帰り道

髪の毛に染み付いた煙草の匂いを感じながら、寝静まった街を自転車で駆け抜ける。
今日はいつもよりも遠回りをしたい日だった。
いつもなら苛つく赤信号も少し粋に感じる。
大切な人たちと話した内容を何度も咀嚼しながらじわじわと目的地に迫る。

ふと桜の香りが鼻を優しく刺激した。
春の香り、季節を感じられる香り。
気づけば先ほど我慢していた涙が頬を伝っていた。

約1年前には心を病んで一人静かに流した涙。
けれど今日は人の温かさから流れた涙。
この期間で私には大切な人たちができたのだ。
幸せを全身で感じながらまた自転車をこぐ。

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