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【六本木ホラーショーケース -ARTICLE-】#006 『ヴァチカンのエクソシスト』にみるケレン味のバランス

【六本木ホラーショーケース】

六本木 蔦屋書店映像フロアがお贈りするホラー映画紹介プログラム。
ホラー映画を広義でとらえ、劇場公開作品を中心にご紹介し、そこから広がる映画人のコネクションや文脈を紐解いていきます。


今回ご紹介するのは、『ヴァチカンのエクソシスト』です。

『ヴァチカンのエクソシスト』

2023 | 監督:ジュリアス・エイバリー

オフィシャルサイト

“エクソシスト”という職業はご存知でしょうか?
日本語では祓魔師とも訳されますが、キリスト教のカトリック教会で実在する役職です。
その名の通り、エクソシスムを用いて悪魔や悪霊を祓うことを仕事とします。
ウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』によってイメージが広まり、その後も様々な形で映画に取り上げられています。

ホラー映画のサブジャンルとしてその地位を確立したエクソシストものですが、今作『ヴァチカンのエクソシスト』の特徴として挙げるのは、実在したエクソシストの話を基にしているという点です。
主人公のガブリエーレ・アモルト神父はヴァチカン市国のローマ教皇に直々に仕えるチーフ・エクソシストとして実際に数々の事案と直面してきました。
原題である“The Pope's Exorcist”も教皇のエクソシストという意味です。
彼の回顧録「エクソシストは語る」を基にしながら、実録物のようなリアリティのあるアプローチではなく、しっかりとケレン味あふれるエクソシストバトルを見せるという意外性があります。

派手な見せ場だけでなく、人物造形も魅力の一つです。
アモルト神父を演じるラッセル・クロウは、腕力でも悪魔をねじ伏せられそうな恰幅の良さを持ちながら思慮深く、時にユーモアで場を乗り切ります。
恐らくアモルト神父御本人の人柄でもあったであろう要素がしっかりと役柄にも反映されており、その辺りに実話としての真実味を感じます。
このバランス感覚は、『オーヴァーロード』で戦争モノとゾンビモノを見事に組み合わせたジュリアス・エイバリー監督の手腕を見ることができます。

実在の人物の悪魔祓い体験を映画にした作品といえば、近年ではジェームズ・ワンの『死霊館』が最も有名ではないでしょうか?
ゴーストハンターとしてメディアに出演もしていたウォーレン夫妻の体験談を基にした『死霊館』シリーズ。
ユニバースが広がるにつれ『アナベル』や『死霊館のシスター』などスピンオフシリーズでは実録とはかけ離れた方向性を示しています。
その辺りの棲み分けは、ホラー界の企画屋ジェームズ・ワンの才覚が光る部分ですが、『ヴァチカンのエクソシスト』はそれに匹敵するシリーズとなる予感を大いに感じさせてくれます。

【六本木 蔦屋書店のオススメ:鑑賞前後に観たい作品】

『コンスタンティン』
2005 | 監督:フランシス・ローレンス

『ヴァチカンのエクソシスト』の大きなチャームはアモルト神父のキャラクターにあります。
となると、対抗できる悪魔祓い師はジョン・コンスタンティンではないでしょうか。
彼は神父ではなく、流しで悪魔祓いをやっている変わった人物です。
性格も一筋縄ではいかず、己が天国に行くために人々を助け、タバコによる余命宣告を受けてもやめない頑なさがあります。
キアヌ・リーブスによって気怠く演じられたコンスタンティンですが、冒頭の悪魔祓いシーンでは手際の良いところを見せてくれます。
仕事における信頼度もアモルト神父を思わせます。
DCコミックスの「ヘルブレイザー」が原作で、続編映画の制作の話も聞こえてきます。

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