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乗代雄介『旅する練習』については、語らない、感想は書かない、思っていたのだが、高橋源一郎さんのラジオでの解説を聞いて、ちょっと、考えが変わった。

『旅する練習』 単行本 – 2021/1/14乗代 雄介 (著)

Amazon内容紹介

第164回芥川賞候補作。中学入学を前にしたサッカー少女と、小説家の叔父。2020年、コロナ禍で予定がなくなった春休み、ふたりは利根川沿いに、徒歩で千葉の我孫子から鹿島アントラーズの本拠地を目指す旅に出る。
ロード・ノベルの傑作!

これについて、高橋源一郎さんがラジオで取り上げていた。

NHKらじる 番組紹介ツイッターから引用
【#高橋源一郎の飛ぶ教室】明日5/7(金)の #ヒミツの本棚#乗代雄介 著、 第164回芥川賞候補作『旅する練習』です。2コマ目のセンセイは・・・、この1年、コロナのことばかりをマンガで描いていたという、漫画家の #しりあがり寿 さん!
#高橋源一郎

ここから僕の感想。

 読んだのは何か月か前で、そのときに、感想を書こうかと思ったのだが、やめた。すごく好きなところがたくさんある小説だったけれど、読み終わった時、大嫌いになっていたから。

 まず、乗代雄介という人、『本物の読書家』は、ここ数年読んだ日本人の若手小説の中で、いちばん面白かった。すごい小説だった。なのだが、あんまり売れなかった。この人、知的で、博識で、シニカルで、企む人で、読後感が、良くはないが凄いなあ、そういう作家だった。

 『旅する練習』は売れているらしい。口コミで、売れているらしい。そうか。そうだよな。純文学を読まない人にも話題になるために、売れるようになっているもんな。そのことについては、ネタバレだから書かないけど。そうかあ。そういうことをするのか。あざとくないか。そのことが、すごく嫌だった。そういうことしなくても、小川洋子さんの『博士の愛した数式』みたいに、ちゃんと売れたと思うのに。


 そのこと以外は、すごくいい小説なのに、そのことが嫌だった。好きだけど、嫌い。この小説については、感想書きたくない。そういう風に、自分の中で、評価を決めた。

 その小説について、高橋源一郎さんが取り上げて、僕の嫌いなそのことについては、高橋さんも「ネタバレだからそのことは話さないけれど」と語りつつ、この小説の素敵な点について、とても上手に、解説してくれています。それを聴いていたら、この小説の本当に素敵なところについて思い出して、涙が出てきてしまった。

 そのうえで、小説の中での「風景」について、「風景描写って、読まれない、とばされちゃうんですよね」ということについて、それでも、主人公、語り手は小説家なんだけれど、彼が風景描写を練習することの意味を解説してくれて、それを聴いているうちに、ああ、なるほどなって思った。このラジオ番組の聞き手の女性も、「風景描写は飛ばしちゃいますよね」って言っていて。そうか、そういうことか。全体としてのたくらみが、ようやく、腑に落ちた。

 僕が何を書いているか、わからないですよね。

まずは、この、ラジオ番組、5分目くらいから、『旅する練習』の話になります。来週5月14日午後9時55分まで、下記リンクページで、聴くことができます。
小説読もうかどうかは、ラジオ、聞いてみてからでもいいかも。

番組後半はしりあがり寿さんとの対談も面白かった。

番組は下記下線部クリックすると、配信ページに飛びますが、配信期限は2021年5月14日午後9時55分まで

【#高橋源一郎の飛ぶ教室】


 そのうえで、小説も読みたくなったらそうしたら、読んでみて、僕が嫌いになった理由もきっとわかるから、そこまでわかった上で、「風景描写の練習」を小説家がする意味、小説に風景描写がある意味、多くの人が、それを飛ばしてしまうのに、そのことに、小説家が努力をして、練習をして、取り組む意味と言うのを、考えてみるのも、よいかなあ、と思う。

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