施錠奨励。
別にいいよ?別に構わへんけどね、だけどねきりちゃん、僕がいなくなってもいいの?困るの自分やで。
いっつも鍵かけずに停めてるけどさ。こないだなんて、ももちゃりと間違えられて危機一髪やったやん。しかも僕、防犯登録和歌山のままやからね。誰かにひょいって乗っていかれたら、きりちゃんとはもう今生の別れや。
君とは10年近く一緒にいてるけど、ほんっまに雑なこと。雑っていうか、野暮。要は田舎もんやねん。ここは大都会岡山やで、イノシシとタヌキしか出てこーへん田舎と一緒や思ったらあかんわ。大体、田舎におった時は車ばっかりで、僕のことコンバインと一緒に納屋に押し込めとったやろ。
きりちゃんと出会った頃は、お金ないけど時間はあったから朝から晩まで色々出かけたなあ。ジーパンでお尻ヒリヒリなって孝子峠越えた日が懐かしいわ。しばらく距離置いてたけど、ここ一年は昔みたいに毎日一緒に過ごすようになって、僕は嬉しいねん。せやのにきりちゃんときたら、そんな矢先に大きい荷物ぶら下げて無理にチェンジを換えようとして、新鶴の橋のふもとで大クラッシュ。血だらけのきりちゃんに、さすがの僕も引いた。なんなら僕も少しハンドル曲がったし。もう、どうして君は。
周りのみんなに気をつけろ気をつけろって言われてるのにきりちゃんは一向に鍵をかける気はない。後輩の男の子は、アパートの駐輪場にちゃんと停めてたのに盗まれたっていうやんか。そろそろ潮時。最近は誰かにライト盗まれたし。だからもう、僕はきりちゃんの真心を感じんことには、これからも一緒にやっていける気がせーへん。
ルイガノ太郎なんてクソさっぶい名前つけられて、それでも僕きりちゃんのそばでいつもニコニコしてきたやろ。頼もしい自転車の僕を演じてきたやろ。それなのに、この扱い。あーあ、寂しいわァ。
だから僕、強行手段に出ることにした。こうやってみんなの前で僕には鍵がかかってないことバラすことにしてん。乗り捨て自由や。ほら、SNSってすぐ拡散するやん?もう明日から僕の周りは可愛い女の子でいっぱいや。悪いな、きりちゃん。・・・え?悲しいって?きりちゃん、嘘やん!ごめんて!もう、やっぱりきりちゃんは可愛いなあ。
2017年10月09日
「サウダーヂな夜」という変わったカフェバーで創刊された「週刊私自身」がいつの間にか私の代名詞。岡山でひっそりといつも自分のことばかり書いてます。