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書き溜め

日常的に浮かんだ言葉をメモする習慣があるものの、結局体をなさずに溜まっていくばかりである。だから、今日で7月も終わるということに託けてこれまでに書き落とした言葉も全部ここに放ってしまうことにした。殆どが短いただの呟きのような言葉であるが、確かに私から出ていったものたちだ。


 ̄ ̄ ̄ ̄


私はあなたから遠ざかっていく
この目に一点の泡沫を残して


目の前の悲しみに静かに手を合わせている
ただの私のまま このままで生きていきます


悲しみも苦しみもないような顔で笑っていながら、心で泣いている人もいる。
これは昔、母に言われた言葉だ。
母のことだなと私はその時思った。
母は自分の人生を、人のための人生だと言う。そう言うのならきっとそうなのだろう。けれど幼かった私は、私はそんな人生を歩みたくはないと、心の中で反発していた。私は私のためだけに、この馬鹿げた世の中で生きていくのだ。そう、思っていた。小学校の頃だったように思う。あまりに何も知らなかった。


ここ1ヶ月、身の周りのものを悉く売るか捨てるかしている。本は今月だけで80冊は売った。雑貨も、20点以上は売りに出している。今売る準備をしているものも合わせると本も雑貨も含めて150点くらいを手放すことになりそうだ。自分の部屋にそんなにものがあったことに驚く。そして私の部屋には美しいものが殊の外多くあった。
この数ヶ月多忙を極めた生活を送っていた中で確信めいたものが自分の中には沸々と出てきて、生きていく上で必要なもの、自分にとってのそれはあまりに少ないように思えてならなかった。
だからこうして手放してみることにしたのだが、存外気分が晴れやかになるので少し驚いている。


あの人のいた 夜ではない
あの人のいた 夜ではないのだ


だから私は あなたの吸っていた煙草を吸った
味の良し悪しなど分からなかったけれど
喉が痛んで 吐いた息があまりに煙たくて
無性に泣いてしまいたかった


誰も信じないことで 自分を守ってきた目が放つひかりを私はよく知っている


みんな苦しいのだ。みんな苦しいのだから、あなたも苦しいと言っていいのだよ。


狭い部屋だった
そこが私の全てだった


嫌いな人に自分の何も明け渡さないこと


弟、お前の頭で正しいと思う方へ行きなさい


それでも ピアノを弾いている間は
ピアノに守られていると感じるのだ


こういうぬるい時間が私を救ってきた


私にとって誰かを信じるということは、この人なら自分のことを傷つけない 裏切らないだろう、変わらぬままいてくれるだろうという全幅の信頼ではなく、この人になら たとえどんなに酷く傷付けられても 甘んじて受け入れられるなと思える人に、自分の大切な部分を預ける、ということなのだと思う。
人の心は常に揺れ変わっていくものだと思っているから、どんなに気の置けない友人にも、この人は変わらないだろう希望を抱いたりはしない。
そして私には、自分の大切な部分を預けている人が二人いる。私はそれが稀有なことだと知っていて、二人のことを考えると泣きそうになるくらいには好きだ。二人は私が預けていることも、それが何かも知らない。私は勝手に救われている。いつか二人と疎遠になる時が来ても、どうか知らないままでいてほしい。


私はその夜を夏と名付けた


何も知らぬふりをして笑う人だった。
ただ唯一、彼女の弾くピアノだけは彼女が目にしてきた寂しさを物語っていた。
幸せなうちに死にたい と
少し微笑みそう言いながら、どこか遠い目をしていた。
私たち二人は死への考え方が違う。それでも、同じような孤独を抱えているのだとあの日思った。それを伝えようなどとはつゆさえ思わないけれど、言ってもきっと笑ってくれるのだろう。


頑張ってるねぇ、と、緩やかな微笑みを携えた顔で、彼女は言いました。それがなんとも不思議な薬のように私の心に染みて、もうさっきの苦しさなんて忘れてしまうほどでした。人間に人間が救えないというのは、あれは嘘っぱちだ。小さな救いは日常の中に静かに浮遊している。


溺れるように生きているとずっと思っていた。
けれども、どうやらそうではないらしいのだ。


僕らはきっと宇宙の忘却だ
章を渡ってここに来た
在りし日の陽射しが融けてゆく
ここから一歩も動けない


 ̄ ̄ ̄ ̄