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ダンナの自転車のハンドルがタオルの上に置かれるオブジェになった訳

①迷子の仔猫ちゃんじゃなくて脳味噌キャパオーバーのワタシ


2ヶ月ほど前の話なんですが。

休日の朝起きたらスマホに地元警察から何度も電話が入っていた話、聞く?


いやぁ、珍しくよく寝たなぁって朝だったんです。

10時頃かな。


歳を重ねると長時間寝る事が難しくなる。

若い頃なんて起きたら昼だったなんて事しょっちゅうあったのに。

寝るって元気な証拠なんですってね。


そんなわけで、その日のワタシは元気だったんだな。

起きてスマホ見たら地元の警察署からの着信が何件も。

ちょっと仕事の関係で以前、警察署の電話番号を登録してたんですよね。

だからすぐどこからかわかった。


普通、警察から電話来たら


え。


ってなるよね。


なんかあった?


ってなる。


ワタシ、捕まるん?


とはなりません。

身に覚えのない人は。


まずムスコになんぞ?と。

背中を冷や汗が。

でもそれなら地元の警察っておかしいよね、ここには住んでないから。


じゃあダンナになんぞ?

交通事故?


えええええ!!


焦ってダンナに電話する。

出ない。


え。え。病院に運ばれてて出ない?

手術中とか?

もし加害者で怪我人いたら?

車の保険証どこ?

家のローンどうなる?


脳内のキャパオーバーでフリーズ。


そこにダンナから折り返しの電話。


どした〜ん?


呑気そうな声の後ろでパコーンパコーンと呑気そうな音がする。


打ちっぱなし行っとるんか〜い!!


生きてるん?


どーゆー質問?


ダンナに言うと警察に折り返してみれば?と。

うーん、なんか警察に「ワタシに用事ありますん?」って電話するの嫌やなあ。


ま、なんか用事あるならまたかかってくるやろ。

待ってみるわ。


と言って電話を切った瞬間、ピンポーンと鳴った。

インターホンの画面を見ればお巡りさん。


犬のお巡りさんじゃないよ?

ホンモノのお巡りさん。


えー!ワタシ捕まるん?(2回目


危うしワタシ!

どうなるワタシ!


②無茶言うたらあかんでと思ったけどこれも市民の義務なのかと悟った


「◯◯さんはこちらのかたですか」

◯◯はダンナの名前ね。


「はい、そうです」

「自転車を盗まれたという事はありませんか」

「えー、もう4〜5年、主人の自転車ないと思うんですけど。なんですか?」

「×駅の駐輪場にあった◯◯さんの自転車からハンドルを盗んだ窃盗犯を逮捕しておりまして。別件で逮捕して調べていたらわかったのですが」


いや、×駅って行った事もない駅だし、ダンナは多分そんな駅がある事も知らない。

そもそもダンナの自転車は数年前にマンションの一括廃棄の日に廃棄してもらったからねぇ。


「ムスコさんが勝手に乗り出して駅に投棄したというようなことは?」


ちょっと!何をうちの子を不良少年にしちゃってくれちゃってるわけ?


「もう巣立って6年になりますけど!」

プチっとキレるワタシ。


で、ここからがびっくり。

「一応、証拠品となりますので引き取っていただくことになります」


えーーー!ハンドルを?ハンドルだけ?なんのため?

そのハンドル、ワタシどうすればいいの?

多分ハンドル廃棄するのに粗大ゴミ代500円かかるで。


「気の毒ですが犯罪の証拠物ですので、こちらで廃棄等する事ができません。」

丁度ワタシ今クールのドラマ「教場」にハマってて。


ねぇねぇ、風間教官いる?

お巡りさん、風間教官に教えてもらった?

あのキムタクってかっこいいよねぇ。

世間話にのってくれそうなお巡りさんじゃなかったからこらえた。

「そして自転車本体を×駅まで取りに行って撤収してください」


えーーー!

アンタ無茶言うたはりまっせ。

わかってる?

ハンドルのない自転車を行った事もない駅から持って帰って来いって言うてるんやで。

どうやって?

一輪車ならぬ二輪車~
サーカスもびっくり。

てかワタシら被害者だよね。

ていうか廃棄した自転車だからもはやワシらの物ではないわけだから被害者でもない。

無関係な人です、はい。


「×駅、行き方ご存知ですか?」

というや否やお巡りさんはスマホを取り出して、Googleマップを開いて説明し始めてた。


めちゃくちゃ手慣れてるわよね、びっくりするくらい。

警察の捜査や見回りなんかでも、もの凄く活用されてるのね、Googleマップ。

素晴らしいことやわ。


とか感心してる場合ではない。


「この交差点を右折して真っ直ぐ行きますと、この角に最近できた白い壁のお寿司屋さんがあります」

と言って画面をぐ〜と伸ばすと、そのお寿司屋さんの写真が出て来た。

「あ〜ら、オシャレなお寿司屋さんなんですねー。行ってみようかな」

と呟くワタシをスルーして駅への道を説明し終えるお巡りさん。


いやいや、行かねーから。
×駅も寿司屋も行かねーから。

身体全体から「行きません」オーラを放つワシにちょっと引いたのか

「それでは確認しに行くだけでもお願いします」


いやもう確認しなくても防犯登録がうちのだって示してるんだったらうちのです。

てか、うちのだったものです。過去形な!


「ハンドルは署の方に取りに来ていただくことになります。いつがご都合よろしいですか。本日何時頃?」

は?ワタシだっていつも暇なわけじゃねーから。

今日はこの後、予定あるから。


「来週の水曜日の午前中なら」

「その日で大丈夫か上司に確認しますので一度家の中に入ってお待ちください」


ねえねえ、その上司って風間教官?キムタク?

