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イベントレポート:「両利きの経営」の本質~提唱者と実践者が集い、語り、議論する組織変革と経営者の役割~

立教大学で行われる予定だったコチラのイベントですが、残念ながら昨今の事情によりyoutube配信に切り替え。致し方ないので、我が家で集まって、プロジェクターでのパブリック(?)ビューイングで参加させていただきましたので、概要をお伝えします。

あ、トップの画像は「両利きの経営」にあうイラストが思いつかなかったので、天秤にしてみました。ただ、本質論から行くと「どちらか」ではなく「両方」を目指すべき。がオライリー教授の考えなので、外れていることをご了承くださいね~。

チャールズ・A・オライリー氏(スタンフォード大学経営大学院 教授)

言わずと知れた「両利きの経営」の提唱者。

まずはコダックvs富士フイルムのストーリーを基に、いかに両利きの経営が必要であるかを説明。ただし、コダック社が劣っていた訳でもなく、新規事業に無頓着だった訳でもない。その差はカルチャーだったと解析。(※後程説明しますが、カルチャー≠文化)

では、二社の命運を分けたのは一体何か?オライリー教授の考えは、
 ・戦略をタスクに落とし込む
 ・タスク実行に必要なスキルを持つ人材をアサイン
 ・人材をうまく活用するための組織運営
これらが組み合わさってできたカルチャーこそが生存競争に富士フイルムが打ち勝った勝因だと分析した。

通常、どんな企業も最初はイノベーティブなビジネスで勃興するが、それがスケールアップする中で、もっと効率的な運営をするために組織化し、機能が細分化されていく。これが風土化されて行ってしまうと、ビジネスが惰性で回りはじめ、再びイノベーティブな発想をできる組織体ではなくなってしまう。

いわゆる「知の深化」である既存事業の拡大と「知の探索」である新規事業の開拓は、異なるカルチャー、異なるビジネス感性、異なるハウツーが必要になると考えられる。

会社の経営には以下のような3段階のフェーズがあると考えてる。
 ホライズン1:アイディアを生み出す。
 ホライズン2:出てきたアイディアをインキュベートする。
 ホライズン3:さらにスケールアップし、軌道に乗せる。
それぞれのフェーズで求められるリーダーの素質は異なる。とはいえ、これらを同時に進めることが出来ないと変化に対応することはできない。なぜなら、変化はどのように発生するか予測不可能だから。

なので、これらのフェーズで組織は分けた方が良い。ただし、適切な資源配分を考える必要があるので、トップダウンの意思は確実に必要である。

また、既存事業と新規事業は求められるカルチャーは異なるが、企業として同じビジョンを共有しているかは重要である。(ここは時間切れで深堀せず)

ウリケ・シェーデ氏 (カリフォルニア大学サンディエゴ校 グローバル政策・戦略大学院 教授)

オライリー教授の後にシェーデ教授が登壇

新規事業と既存事業は必ずコンフリクトする。そこでどうするか?の問いに対して著名な二人の経営学者の意見はこうである。

 クレイトン教授(イノベーションのジレンマでおなじみ)
   ⇒会社を分けるべき
 オライリー教授(両利きの経営)
   ⇒経営者が両利きの経営をすべき

では、先ほどオライリー教授が盛んに提唱していた「カルチャー」とは何か?日本語に訳すときに間違ってしまうのが、「文化」という翻訳。ここでいうカルチャーとは「やり方(ビジネスのやり方かも)」。

なので、既存と新規では、ビジネスのやり方≒行動規範をトップが先導し、従業員が腹落ちしなければ進まない。

例えば、新たなカルチャーを作りたければ、何か新しいことにチャレンジした人を表彰し、そのための人事制度を変える等、実際の活動に対して、称賛し、それに基づくルール変更など、多くにわたって制度を見直す必要があるだろう。

島村琢哉氏 (AGC株式会社 代表取締役兼社長執行役員CEO)

ここからは梅本特任教授と島村社長とのディスカッション

AGCは両利きの経営が出来ている実例で挙げていただいているが、実際には最初から狙っていた訳ではなく、結果的に両利きになったという事。(トップ就任時は不安も色々あった。)

大企業の経営を引き継ぐことは前例の経営を引き継ぐことがほとんどであるが、AGCの場合は4期連続で利益率が下がっていて、危機的状況だったので、今までと変えることが前提条件ではあった。

AGCでは私(島村社長)以外に、2人の代表取締役(平井専務、宮地専務)がいて、三人が雑談⇒ダイアログ⇒ディスカッションと対話を深めたことで心持を同じく動いていける体制があることが良い力になったと思っている。

※ここで島村社長が「私」ではなく「私達」と複数形で話していること自体が他社では見られない特徴との事。

最初からカルチャーが変わったわけではなく、社員全員とのディスカッションを何年も繰り返してきたとあとに、中堅社員(10年目?)が自主的にAGCの企業理念とは?と勉強会を開いてくれたところから、AGCが変わっていく手ごたえを感じた。(社内報らしきスライドに磯村さんの名前を発見!!)

とはいえ、既存事業の利益がなければ新規事業なんてできない。キチンと部署を分割し、ハレーションを起こさないように注意する事はしてきた。

あとは、トップがいつも明るく元気でいることが重要かな?ワハハ!!

加藤雅則氏 (アクション・デザイン代表、組織コンサルタント)

※ココでメモ紛失のため頭で覚えていることのみ。

変革はトップだけで起こすものではない。ボトムだけで動いてもダメ。この二つが組み合わさる場所で、変革は起こり始める。

また、考えているだけではダメ。トップは常にシグナルを送り続け、それに応答するボトムが出たときに初めてスタートラインにつくと思われる。

最後に原田感想

全体と通して新たな気付きは「カルチャー≠文化」でしょうか?

ここを「ビジネスのやり方」と考えることで、今まで自分の中でしっくりとこなかった「両利きの経営」がストンと腹落ちしました。

同じ会社で文化が異なる、は難しいけど、やり方が異なる、は頑張れば出来ることですものね。

ただ、私の中で燻っている疑問としては、両利きの経営は響きは良いのですが、二兎追うものはリソース不足になりそうな気がしてなりません。AGCさんのように大きな組織は対応できますが、日本の大部分を占める中小企業はどうなってしまうのでしょうか?

このあたりはアカデミアの先生方の研究対象にはなりにくいと思うので、自らが実証する形で深堀出来たらな~と思っております。


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