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スポーツ学生よ、4年という時間を大切に。

「UNIVAS(ユニバス)」という大学スポーツ統括組織が2019年から日本で始動しだしましたが、その元となるのがアメリカの大学スポーツ統括組織「NCAA」。

今日は、そのNCAAについて触れると同時に、社会がスポーツ学生に求めるものについてお話ししていきたいと思います!

「NCAA」とは

アメリカの大学スポーツ統括組織「NCAA」(National collegiate Athlete Association)、日本語で言うところの「全米大学体育協会」は、1906年に当時の大統領セオドア・ルーズベルトにより設立された組織です。

現在、国内約1200の大学が加盟し、バーシティスポーツ(大学対抗戦のある競技スポーツ)の運営を行なっています。

NCAAの目的は以下の通りです。

加盟大学機関の競技スポーツを…
教育の一環として企画・運営する
教育課程において必須のものとして、スポーツ・学生選手・その他の団体を擁護する
③アマチュアスポーツ(大学スポーツ)として、プロスポーツとの違いを明確化し、その境界内での活動を堅持する

これを見てわかるように、「スポーツ=教育」という考え方をドンと構えているんです。

アメリカでは大学スポーツは「アマチュアスポーツ」と呼ばれ、学生がスポーツによって金銭を享受するようなことがあってはならないとされています。
その代わり、試合の放映権料やチケット販売による収入はNCAAの運営費をのぞいた額が加盟大学に分配され、練習施設のアップデートや学生の学習支援、奨学金に当てられます。(更に言えば、スポーツだけでなく教授の研究費などにも当てられ、学校全体の価値向上に繋がっています。)

つまり、NCAAが統括することにより、プロスポーツと同等の方法でお金を稼ぎ、それを学校の運営費に当てることによって学生に対して間接的にサポートをしているわけです。
ちなみにですが、全米大学バスケットボール選手権の全体収入は1100億円と言われています。(比較:夏の甲子園が約8億円)

「スチューデント・アスリート」

NCAAに登録している学生は、「スチューデント・アスリート」と呼ばれます。

この名前には、“スポーツ選手ではあるが、その前に「学生」である”という意味が込められています。
スポーツ運営組織ではなく教育組織であるNCAAは、スポーツが教育の弊害とならぬよう、【学生>選手】という大前提の関係性をこのような呼称で表しているわけです。

そんなNCAAでは様々な規則が定められています。
代表的なものでいうと、1つのスポーツを通年で行わずに複数のスポーツに取り組めるようにする「シーズン制」や、週の練習時間を制限する「練習時間制限」があります。

さて、ここで問題です。
NCAAが定める、シーズン中1週間の練習可能時間は何時間でしょう?

答えは…。
「20時間/週」です。

週1回は必ず完全休養日を作らなければならないので、1日の練習可能時間はおおよそ3.3時間。
この中には試合や練習はもちろん、ウエイトトレーニングやコンディショニング、さらにはミーティングまで含まれるので、いわゆる「拘束可能時間」が3.3時間なわけです。
しかもこれはシーズン中の場合ですが、オフシーズンは原則練習禁止となっています。

これを初めて知ったときの僕の正直な感想はというと…。
「3時間で何が練習できるんだ」でした笑

高校・大学の7年間、平日は4〜6時間、休みの日は朝から晩まで練習してきた僕にとって衝撃の数字だったんです。

さらに、NCAAはスチューデント・アスリートの最低GPA(評定平均)も定めており、GPAが2.0を下回った学生へは練習参加制限などのペナルティが課されるようです。(大学独自で3.0以上と定めているところもある。)

なかなか厳しい規則のように思えますが、これがあるから勉強ができるんです。
なんといっても【学生>スポーツ】ですから。

社会がスポーツ学生に求めるもの

ここから先は、スポーツをしている学生の皆さんにとって少しばかり耳の痛い話かと思います。

ここまでNCAAについて紹介してきましたが、現在日本で機能している「UNIVAS」が日本全体の大学スポーツを統括するにはまだまだ時間がかかるでしょう。(現在221大学、32団体が加盟中)

では、UNIVASが日本全体で機能するまで学生とスポーツの関わり方は変わらないのか?

そうではないと僕は思います。

結局のところ、一番大事なのは“スポーツをする者の学ぶ姿勢”だと思うからです。

どれだけ素晴らしい統括組織があろうと、どれだけ完璧な制度があろうと、本人たちに学ぶ姿勢がなければ何も意味がないから。
環境に頼ることなく、スポーツ学生自身が自主性を持って学ぶ姿勢がまずは必要だと思うんです。

「ずーっとそのスポーツをしてきたから、それに関連する仕事であればこのままでも問題ないだろう」

残念ながらそれは大間違いです。

仮に、指導者になりたいと一口に言っても…

・自分の技術を言語化する語彙力
・チームをまとめる統率力
・スケジュールを組んだり、収支のバランスをとる管理能力
・怪我への対応や効果的な練習をするための体の知識
・保護者からの理解を得るためのコミュニケーション能力

ざっと並べただけでこんなにもたくさんのスキルが必要なんです。
あえて並べはしませんでしたが、現代においてパソコンはいじれて当たり前です。

企業は過去の有名な競技者であることよりも、より高い職能を持ったビジネスパートナーであることを望んでいます。
過去に獲ったメダルの数ではなく、「いかに社会に貢献できる人間であるか」。
これがあなたの社会での価値なのです。

突然ですが、国によって電圧やプラグの形が違うため、日本の家電製品が海外では使えないことはご存知でしょうか?
どれだけ高価で高性能な家電製品であっても使えないのです。
この例えが正しいかはわかりませんが、社会を海外、あなたがスポーツで得た技術や経験を家電製品とするならば、その技術や経験を社会で使うためには変圧器(知識)が必要なわけです。

スポーツで得られる我慢強さやチームワーク、成功・失敗体験などは、確かに社会に出ればアドバンテージにできる。
しかし、それはちゃんとした職能を持っていてこそ機能するもの。
アドバンテージを持つためには、まずはみんなと同じことができないといけないんです。

学生であるうちに、スポーツスキルと社会をつなぐ知識を身につけられるよう、少しずつ興味のある分野に触れ、多くの人に触れ、自ら行動する力をつけましょう。

まとめ

こんなことを学生さんにいうのは、僕がスポーツだけをして学生時代を過ごしてきたからです。
周りの大人は「勉強した方がいいよ」と言ってくれますが、社会に出てみないとその意味はなかなかわからないものです。
だって何ができないのかわからないのだから。

だからこそアルバイトをしたり、ボランティアに参加したり…
学外に出て大人と行動することが大事なのかなと僕は思っています。
闇雲に勉強するのではなく、まずは自分に気づきを与えられる場所を作るのが一番最優先かもしれません。

本日も読んでいただきありがとうございました!
右下のハートマークを押してくださるととても嬉しいです😊

ではまた次回!


井藤 亘(いとう わたる)

・シルクドゥソレイユアーティスト(Cirque du Soleil)

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個人HP:男子新体操/井藤 亘Wataru Ito




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