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「細雪」を読んで

注意!

今回は谷崎潤一郎「細雪」を読んだ感想です。

「まだ読んでないよ!」「これから読もうと思ったのに!」

そんな方はブラウザバックお願いします。

それではどうぞ。

美しい日本の景色

花見や月見、蛍狩りなど絵巻物にでも出そうな風景がぎゅっとつまっている。

津波や戦争などの大事件も起きる。

しかしここに描かれているのはある家族の日記のようなものだ。

主人公の雪子を中心に、四姉妹の家族ゆえの葛藤や優しさなどを丁寧に描き出している。

雪子への共感


大阪の旧家のプライドの高さには驚いた。雪子の縁談が物語のメインテーマだが、失礼にあたるようなことを平気でする。雪子のあまりのわがままさにはあきれ果てた。だがわがままを言うことができるのは、旧家だからかもしれない。

雪子のような人は現代にもいるだろう。

自分で否を言うことが嫌だ。相手が言うまでそれを待っている。

なぜかというと、是ということよりも否をいうことの方が簡単だからだ。

私もその一人かもしれない。優柔不断を良いことと捉えることもできるが、雪子の場合は悪い癖だろう。財閥の令嬢ゆえのプライドの高さ、度を越えた奥ゆかしさ。「友達にはしたくないな」というのが正直な感想である。自分と似ているから。

お気に入りは妙子

四姉妹の末っ子妙子は、私のお気に入りである。

自立し、向上心もあり、手に職をつけることをいとわない潔さは、大変気持ちの良いものだ。友達になるなら妙子が一番おすすめである。

作品発表当時の反応はわからないが、妙子はかなり先進的だったのではないだろうか。女性の社会進出が叫ばれる現在に妙子がもしいたら、バリバリに生き生きとしていただろうな、と思う。

だからこそ最後が残念だった。なぜ幸せにしてくれないのだろう。何も悪いことをしていないのに。人生のはかなさを表しているのかもしれない。どんなに元気な人でも、少し足を滑らせただけで命に関わることがある。

そういう人生観も持ち合わせている作品である。

映画のような作品

細かい人物描写、まるでスクリーンに映し出されたかのような風景。大きな映画館で、リラックスして作品を見ているような気分になる。

まさに絵巻物語であった。

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