病と向き合う ~てんかん~

私は"てんかん"を患っている。
発症は突然だった。

大学3年の夏、当時部活動をしていた私は怪我がもうすぐ完治することに高揚していた。やっと体を動かせる。ようやく走れる。3花月に及んだリハビリからの開放が目前だったのだ。3年生で試合に出られないと、4年ではチャンスがないと分かっていたので、夏休みの期間に自分を追い込んで周りを抜いていこうと意気込んでいた。

ある日、いつも通り大学に行き講義を受けていた時、気がつくと救急車の中にいた。意識は朦朧としていて、記憶が曖昧になっていた。病院へ運ばれながらも意識はあるのだが、時間が経過するたびついさっきの記憶まで曖昧になっていた。
搬送先で告げられたのは、
「テンカンの可能性があります。紹介状を書きますので大きな病院で検査をお願いします。」
点滴だけ打たれ、一時間ほどで解放されたが体はどっと疲れていた。
その日はオフだったので、大学職員とタクシーに乗り、大学に戻った。
少し雨が降りそうな、薄暗い空だったのを覚えている。
図書館に入り、勉強をしようとしたが頭も回らなければ体も重い。
 結局次の日も体は重く、部活動に一報を入れてその日はずっと家に引きこもっていた。
 いろんなことを調べた。
どんな病気なのか、生死に関わるのか、遺伝なのか、外傷が原因なのか、発症している人の数、治るのか、薬は?

部活動のトレーナーから連絡があり、大きな病院を紹介された。

 夏休みに入り、暑さが体を衣のように包む中、病院へ向かった。
そこで診察してもらった結果、やはりテンカンの疑いがあると診断された。検査を2日ほど行うことになった。合宿への参加は認められなかった。

検査結果待ちの間、何もすることがなかった。
チームが朝から晩まで練習している中、自分は部屋でぼーっとしていた。
ヒルナンデスを見たり、午後のロードショウを見たり。ひたすらに現実逃避をしていた。
 部活のことなど考えられなかった。一度はアプリで練習ビデオを見たが、
イライラと悲しさ、虚しさいろんな感情が溢れそうになり、すぐにアプリを閉じた。

1週間後、検査結果が出たので病院にいった。
診断結果はやはり癲癇だった。
医師から
「通常、1回目の発作の際には薬は処方しない。部活で選手をつづけるためには、薬を飲む必要がある。ただ一度飲み始めると、辞めた時にリスクが倍になる。」
「もし2回目の発作が起きたら、競技は続けられない。」
と告げられた。

すぐに決断ができなかった。トレーナーと話し合う時間をもらった。

 ひたすら現実逃避をしていた時に、どうやっても揺るがない現実を突き付けられた気がした。
それからはいろいろなことを考えた。
 応援してくれる人。これまでの辛い練習。自分が成し遂げたいこと。大学でやりたいこと。アメフトのこと。これからの将来のこと。

人と会話する気力さえなかった中で、チームトレーナーに薬を飲まないで、スタッフとなり、チームのサポートに回ることも考えていると伝えた。
するとトレーナーは
「まだそんなこと言ってるの!?薬を飲まなければチームにはいさせられない。私の経験上、一回発作が起きた人は癲癇なんだよ!」
一瞬驚き、そして血が頭に登っていったが、実に素早く、音を立てることもなくその感情が頭から爪先まで落ちていくのが触覚的に分かった。

その頃にはずべての感情を無くていた。
虚しさも、悲しさも、憎しみも
一度感情が膨らむと心がそれに支配されてしまいそうで怖かったから、感情が動くことを許さなかった。
そして、心情を察知されないように作り笑顔で練習の手伝いをしていた。

1ヶ月半以上、自分で考えて考えて考え抜いて、
「残りの一年半よりも将来を取る」
という決断をして、退部した。




今私は、癲癇の症状が再び現れ他ため薬を毎日服用している。
薬を飲むことには慣れてきたが、あの時の記憶が蘇ってくる。

あの時、あの決断が正解だったのか今でも自信がない。
2年たった今、私は内定先を蹴り、就活をしている。
自己分析の一環で今でもあの時のことを思い出す。
今でも部活動の夢を見る。
仲間とグラウンドでアメフトをしている夢を。
大学の思い出話もほとんどがアメフトのことしかない。

結局、薬を服用し、アメフトをしたい気持ちはいまだに心にあり続ける。
でも、あの時あの決断以外は出来なかったとも思う。

全てはタイミング。
ここに書くとキリがない上、他責への逃げ道を作ってしまうようなので書かないが、上記以外にも結論こうなる要因はいくつかあった。
全てはタイミングなんだ。
ただ、もっと周りを頼ればよかったと強く思う。
これは自分の気持ちの問題なんだと、自己完結せずに、先輩や同期に意見を聞きながら気持ちを整理していけばよかったと。。


今でもこの病気は受け入れられていない。
なんなら治るんじゃないかとすら思っている。
だから、大きな病院に定期検診に行くたび嫌な気持ちになる。
でもそれじゃダメだと思う自分もいる。

全てはタイミング。
自分がこの病気を受け入れられるようになるのも
この病気が治るのも
いつかタイミングがくると思っている。

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