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【β版】千葉篤胤の転生記_01

千葉篤胤は千葉で生まれ、千葉で育ち、千葉の大学に通っている、よくいる大学生だ。篤胤は「あつたね」と読む。

ついさっきに、なんか不思議な夢をみた。


ただ広っぽい一面原っぱの中、馬と人がたくさんいた。

ここはどこだろう?マザー牧場?こんな馬いたか?

人もみんな着物きて刀も差してる、なにかのイベント?撮影現場?

自分も馬にひらりと乗ったはいいものの、ぐらっと落ちてグワンと頭を打ってふらふらした。

耳元で大声で語り掛けてくる

「モロツネ!モロツネ!!」

僕は「あつたね」なんだけど。モロツネって誰?

ふらふらするならなんとか眼を開くと、声をかけてるのは僕のじいちゃんだった。じいちゃんも着物着てるよ。

あれ、でもじいちゃんは去年ぽっくり死んだんだけど。

ああ夢だよね、じゃあしょうがないか。

こんな夢だった。


よくある大学生とは思っているが、やはり千葉で育った「千葉」という名前には少し特別なものがあるらしい。

どうも1180年ころの源平合戦ちょい前に千葉の街を開いた千葉氏とは関係あるらしく、家には「妙見様」という仏様が祭ってある。

これは千葉氏が古くから信仰している仏様らしい。同じ市内にある妙見様が祭ってある千葉神社はうちともゆかりあるそうだ。なんで神社に仏様?とは思うが、日本にはこういうケースはいくつかあるそうだ。

まあ、家系図みたいのはないから千葉氏っていってもうちは傍流の傍流で本当に千葉氏ゆかりかも実際はわからないけど。

名前は珍しいかもしれない。なんたって「篤胤」だから。うちは代々「胤」は付ける習わしのようだ。父さんも死んだじいちゃんも胤は名前についていた。

よく学校では、特に先生には「え!もしかして千葉氏の末裔?」とかの類は聞かれた。あだなも殿とかブシとかちょいちょいベタだけどついた。

でも特に親からも由緒正しき的な話は聞いたことないから「かもね」くらいしか思ってない。やっぱりごく普通な人間だと思っている。

へんな夢だったなぁと思いつつ、うとうとしていたら、また眠くなってきた。


また眠ってしまった。調子オカシイのかな。

と目を開けるもなんか見慣れないただ広い部屋に寝そべっていた。

この部屋は布団しかなく、自分の体は布団の中。これは普通。作りは床は畳で周りは襖の一般的な和室調。

でも広さが尋常でなく、ここどこですか?何畳あるの?余裕で20畳以上あるんですけど。

「すいませーん、だれかいませんか?」と声は出してみるも、何の反応もなく、部屋の外へ出ていいかもよく分からず、とはいえまた寝ようとも思えず、「あ!夢の続きじゃん」とポジティブにもなれず、しばし硬直状態。

体内時計的に5分程経ったか、部屋の足の方の襖がすーと開き、一人着物をきた人が入ってきた。あれ、じいちゃんだ。

やっぱり夢かと思いながら、じいちゃんが近づいてきて僕に語り掛けてきた。

「モロツネ、無事か。心配したぞ」と。

うーん、じいちゃんは夢では耄碌してしまったか、、、僕は「アツタネ」だよ。

「じいちゃん、僕はモロツネじゃないよ。篤胤だよ」

諭すように返してみたが、じいちゃんの返事はこうだった。

「じいちゃん?儂はお前の父ぞ。父のツネタネぞ。モロツネどうしたのじゃ?」

ツネタネ?うーん、聞いたことある。親父が先祖の話でいつも初めに出てきたな。確か「千葉はツネシゲ・ツネタネ親子がいまの千葉に移り住み、ツネタネと息子6人は源頼朝と共に挙兵して鎌倉の世を創り なんちゃらなんちゃら」と。ここら辺の時代は千葉として生まれたものの性なのか、たぶん同世代としては歴女さんを除けば詳しい方だろう。

じゃあ、目の前のじいちゃんはじいちゃんでなくて千葉氏の始祖ツネタネ様?じいちゃんそっくり。やっぱり千葉氏の末裔だったのか。我が家は。というより今いつよ。そもそも夢か現実も不明。

目の前のじいちゃんらしき人に恐る恐る訪ねてみた。

「すいません、いまはいつでしょうか」

「いつとは年か」

「そう、年です」

「治承3年じゃ」

「そうですか、治承3年ですか」

治承って年号だろうけどいつ?わからん。とりあえず現代じゃないから、もうちょっと自分がわかりそうな聞き方をして目星をつけないと。そうだ、千葉氏は源平合戦で源頼朝の挙兵と共に大きくなった(という事は親父から散々聞いた)から、頼朝の状態を聞いたらなんとなくわかりそうな、、

「源の頼朝さんっていますよね。いまどちらにいますでしょうか」

「頼朝様か、伊豆に配流されたままじゃが。それがどうしたのじゃ」

まだ挙兵前ってことかな。でも頼朝って十代半ばで伊豆に流されたのち、20年近く伊豆にいたはず。当てるにはざっくり過ぎる。なんかもう少しいつぐらいか自分でわかりそうな質問ないだろうか。そうか、これならわかりそう

「ちなみに頼朝様は御年いくつくらいになりましたでしょうか」

「モロツネ、先ほどより変な問いが続くの。くっきりとは知らぬが三十と半ばくらいではなかろうか」

これは自分ながらでもいい質問だったと思う。なんとなく察しつきそう。確か頼朝は北条政子という奥さんと一緒になったのは伊豆の頃で、まだ伊豆にいる中、子供が生まれたのは確か鎌倉入ってからと考えたら、三十代って伊豆にいる頃の終盤あたりでなかろうか。という事は源平合戦ってもう何年もない中、始まる頃合いなんじゃなかろうか。

と推測に次ぐ推測をしながら思考を巡らせつつも、また頭がクラクラしてきた。まだ夢か本当かもわからぬままだけど。途切れそうな意識の中、目の前のじいちゃんにしか見えない「ツネタネ」さんにこう伝えた。

「なんとなく...わかったことが...あります。多分、僕は...800年くらい...未来から...来たんだと...」

ここまで声には辛うじてでたけど、もう出ない。意識がまた遠のく。「ツネタネ」さんは「モロツネー!モロツネー」と僕に語り続けていた。




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