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透き通ったもの。

「透明」が最近のマイブーム。きっかけは、本を読んでいて見つけた「透明な客観」という表現で、それ以来自分のまわりにある透明を探している。自分からは出てこない言い回しを見つけると、途端にその言葉が気になって私のセンサーに次々と引っかかってくる。「あなたの気配だけを心に透明に描いた」は、大好きなYENTOWNBANDで見つけた。

朝の空気もそのひとつ。

朝の透き通った時間。ラジオ体操の歌に「うんうん」と頷きたくなるような瞬間。透明は思いがけない幸福。自転車を漕いでほてった頬も、始まりの空気がきりっと冷やしてくれて、悩ましい吹き出物も簡単に治ってくれそうな気がする。

そういえば、今までも朝の雰囲気を気持ちよく思っては「朝に動こう!」と週末の夜に決意するものの、結局眠気と怠惰に負けてしまうだらしない私だった。そんな時間をみすみす逃してしまうなんて、私ってやつは。いや、でもふと思い立つからこそ、その良さが際立つのだと信じている。

早起きして活動できた日には喫茶店のモーニングで過ごす。朝の喧騒から逃れて心の余裕ができると、人の行き交いや人間模様を眺めるのが楽しくなってくる。透明に導かれると、バターたっぷりのシンプルなトーストも優雅な朝食にかわるのだ。

そんな朝の喫茶店で私はひとつ発見をしてしまった。世の中の恋人たちは互いにキスのタイミングを理解しているということ。私はそんな男女の瞬間を目の当たりにしてしまい、心が跳びはねた。この発見は、すかさず好きな人の条件に追加しました。「キスのタイミングがわかる人」

恋人も夫婦も、始まりはきっと、このタイミングがわかってしまった瞬間なんだと思う。いつも何気なく目にする男女の2人組も、朝の空気を纏うと映画のふたりみたいでとてもドラマチック。ふたりが恥ずかしそうに笑う仕草をみて、透明な恋の手ほどきを受けた気分になった。

2016年10月31日

「サウダーヂな夜」という変わったカフェバーで創刊された「週刊私自身」がいつの間にか私の代名詞。岡山でひっそりといつも自分のことばかり書いてます。