黄色のチューリップを、僕へ
知らず知らずのうちに、恋をしていた。
僕は、好きになった人の日常になりたいとずっと思っていた。だから、君の好きな音楽、好きな食べもの、好きなお酒、好きな花、好きな時間の過ごし方を会うたびに少しずつ知っていった。
そして、僕の中の日常に取り入れていった。
僕の中に溶け込むのはあっという間だった。好きの力って、本当に大きいんだと感じた。
またいつも通り君とお酒を交わす。
午後6時。時計を半分にしたような針の動きは、いつの間にか重なって一つになっていた。
君の好きなジントニックを2杯目に注文する。君はまだ1杯目のジントニックをゆっくりと体に巡らせる。
君はおもむろに口を開く
「君にも、恋人はできた?」
店員さんが僕の前に置いたジントニックを慌てて飲みながら、僕は
「いい感じの子ならいるんだけどね、」
と、ほろ酔いながらも精一杯の強がりを見せた
午後10時 二人でお店を出て、銀座駅へ向かった。
僕は寄る場所がある、と言って駅まで送り届けたあと、ゆっくりと歩きながら花屋へ向かった。
毎週、僕は自分のために花を買う。
僕は今週、黄色いチューリップを自分に贈る。
君の日常にはなれなかったけど、僕の日常の中に君がいたことが僕にとっての本当に幸せな時間だった
僕は、幸せな恋をしていた。
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