米シリコンバレー銀行の破綻 ~ VCとPEの資金調達に特化して拡大してきたアメリカ第16位の銀行が、48時間で破綻したことがもたらすインパクトを慎重に精査する必要がある

米シリコンバレー銀行の破綻 ~ VCとPEの資金調達に特化して拡大してきたアメリカ第16位の銀行が、48時間で破綻したことがもたらすインパクトを慎重に精査する必要がある

SVB銀行のCEOは、破綻の直前に自社株を売却し$3.58mnを取得した。

そもそもシンリコンバレー銀行(SVB) とはどんな銀行だったのだろうか?
CA州シリコンバレー、サンタクララに本部がある商業銀行で、全米16位の銀行だ。この銀行の破綻は、先週3月10日に確定したが、銀行の最期は48時間の市場の動きで決まった。

SVBの主要顧客は、プレミアムワインの経営者たちを含む富裕層の個人客とVC(ベンチャーキャピタル)とPE(プライベートエクイティ)の起業家達であるが、法人口座とハイテク富裕層をターゲットにして近年急拡大してきた銀行である。

設立は1983年に遡るが、ドットバブルの成功体験が、現在に続く伝統の成長戦略だ。クリプトビジネスを含むベンチャーに資金調達を積極的に提供する銀行だ。自らも2019年にIPOを成功させた。

SVBの株価は、2021年の$200ドル越えのピークから、NASDAQのハイテク株のコレクションの中で下落してきた。最後の株価は$2.40である。SVBは、5.25% Preferred Pertetualも発行している、そのシンボルが、SIVBPだ。

・これは私の推量だが、48時間で破綻した理由は、以下の通りだ。
1)Bank runと言われる、銀行を破綻に導く「預金の流出」が発生した。
当然預金者がこぞって預金を急激に引き出す理由は、市場に流れる「うわさ」を含む情報である。悪いニュースが出たのである。

2)アメリカから配信される、SVB破綻関連情報は、多岐にわたり、詳細な情報がメディアにあふれる。だからアメリカのマーケットは、透明性が世界一高い。マーケットの liquidity 流動性が世界一なのである。透明性の低いマーケットでこのような事件が起こると、政府は時間稼ぎしか能がないので、マーケットが閉鎖されるのが落ちである。

3)ALMの失敗である ~ 私が米系投資銀行で、80年代に学んだ、Asset Liability Management の失敗が、48時間の破綻をもたらしたようだ。FEDの利上げでALMをアクティブに運用することが遅れ失敗したことが市場に流れたのである。トレジャリーの固定債から発生する、unrealized loss(含み損)を市場は懸念したのだ。FEDの利上げPivotが始まったのは1年前の2022年3月17日であるから、SVBのALM対応が手遅れだということは明白だ。さらにそれに拍車をかけるように、問題はないとCEOが発言している状況を、ショートセラーが動いたのだ。結果、48時間内に株価が大暴落し、SVB銀行は追いつめられてしまった。3月10日CA州のDFPIが、SVB銀行をFDIC米連邦預金保険公社の管轄下に移管するとして、破綻を宣告した。

・2022年末、SVB銀行の含み損は、$15bnだった。
・2022年末の銀行資産の56%がVCとPE企業に対するローンだった。

FDICの銀行が破綻した場合の保証は、一人口座当たり$250Kであり、預金の85%がFDICの保証でカバーされないというから、この銀行の破綻処理の行方が一体どうなるか?目が離せない。

いすれにしても、大きな損失が発生するのは間違いないから、明日から始まるマーケットがどう動くか、冷静に見守りたい。



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