反感を、例えば黒人男性、例えばヒスパニック男性、そういう人たちの支持の一部を失ったのである、民主党ハリス陣営は。
そしてもうひとつ、こっちこそ、僕がバイデンとカマラ・ハリスが嫌いなことの主たる理由。
トランプは、事実としての前回の任期中に戦争をしなかった。ほとんど。
それに対してバイデン政権の時代に、世界は戦争だらけになった。ウクライナの戦争はプーチンが始めたものであることは、国際法上の視点からは全く100%事実だけれど、僕は、バイデンが大統領になってからの外交についての声明、白書などをもれなく読んだけれど、いやあれ、別にロシアを挑発したりはしていないのだな。それよりひどい。無視、眼中にない、「アメリカの唯一の外交、軍事上の潜在的敵は中国だけ」という意味の言葉を。繰り返し繰り返しバイデンは発信したのだな。僕はプーチンの「コケにされた」という気持ちがよくわかる。バイデンの、息子のウクライナガス会社との関係とかまあいろいろあるのだが、都合よくロシアがおっぱじめた戦争に、バイデン政権の幹部、ヌーランドもオースティン国防長官もアメリカの軍事産業からの回転ドアで政権幹部になった人なのは紛れもない事実だからな。明らかに「民主主義とか国際法とかの大義で戦争をする」ことと「戦争ビジネスを回すこと」が一体となっているのが民主党バイデン政権で、ハリスは戦争開始直後にウクライナ隣国のポーランドに飛んで、「軍事支援いくらでもするからポーランドがんぱれ」とげきを飛ばしていたのもまぎれもない事実。
トランプは金に汚い政治家と思われているけれど、戦争をビジネスにする政治家ではない。この一点で、バイデンよりも、トランプの方が、僕は世界にとって好ましいと思っている。
トランプの政治哲学は、環境問題に配慮しないとか、いろいろひどいと思うけれど、「戦争をビジネスにする気はない」というのだけは、過去四年間を見ても、これは本当のことだと思う。
「戦争をビジネスにするのは民主党政権」「戦争をビジネスにした共和党政権はブッシュ親子まで」。歴史を振り返れば、これが事実だと思う。
共和党主流派からトランプが嫌われているのは、戦争をビジネスにする共和党の古い主流派とは距離があるからというのも理由のひとつだと思う。
ウクライナについて、正義とか民主主義の理想とか国際法秩序とか、そういうことではバイデン民主党が正しいのだろうけれど、大義正義のためならいくらでも武器は供与して、ウクライナ人、もう戦う人が足りなくなっているのに、戦争を止めようとしない。とことんやれと言い続けているのだな。
トランプは「大義なんか知るか。」ではある。でも「とにかく戦争はやめる。アメリカ人の金と、ましてやアメリカ人の命を外国の戦争のために使うのはやめる」ということの結果としての「戦争をしない」である。志は低い。でも、わりと戦争はしないのである。バイデンと比較すると。
イランとも、中国とも、イスラエルとも、「大義とか正義とかはどうでもいいが、とにかく戦争しないで、何か経済的メリットでお互い妥協点を見つけてディールしよう」というのがトランプのやり方である。北朝鮮とだって条件が合えばディールしちゃうだろう。
まとめると、
①国内政治問題的には「黒人や女性やLGBTの生存、権利が脅かされていることを解決する」民主党アイデンティティ政治に対して、「そういう属性に関係なく、不法移民と経済不振で生存条件が悪くなっている全国民(白人男性も含む)をなんとかするトランプ」という対立で、トランプが支持されたのである。トランプを支持したのは白人男性だけでなく、黒人やヒスパニックの男性も、けっこうトランプ支持に回ったのである。
②世界の戦争紛争に関しては、ウクライナ戦争とガザ紛争が続いたことで、「世界での戦争を民主党政権、バイデンもハリスも全く止めることができない」「トランプ時代には戦争はほとんどなかった」というふたつの事実から、ひとつは「ウクライナにもう金は使いたくない」、もうひとつはアラブ系住民まで「バイデン、ハリスはガザのジェノサイドを止める気はない」「トランプはイスラエル、ネタニエフと親密だが戦争は嫌いだから、ネタニエフに戦争をやめるよう説得できるかもしれない」ということで、アラブ系住民までトランプ側に回った。少なくともハリスを支持しなかった。
⑴民主党、ハリスのアイデンティティ政治(属性で被害者と加害者を分断する)よりも、経済全体を立て直して、属性に関係なく生活を改善するトランプのほうが良い。
⑵正義のためといって海外の戦争をけしかける、金と武器をつぎ込む民主党政権のやってきたことは、アメリカ国内の人のためにならない。ガザ紛争に至っては大義すらない。ジェノサイドへの加担である。それに対して、トランプは戦争は嫌いのようだ。戦争には金は使わない。
いやいやでも、トランプの、前回選挙後の、議事堂襲撃をあおった責任はとか、ポルノ女優となんとかとか、いろいろ起訴されていることの責任はというのは確かにあるのだが、そういうことは「狙撃・暗殺未遂」事件で、「政治的暴力の被害者」にして「神に選ばれて生き残ったもの」というストーリーで、それは全部吹っ飛んじゃったんだな。これはまあ奇跡というか運というか、そういうものが確かに働いたのである。
でね、「アイデンティティ政治より経済政策により、広い国民にとって実感できる生活改善する」「(不法)移民問題を、国民の安全や経済雇用の問題として考える」「大義のために外国の戦争を支援する、そのために国民の税金を使う。というのをやめる。大義のための継戦よりも、まずは停戦、戦争を止める」というトランプが支持された三要素というのは、日本の政治においても議論されるべき問題だと思うのだよな。日本に関係あると思うから、これだけ長々と書いたのである。