【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#004 現代ホラー映画界最重要コンビが送り出すホラーアイコン『M3GAN/ミーガン』
【六本木ホラーショーケース】
六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。
今回ご紹介するのは、2023/06/09㈮公開『M3GAN/ミーガン』です。
『M3GAN/ミーガン』
2022 | 監督:ジェラルド・ジョンストン
『M3GAN/ミーガン』は、AIを搭載した玩具の人形の暴走を描いたホラー映画です。
古より人形はホラーにとって、重要なモチーフでした。
様々な名作・迷作がありますが、アイコニックな存在として思い出されるのは『チャイルド・プレイ』のチャッキーでしょう。
スラッシャー映画の変種として登場した作品ですが、殺人鬼の魂が乗り移った玩具の人形、チャッキーはそのPOPな姿から作品を超えたホラーアイコンとなりました。
奇しくも2019年のリメイク版『チャイルド・プレイ』ではAI人形の暴走に設定が変更されており、『M3GAN/ミーガン』との近さも感じます。
今作は年明けに公開されたアメリカをはじめ、世界中でヒットしています。
そのヒットの要因の一つとして、SNS上でのバズが挙げられます。
日本版の予告編でもフィーチャーされている、ミーガンによるクネクネとした奇妙なダンスがネットミーム化し、爆発的な拡散が行われました。
しかも、映画本編は話題先行のB級作品ではなく、しっかりとした構成と映像技術を駆使した快作となっています。
ホラー作品としては血しぶきや残虐描写が少なく、これらも全世代に支持される理由なのではないでしょうか。
とても綿密な計画の元、コントロールされた面白さが想像以上の熱狂を生み出した作品だと言えるかもしれません。
製作として仕掛けたのは、近年のハリウッドを中心としたホラー映画界にとって、最重要人物であるジェームズ・ワンとジェイソン・ブラムです。
彼らが組むのは『インシディアス』シリーズ以来となります。
ジェームズ・ワンは自身の監督作『デッド・サイレンス』でも人形をモチーフとして使用しております。
そして、何といってもここ最近のホラーアイコンとしては最も印象深いアナベル人形を死霊館ユニバースで生み出しています。
この先、ミーガンとアナベルの共演なんてことも夢見てしまいそうです。
一方、ジェイソン・ブラムはジェームズ・ワンの盟友リー・ワネル監督と共に『透明人間』で最新技術を古典的ホラーに組み込むという試みを行っています。
今作のAI技術もそうですが、SF的なガジェットとして消費されそうなネタを上手くクラシカルな恐怖の仕組みへと変換する手腕が光ります。
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
『透明人間』
2020 | 監督:リー・ワネル
これまで幾度となくフィクションのネタとして登場した“透明人間”。
映画でもジョン・カーペンターやポール・ヴァーホーヴェンが題材として扱ってきました。
透明人間になるのは、一般的に謎の薬の影響という作劇が多い中、今作の監督・脚本を手掛けたリー・ワネルはもしかすると実現が可能かもしれないという最新技術を導入しました。
さらに透明人間ではなく、その影におびえる女性を主人公にした所も現代に語るべき物語としての説得力があります
『M3GAN/ミーガン』が、暴走する人形から逃れるスリラーであると同時に、現代の労働環境における子育ての問題にも切り込んでおり、現代的なイシューの扱い方に共通する部分でもあります。
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