絶対違うな。


てか、廊下で携帯で上司に電話してるんだけど、声がでかいんだわ。

近所で家の前でお巡りさんが「窃盗品が」とか「証拠品の」とか言ってたら絶対耳すませるよね?

あそこのムスコさん、なんかやりはったんやわ…とか思うよね。

なんなら、ダンナさんとちゃう?とか思うよね。

いや、奥さんいつもフラフラしてはるから…奥さんちゃう?


やめてください、勝手な妄想は。


「ちょっと上司の確認がとれなかったので、またお電話します。」


じゃあ廊下の電話、いらんかったんちゃう〜ん!


後日、電話があって取りに来てください、と。

どうしても行かなあかんの?


まあでも、このかたたちもお仕事でやってらっしゃる事だから。

決まり事なんだろうから仕方ないよね…


嫌々ながら警察署に向かうワタシでした。

ちゃんとハンドルの付いた自転車でな!



③ひと様に迷惑をかけるマニアにはなったらアカン


行きましたよ、自転車で10分ほどの警察署まで。

受付で言うと入口そばの応接セットの所で待つように言われて。

ほどなくして来られたお巡りさんは前回の人とは違う若い人。

ムスコより若い。

多分、お巡りさん2〜3年目って感じかしら。


ふふふ、かわいいわ(おい


「では詳しくお話を聞かせてください」

んー、ワタシの自転車じゃないんだけどなぁ。

「ご主人はなぜその自転車を買われたのですか」


はぁぁぁ?


そこから?


「通勤に使うためです」

「何年前?どちらで?」

昨日の事も覚えてられないのにそんな8年くらい前の事なんて絶対覚えてへんやん。

「おいくらで買われましたか?」


いや、マジで知らん。

勘弁して。


「なぜその自転車を廃棄したのですか?」

「もう乗らんようになったからとちゃいますか」


ワタシも段々めんどくさくなってきて大阪弁丸出しのおばちゃん言葉に。


「なぜ乗らなくなったのですか」


ねえ、これって取り調べ?

カツ丼食べさせてもらえる?


「なんでですやろねぇ、ああせやせや、転勤になったからですわ」

「自転車のいらない家のご近所に転勤になられたということですか」


ご近所?

あの頃のダンナの勤務先、ご近所やっけ?

ご近所やったことなんかあったっけ?


もうわけわからんようになる。


ガバっと机に突っ伏したワタシ。


「ワタシがやりましたー!ごめんなさーい」


なんでやねん。

なにを自白しとるねん。


うーむ…と考えていて、あ!そうやそうや!と思い出す。

警察署の入口そばの椅子で突然パンパンパンと手を叩いて思い出した事を喜ぶワシ。


おばちゃんって手叩くの好きやんね。

いやぁ、わかったわー、パンパンパンとか、可笑しいわーパンパンパンとか。


「思い出しましたわーパンパンパン!
車通勤になったからですー。
ファイナルアンサー!パンパンパン」


いや、ファイナルアンサーは言うてへんよ。


でさ、若いお巡りさんはこれを全部書いてるわけよ。

それって調書?

細かいお仕事もせなあかんのねぇ、ご苦労様です。


てかちょっと待って。


前回のお巡りさんとのやり取りを思い出した。

上司が空いている時間に来てくれっていう話だったよね。

この若いお巡りさんはどう考えても前回のお巡りさんの上司ではないよね。


上司どこおぉぉ?!

隠れてる?


あ、もしかしてマジックミラーごしにワタシを見ているのか!

って警察署の玄関にマジックミラーあったら凄いわ。


いや、ワタシ、犯罪者と違うから!


「では、このままお引き取りいただいて大丈夫か上司に確認してきますのでしばらくお待ちください。」


上司、顔見せて!


どれだけ高級自転車乗ってたん?って思ってるでしょ?思ってるよね。


これやで、ハンドル。

きちゃないわー。

ほんまに迷惑やわー。


「なんでこんなん欲しかったんですかねぇ?」


と聞いてみた。

「事情聴取中ですので詳しい事は言えないのですが…マニアのようです」


へー。

わからんわーと思うけど。

ワタシだってちょっと変わったマニアなわけだから。

人にはわからん何かがあるのだろう。


あるのだろうけど……迷惑やわ。


「引き取り書類に印鑑お願いします」

印鑑持って来いなんてひと言も言わんかったけどな。

絶対いるやろうと気を利かせて持って来たけどな。


と、押したら「シャチハタはダメなんです」

もう、そういうこと全部言うとけや。

ほんっとに何もかもめんどくさくなってきたワタシ。


「聞いてませんし」

「では母印をお願いします」


とうとう警察に指紋を取られてしまった。

もう悪いことはできません。

万引きとか。


した事ないし。

これからもしないし!


自転車のハンドルを自転車の前カゴに乗せて帰って来ましたやん。


そしたらダンナが言いましたわ。


そのハンドルを持って自転車に乗ってるふりでエアーチャリ風に帰ったらめちゃめちゃ面白かったのに。


なんでやねん!誰のハンドルのせいでこんな目に合ってると思ってるん!と怒りながら、いやそれ面白かったかも。

チリンチリンとかいわせたらもっと面白いよね、と考えている自分が嫌。


そんなわけで、今この汚いハンドルはダンナの部屋のオブジェとして飾られております。


結局、廃棄を請け負った業者がちゃんと廃棄していなかった、もしくはそこから盗まれたという感じだと思います。


いろいろウザかったけど、それなりに面白かったからまあええか、というのがワタシの感想。


そして、これ言うとく。

お巡りさん、町の安全のためにいつもありがとうございます。


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