修羅場。母と寛子さんの間で。

迎えた土曜日の朝。
私はとても憂鬱でした。

私の別れたいという意思を寛子さんが受け入れてくれていない。
一応、というか別居をしているものの寛子さんには家庭があります。
私と寛子さんの関係は不倫。

そんなことは関係ないと言われればそうかも知れませんし、
その関係に引き入れた私が言えたことではありませんが、
すんなり受け入れてくれるのではないかと思っていた。

どこか寛子さんも「遊び」なのではないかと。
でもそうでは無かった。

私も「遊び」のつもりはありませんでした。
ただ、本当に繋がりたかった相手。
絶対に叶わないと諦めていた恋。
母と関係を結んでしまった今となっては申し訳ないという思いで、
気持ちを伝える他はありません。


午前中に母から携帯にメッセージが入る。

「今、家を出ました。14時頃付きます。」

寛子さんのことを隠したまま、嘘をついたままで、
母と会わなければならないのか。
もしくは母に寛子さんのことを打ち明けるのか。

どちらにしても陰鬱な気持ちになる。
どうすべきか考えながら母を待っていた。


12時半頃。
部屋のチャイムが鳴りました。

あれ、随分早いなと思いながらドアを開ける。
立っていたのは寛子さんでした。

全身の毛が逆立つように私に焦燥感が走る。
一瞬呆気に取られている隙に、

「ちょっと、話がしたいんだけど。」

そう言うと寛子さんは半ば強引に部屋に上がってきました。


本当にまずい。どうすればいい!?
私は必死に頭を回転させトイレに行くふりをして母にメッセージを送りました。

「急にお客さんが来てしまったから悪いんだけど何処かで時間潰して。また連絡する。」

おそらく運転中であろう母。
頼むから着く前に見てくれと心から祈りながら。


そして、また私と寛子さんの不毛な話し合いが始まりました。


「別れてください。」

「別れたくない。」

「他に好きな人が出来たからこのまま付き合っていけないです。」

「好きな人って誰なの?どういう人?」

「言わなくてもいいことだし言いたくない。」

「納得できないから聞いてるの。私に悪いところがあるならハッキリ言って欲しい。」

「そういうことじゃなくて・・・」


いつもと同じようなループの会話が続きます。
喋りながらもこれでは埒が明かないことは分かっている。

もう適当な女性像を設定して説明し話を進めようかと考えていたその時。


ピンポーン!


部屋にチャイムの音が響き渡りました。


私は顔から一気に血の気が引くのを感じました。
一瞬頭が真っ白になります。

その思考の空白を置いて反動のように頭が回転を始める。

母なのか?
どうすればいい?どう説明すれば・・
寛子さんに母を紹介するとして母にはどう説明すれば?
職場の先輩?誤魔化しきれるか?

胃がギューっと締められるような急激なストレス。
私は動けずに固まっていました。


ピンポーン!


もう一度チャイムが響く。


私の様子を見て寛子さんは何か感じたのか怪訝な顔をしています。


「出たら?」


圧力のある言葉で最後通牒のように応対を促される。


「ああ、うん。」


私は考えることをやめて玄関へと歩き出しました。
ドアを開ける。

新聞や何かの勧誘かもしれない。
希望にすがる私の願いをあっけなく破るように、
そこには母が立っていました。

#エッセイ
#恋愛
#体験談
#熟女
#近親相姦

#修羅場
#浮気

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?