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アメリカに学ぶスポーツビジネスの形

こんにちは!
今日は先日読んだ「アメリカのスポーツビジネス現場に学ぶマーケティング戦略」という本の内容をまとめつつ、アメリカと日本のスポーツビジネスの違い、新体操が取り組むべきことについてお話ししていきたいと思います。

スポーツビジネス=権利ビジネス

この本では、「スポーツビジネスは権利ビジネスと言っても過言ではない」と言っています。

そもそもビジネスとは「価値交換の実践」であり、スポーツビジネスにおいて交換されるのは「権利という価値」な訳です。(プロスポーツの場合。指導などだと「技能」が価値になると思います。)

アメリカのプロスポーツにおけるリーグ・チームの主な収益は以下のようなものです。

・テレビ放映権
・チケット
・マーチャンダイジング(商品化)
・スポンサーシップ

上から順番に
「試合をテレビで放映する権利」
「会場で試合を観戦する権利」
「リーグやチームが持つ商標を使って商品を販売する権利」
「経営課題の解決を手助けしてもらう権利」
となります。

それぞれ企業やお客様は、得られる権利と引き換えにリーグやチームにお金を支払います。
規模が大き過ぎて全くピンときませんが、アメリカンフットボールリーグ「NFL」の1試合あたりの放映権料は10億円以上と言われており、その金額は年々上昇しています。(比較:読売ジャイアンツの年間放映権料が20億円)
テレビ放映権について掘り下げていくとそれだけでこの記事が終わってしまいそうなので、今回は割愛します…。

一方日本では…

アメリカのスポーツがこのような権利をしっかり売買できている大前提として、「全てのコンテンツを自分たちで管理している」ということがあります。

つまり、商品(権利)を自分たちで管理しているということなのですが、試合運営やチケット販売、広告方法や選手の肖像権、リーグやチームのロゴ・キャラクターの商標など、そのスポーツに関わる全てのものが含まれます。

「自分たちの商品を自分たちが管理するなんて当たり前じゃん」
と思った方。

では、日本の現状を見てみましょう。

日本一のプロスポーツ「NPB(プロ野球)」の放映権の場合…
・パ・リーグは統括組織が6球団をまとめて管理し、契約
・セ・リーグは各球団が契約

一見、”ちゃんと契約してるからいいじゃん”と思いがちですが、NPB全体での統括はできていない訳です。
各球団の試合よりも、リーグ全体の試合をまとめて権利にした方が絶対に価値が高くて放映権料がしっかり取れるのに。

さらに、日本一の高校スポーツ「高校野球」とお正月の楽しみ「箱根駅伝」はというと…。

・全国高等学校野球選手権大会 主催:朝日新聞、日本高等学校野球連盟
・東京箱根間往復大学駅伝競走 主催:関東学生陸上競技連盟 共催:読売新聞

大会をメディアが主催・共催しているのです。
しかも、「箱根駅伝」という名称は読売新聞社が持つ登録商標らしいのです。

これがどういうことなのか、皆さんお分かりでしょうか?

本来、メディアがお金を払って得ることができるはずの放映・報道の権利を、最初から与えてしまっているということなんです。
この運営状況が、メディアと競技団体の権利交換を失わせてしまっているのです。

しかも商標登録まで取られて…。
誰もお正月に「東京箱根間往復大学駅伝競走楽しみ〜」なんていう人いませんよね…。
もうすでに「箱根駅伝」という名前で広がってしまっているからこそ、その名前を使うことしかできず、その名前を使ってグッズを作ろうものなら読売新聞社にお金を払わなければならない。

競技団体の利益はどこに…?
って感じですよね。
毎年視聴率を30%以上も集めるビッグコンテンツなのに、こんなにも勿体無い運営があっていいのでしょうか。

日本のここまでの経緯

日本のスポーツ運営がこのような形になった歴史を辿ると、1901年がそのスタートだと言われています。

1901年、東京で「不忍池一周長距離競争」、大阪で「堺大浜間百口里競争」が開催されました。
今でいう駅伝のような陸上長距離の大会だった訳ですが、これらの試合の主催はというと、前者は「時事新報社」、後者は「毎日新聞社」です。
つまり、その当時の主要メディアであった新聞社が主催だったということです。

Q .なぜ、メディアがスポーツ大会を主催したのか?

