【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#010 拡張を続ける『死霊館』ユニバース
【六本木ホラーショーケース】
六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。
今回ご紹介するのは、『死霊館のシスター 呪いの秘密』です。
『死霊館のシスター 呪いの秘密』
2023 | 監督:マイケル・チャベス
21世紀を代表するホラーシリーズ『死霊館』ユニバースの最新作です。
改めてここで簡単に『死霊館』ユニバースを説明しておきます。
2013年にジェームズ・ワン監督作『死霊館』が公開されます。
実在する超常現象研究家のウォーレン夫妻をモデルにした主人公たちが怪異に立ち向かう作品としてヒットを飛ばしました。
作中に登場したアナベル人形にスポットを当てた『アナベル 死霊館の人形』が制作され、そこから本筋である『死霊館』のナンバリングタイトルと周辺のキャラクターを描いたスピンオフタイトルがそれぞれ制作されるようになります。
これらはそれぞれに絡み合い、現世に存在する怪異や悪魔を歴史的にあぶり出していくような構成となっています。
『死霊館のシスター』シリーズは、『死霊館 エンフィールド事件』に登場した悪魔“ヴァラク”との闘いを描いています。
ユニバースにおける最古の時代が舞台となっており、ゴシックホラーのテイストが漂っているのも特徴です。
死霊館ユニバースでマスコット的な人気を博すアナベル人形と異なり、シスターの出で立ちをしたヴァラクは容赦なく恐ろしい存在です。
新作の予告編でも披露されているように、ヴァラクは至る所に現れます。
ジャンプスケアと呼ばれる、音と共に観客を驚かせるホラー映画の手法が多用されますが、そのバラエティがとても豊かです。
壁のシミがよく見るとヴァラクになっているというシーンなんかは、黒沢清監督などのJホラーの影響も感じさせる描写ではないでしょうか。
今作の監督をしたマイケル・チャベスは、『死霊館』ユニバースが生んだ申し子のような才能です。
なんせ長編監督作の3作ともユニバース作品となっている監督です。
長編デビュー作『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』は中南米の伝承をモチーフとした作品ですが、そこまでユニバースに深く入り込んでは来ませんでした。
しかし、続く2作目では『死霊館』のナンバリングタイトルである『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』の監督に大抜擢。
製作を務めるジェームズ・ワンに如何に認められているかが分かります。
作品を重ねる毎にホラー演出の手腕も冴えてゆき、最新作である本作をご覧頂ければ、エンタメ度の高い怖がらせ方の手数に唸ること間違いなしです。
一応今作も実話を基にしているという噂ですが、ケレン味とのバランスは、絶妙です。
結構ド派手なバトルが展開され、満足度の高いクライマックスが用意されています。
最近でいうと『ヴァチカンのエクソシスト』と奇しくも近い手触りを感じました。
悪魔祓いモノとしてこれが今のトレンドなのかもしれません。
【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】
『死霊館 エンフィールド事件』
2016 | 監督:ジェームズ・ワン
物語として『死霊館のシスター 呪いの秘密』をより理解するためには、もちろん前作『死霊館のシスター』が最適です。
ただし、ヴァラクの恐ろしさを体感するのであれば、初登場した『死霊館 エンフィールド事件』をオススメします。
こちらはユニバースのナンバリングタイトル2作目に当たる作品で、史上最長期間続いたポルターガイスト現象として実在する事件を映画化しています。
あまり詳しく書くと、見る楽しみを奪ってしまうので伏せておきますが、ヴァラクの登場シーンは近年屈指のホラー表現だと思いますし、その存在を知った時は身が震えるほど、大きな悪を感じました。
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