コロナの哲学 1

デロゴが目を覚ますと、そこは「同じ」教室の景色であった。

「目を覚ます」と、目の前には異なる世界が広がっていた。「転生物語」。けど、転生しないこともあってもいいよね?

コロナだって、俺らは、最初こそ世界の終わり感があったけど、日にちが経っていくにつれ、「普通」になる。なんだろうか。どんな「不条理」でさえ、「普通」になる。人間は、そこに、不安や恐怖を覚えなくなってしまう。なぜか。ディストピア小説は数多くあるが、それに書かれている「不条理」は「普通」となってしまう。享楽として読まれる。

と、ドロウは意識を失いかけているときに、そう考えた。

意識を失い、転生し、旅が始まる、そんなカッコいいものなんてこの世界に存在しない。

ドロウは睡魔に襲われただけであった。教室に入ってきたオッサンが口にしたのは、挨拶の「こんにちは。」であった。

こんな感じで、恐怖のコロナ後の世界——その恐怖が「普通」となりすぎて、それが忘れられた世界——を生きるドロウの何気ない生活が始まる。結局、どんな恐怖を経験したって、その嘗ての恐怖を人は忘れてしまう。ドロウもその1人であった。だが、一つだけ、絶対に忘れてはいけないものがある。絶対に。

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