その答えは、「ニュースが欲しいから」です。
社会的に注目を集めるスポーツイベントを開催することで、良質なニュースを獲得し独占的に報道したかったのです。
目的は、自社の新聞購読者数を拡大させることです。

メディアがいい記事を書くためにスポーツ運営をするということは、試合運営は「メディア都合」で動かされるわけです。
ここ最近だとアメリカ大統領選で話題になっていましたが、メディアに都合のいい報道なんてものはいつの時代もあるもので、都合よく報道されるために作られた試合に「スポーツのため」「選手のため」という気持ちは存在するのでしょうか。

決してメディアを否定したいわけではなく、本当にスポーツを応援したいのであれば、それぞれの正しい立ち位置において正しい価値交換が実践されるべきでないかということが言いたいだけです。

現にアメリカは莫大な放映権料収入を各チームに分配して組織の価値を維持しているのですから。

新体操が取り組めること

アメリカがプロリーグの価値を高めるために実践していることの一つに「戦力均衡」があります。

各チームの戦力が均衡しているから試合が面白くなり、観客動員数が増えるという考えのもと、各チームへの均等な資金分配だったり、選手年棒の上限・下限設定、ウェーバー制ドラフト(前シーズンの下位チームから順番にドラフト指名)という方法を実践しています。

このドラフト指名制度、とっても面白いですよね。
このおかげで、NFL(フットボールリーグ)ではリーグ連覇したチームはここ20年でたった4チーム、3連覇したチームはいないそうです。

さて、新体操(体操も含めて)はというと、ドラフトも何もありませんのでなかなか模倣できるところはないのですが、やはり、資金調達が一番なのではないかなと思います。

まずは商標登録をしてみるなんてどうでしょう。

大会ロゴを作ったり、マスコットキャラを作ったり…。
それをグッズ制作会社に売り、グッズ販売をしてもらう。
Tシャツ等のアパレルはもちろん、キーホルダーとか、ボールペンとかそんな小さなものでもいい。
試合を観に来るジュニア世代は結構欲しがると思うんですよね、そういうの。
(僕、小学生の時スティックのキーホルダー欲しかったですもん)

あとはチケットの金額をもう少し細かく振り分けてみたりとか。
僕、最前席のチケットって5000円でも売れると思うんですよ。(もっと高くても買いますか?)
全日本選手権のチケットを「電話繋がった人から早い者勝ち」なんて勿体無いことしていないで、前で見ることに価値を感じる人にはその権利を買ってもらったらいいと思います。
予選と決勝で金額を変えてもいいだろうし、”団体決勝だけ見れるチケット”など、時間で区切って売ってもいいと思う。

これまでの経費とそんなに変わらずにやれることはたくさんあると思うので、まずは「自分たちがより多くの権利を持つ・作る」ところから始めたらどうでしょう。
新体操に関しては、誰が権利を持っているというよりは、まだその権利があまり無いように感じます。
競技の質は年々向上していっていますので、あとは試合観戦の価値を高め、企業と取引できるコンテンツを作ることが必要なのではと思った井藤くんでした。

まとめ

この本を読むと、日本のスポーツの見方がガラリと変わります。
最近では多くのスポーツリーグが日本で立ち上がってきていますが、メディアスポーツ大国日本はまずその運営方法を変える必要があるのではと気づかされました。

次回は、アメリカの大学スポーツの話!
こりゃまたすごく面白いお話ですのでお楽しみに!

ではまた次回!


井藤 亘(いとう わたる)

・シルクドゥソレイユアーティスト(Cirque du Soleil)

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Instagram:@wataru_cirque

個人HP:男子新体操/井藤 亘Wataru Ito





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