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選抜試験におけるミス防止(その2)

今回は、「選抜試験におけるミス防止」の(その2)として、特に、選抜試験における出題ミスの内容を分類して,どのようなミスの出現頻度が高いのか分析していくことにします。(Mr.モグ)

選抜試験における「出題関連ミス」防止策

「試験」には、大学入試、高校入試、中学入試等といったいわゆる「入学試験」、企業や公務員などの「採用試験」、司法試験、技術士試験などの「資格試験」等いろいろなものがあります。
担当者は、問題の作成及び検討を行い、印刷・校正の読み合せを含めたチェックも行っており、これら一連のチェックの手を抜くことは「出題関連ミス」※につながりかねません。

※前回の分析(「ワンランク上の人材選抜 選抜試験におけるミス防止(その1)」)により、選抜試験における試験ミスの内容としては,次の3つに分類することができるとした上で、「出題関連ミス」をさらに分析していきます。
「出題関連ミス」:出題された試験問題そのものにミスがある事例であり、出題者が意図した正答を導き出せないものや、単純な誤字・脱字、出題範囲の逸脱などが含まれている。(これらに該当する件数は、346件(約68%))
「試験実施・合格発表手続きミス」:入学試験を実施時における試験監督者や関係職員等による人為的な手続きミスを含む事例であり、問題用紙の配布ミスや、回答用紙の回収ミスなどが含まれている。(これらに該当する件数は43件(約8%))。
「合否判定ミス」:出題ミス、採点ミス、事務手続きのミスなどが原因となって、合否判定に影響を与える事例であり、追加合格者を出す場合や複数年に渡って合否判定を誤った場合など、社会的影響の程度が大きい事例。(これらに該当する件数は118件(約23%))

この「出題関連ミス」が生じると、多肢選択式試験では、正答がない、もしくは、正答の変更・追加が必要となる場合が生じますし、また、記述式試験では、問題の一部が成立しなかったり、受験者の解釈が分かれ、当初予定していた採点方法や配点などを変更せざるを得ない状況が生じます。
このようなことが仮に起きると、合格者の決定や、「試験問題の品質」にも大きな影響を与えかねません。

1999年(平成11年度)から2018年(平成30年度)までの過去20年の試験問題を参考に、正誤表を含めた出題ミスの事案を調べ、そのパターンを分類してみました。

出題ミスの内容別分類

各種試験の「出題ミス」を分類し、それを類型化すると、次のような8つに分類※することができ、その出現率の高い順は、次のようになりました。

※分類の数が多くなりすぎると、実際にチェック項目として利用する際、効率的でないため、大きく8項目に分類することにした。

① 専門・学術用語や公式等の引用ミス
法令用語、学術用語、人名、組織名や公式の入力時のミスや、引用時のミスが含まれます。

例 最大実体差方式(×)→最大実体公差方式(○)、 
       石川木 (×)→ 石川啄木 (○)

② 漢字・スペリング等の誤字・脱字のミス
ワープロ変換によるミスや、校正段階におけるチェック漏れなどが含まれます。

例 堀り(×)→掘り(○)、 貴重(×)→ 基調(○)

③ 問題文の主語・述語の曖昧さ、用語の揺れによるミス
問題文中に使われている用語と、同じ意味の用語が、複数混在していたり、主語述語が、あいまいになっているものなどが含まれます。

例 問題文の主語述語が曖昧なもの
「固形物AとBのアルカリ溶液Cがありますが、・・・」
(「固形物A」と「Bのアルカリ溶液C」なのか、「固形物A」「固形物B」の両方からなる「アルカリ溶液C」なのか、はっきりしない)
例 問題文の中の用語の揺れ。
「一般に地方公共団体は、・・・・。この地方自治体は・・・・。」
「この国の雨期は・・・ですが、B国においては雨季の降雨量は少なく・・・・」
「問題文には「につながれた物体」と書かれているが、選択肢等で「物体につながれたロープの長さ」としている。(同じ意味の用語が混在している)

④ 基本的な数式等の扱いに関するミス
分数表記や桁数表記などの数式の校正ミスなどが含まれます。

数式の扱いミス

数式のミス2

⑤ 図・表に関するミス
図や表のタイトルが問題文の表記と異なっていたり、グラフの縦軸と横軸の単位の取違えや、目盛りの数値間違いなどが含まれます。

⑥ 問題形式上のミス
設問の選択肢の番号の振り間違えや、選択肢の重複などが含まれます。

例 選択肢がア、イ、ウの三つなのに、設問が「ア~に当てはまるものはどれか。」となっている等。

⑦ 正答や誤答の根拠(正確さ)不足によるミス
当初「正答」としていたにもかかわらす、その後、別の資料等から、必ずしも正答ではないことが判明した場合などが含まれます。

例 ある病原体について、出典によって記述が異なることが後日、分かったもの等。

⑧ 問題の条件設定や表現が不的確なことから生じるミス
 問題の設定条件が不足しているものなどが含まれます。

例 床の上にある物体(×)→滑らかな床の上にある物体(○)

 以上の分類による結果は表1のようになりました。

ミスの内容と出現割合

この分析結果から明らかなように、これらの出題ミスは、「主に確認・校正ミスに関するもの」(①~⑥)「主に内容に関するもの」(⑦、⑧)に大きく二つに分類できます。

前者は、比較的単純なヒューマンエラーに属するものが多く、全体の86.4%とその大部分を占めていますが、
後者は、作題者や、その分野の専門家でないと、なかなか見つけることができないという特徴を持っているものが多く、全体の13.5%とその割合は比較的小さいことがわかります。

さらに、「主に確認・校正ミスに関するもの」(①~⑥)のうち、①専門・学術用語や公式等の引用ミス②漢字・スペリング等の誤字・脱字のミスで、全体の約6割を占めていました。

このように、単に「出題ミス」といっても,その分類をすると、8つに大きく分類することが出来ることが分かりました。
では、この「出題ミス」を無くすために、具体的にどのような対策(もしくは対応)をすれば良いのかについて,次回は考えていきたいと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。(Mr.モグ)

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