小説『コペルニクス博士』とベーシックインカム、MMTについて。
Facebook 長文投稿転載。
昨日、書きかけ放置してあった、小説『コペルニクス博士』とベーシックインカム、MMTについて。あまりに長くてややこしいかと思ったが、スペインでベーシックインカム導入のニュースが出たので、興味ある人も少しは増えるかと思うので投稿。
原 正樹
昨日 17:14
この前、『コペルニクス博士』という本を読んだ、という投稿はこの前した。地動説というのは、科学的観察と数学的計算から、そう考えないと計算、複雑すぎますよー、ということから生まれたわけだ。コペルニクスが初めに言い出したわけではなく、ただ、それを、数学的に、天文学的に緻密に計算して緻密に完成させたのが、コペルニクスなわけだ。
コペルニクスは主著の原稿『天球の回転について 数学の専門家のために』原稿を書いて持っていたのだが、出版するつもりは無かった。内容にいくつか不満があったり、宗教的混乱、それと結びく政治的混乱を引き起こす気もなかったから。
それを出版させるためにコペルニクスに取り入ろうと近づいてきた若い学者が、ついにそれを読んだときの感想。(もちろん、小説の作者、ジョン・バンヴィルの創作だが。)引用します。
「この時の心理をどう表せばいいのだろう?手の中の生きた神話、宇宙の秘密を解き明かすカギを見たとき、この胸の内で燃え上がった不思議な感情の数々を?何年もの間、寝ても覚めてもこの本にとり憑かれていたために、私はほとんどこの現実を理解することができなかった。その読みづらい文字の一つ一つは、何かを語っているのではなくて、まるで歌ても歌っているかのようであり、荘厳なる題名は天を称えるラッパの音の如く轟きわたり、その伴奏として、慎重な忠告を含んだ副題が俗世の弦楽を奏でていた。言語を絶した天と地の奇跡の音楽を聞き、私はなす術もなく白痴のように笑うのみであった。しかしそれから頁を繰り、太陽が永遠不動の中心という栄光の座を与えられている天球図が目に留まったとき、音楽は一掃され、それと共に私の間抜けな微笑も消え、新たな、まったく予想もしない感情が全身を走った。何と、悲しみである! かつて王であった地球が、むっつりとした火の暴君の命令で退位し、空の闇の中に追放されたあげく、そこで跳ね回っていなければならないということに対する悲しみである。同胞よ、私は我が王国の衰微を嘆き悲しんだ! もちろん、それまでのコペルニクスの理論が太陽を中心に定めていることを知らなかったわけではないし====誰でも知っていることだ===ともかく私は、メランヒトンの手垢で汚れた『小論』の写しを読ませてもらっていた。それに、これも誰でもと知っているとおり、太陽を中心に据えたのはコペルニクスが最初ではない。そうだ、私はずっと前からこのプロシア人が何を研究していたのかを知っていたが、それでもこの日の朝、レーバウの城の中で、私は初めてこの宇宙地理学の研究が引き起こすものの全容を理解し、目が眩むほどの恐怖を感じたのである。愛しい地球よ! 彼はお前を闇の中に葬り去った。だがそれがどうしたというのだ。空は永遠に青く、台地は永遠に花咲く春を迎え、そしてこの惑星は我々の知る限り万物の中心てあり続ける。私はそう信じている。」
引用、おしまい。
そして、僕は、何が言いたかったのか。
ベーシックインカムを人が理解しようとしないのは、「働いてお金をもらうことが尊い」という、自分が信じてきた倫理道独観・常識に反するからだ。そんな制度になったら、働かない怠け者が得をしてしまう。
MMTを、人が理解したがらないのもそうだ。国だけは借金をしても返さなくていい。どれだけ借金が大きくなっても平気なんて、おかしい。そんなことになったら、個人も、会社も、借金を借りても返さなくなっちゃう。今まで、借金を、何があっても返そうとがんばってきた私の一生はなんだったんだ。
この世界を支えていた、勤労とお金と借金についての、「当たり前の世界」が壊れてしまうから。そんなことになったら、悲しくて耐えられなくなるからなのだ。
ベーシックインカムとMMTについて、政治的左右に関わらず、学問のあるなしにかかわらず、どうしても受け入れない人が多数なのは、そういうことだと思う。
ベーシックインカムについては世界の様々な国で社会実験が行われて、貧困層の勤労意欲は落ちないこと、貧困・生活破綻から抜け出して働くようになる人がむしろ増えることが分かっている。衣食住の基本が不安だと、人はしっかりと働いたり、より職業につこうと努力したりすることができないことが、社会実験で証明されているのだよね。
そういう成果があっても、なかなか本格的に制度として導入する国は出てこない。
でもね、コロナウイルスへの、国民への直接給付を期に、日本が率先してベーシックインカムに舵を切ったら、カッコいいと思うよ。
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