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正ロン・逆ロン🤸‍♂️

先日、現在連載中の男子新体操のマンガ「シックス」に取り上げられたことで、話題になりました、ロンダートの向きにまつわるお話を今日はしていきたいと思います!

作者の照井にと先生の説明が、すごく分かりやすかったのですが、ロンダートをする時に左手を最初につく人は”正ロン”(正ロンダート)、右手からつく人は”逆ロン”(逆ロンダート)になります。

ちなみにこの「正・逆」の呼び方ですが、新体操界特有のものな気がしています。
器械体操の中では、「右・左」で呼ばれていることの方が多いと思いのでは…🤔
では、なぜ新体操界では「正しい・正しくない」で呼ばれていると思いますか?

団体競技と関係性が

まず始めに、これから書くことは、僕の経験に基づいた推測なので確実な情報でないことはご了承ください。

さて、その「正・逆」と呼ばれる理由には団体競技が関係しています。
鋭い方はもうお気づきでしょうか。

その理由は…。
「タンブリングでさえもバッチリ揃えるために、ロンダートの向きを決めていたから」なんだと思います。

そのため、みんなで揃えている方の向きは「正」
その反対の向きは「逆」
と言われるようになったのではないかというのが僕の推測です。

ここ最近は、ロンダートの向きをあまり気にしない風潮になっているような感じもしますが、僕が新体操をしてきて出会った選手の中で、ジュニア時代や高校時代にロンダートの向きを直されたという経験がある選手が何人かいらっしゃいます。
(もうすでにツイッターでその経験をコメントしてくださっている方がいましたね。)

つまり、それまで自分のやりやすい方向だった「逆ロン」でやっていたのに、団体競技をするために、「正ロン」に直されたということです。

感覚的には、右利きの人が左手で字をかけるように練習するようなものです。
側転くらいなら誰でも左右両方できますが、ロンダートとなると、次の技につながる重要な助走の一部ですので、その左右が切り替わるというのはとてつもない苦労を要することなのです。

全然関係ありませんが、野球の松井選手とイチロー選手はもともと右打ちだったって知っていましたか?笑
イチロー選手は出塁率を高めるために父に変えさせられ、松井選手は強すぎたから一緒に遊んでいた兄に変えさせられたという…笑

あ、ちなみにですが。
自分が「正ロン派」か「逆ロン派」かを知りたい人は、倒立をしてみるといいですよ!
何も考えずに倒立をしようとした時に、右足を最初に振り上げた人は「正ロン」、左足を振り上げた人は「逆ロン」です。
この方法は、初心者にマット運動を指導する時にはよく用いられるものです。

向きが違うとそんなに見栄えが違う?

さて、いくら合わせる競技と言っても、そこまで気にする必要があるのかと思われた方はいらっしゃいますか?笑

実は、ロンダートの瞬間の左右のズレはそんなに気にならないんですね。
では、何が気になるのかと言うと…。

「捻りの方向」です。
一般的に、正ロンの人は左回転の捻り、逆ロンの人は右回転の捻りをします。
僕の知っている中で、逆ロン・左捻りの選手が一人いますが。

男子新体操の演技では、2人並んでタンブリングをするのをよく見ると思います。
その時に捻りが逆だと、そこそこ気になるものです。
実際の所、捻りが逆だからといって減点はされないと思いますが、合っているのに合っていない様に見えます。
また、見栄え的に綺麗でないものは、練習していて自分たちが気持ち悪く思ってしまうんですね。

さらに、ロンダートの向きが違うと、助走の足の運びも違いが出ます。

3歩でタンブリングに入るとしたら…
・正ロン→右・左・右
・逆ロン→左・右・左

実際、足の運びを逆にしてもできないことは無いですが、おそらく本人は凄い違和感を感じると思います。
また、同様に照井さんは「座着地」のこともおっしゃっていましたが、その通りで、着地の足も反対になります。

そうなると、ロンダートの向きが違うだけで、「助走・ロンダート・捻り・着地」全てが合わなくなってしまいます。
そりゃ合わせたくなるわけですね。

最後に実際の例をご紹介します。
以下の動画の第1タンブリングは、
・最初の2回捻りの2人組は逆ロン(右端→左端)
・その次の2回捻りの2人組は正ロン(手前→奥)

となっています。
こうしないと本当にあっていないように見えたんです…。
(そもそも少しタイミングがずれていますが…。)

まとめ

青大にいた時は、全員同時バク転の時に、逆ロンの人をなるべく見えないポジションにしたり、なるべく1人でタンブリングをさせるなど、工夫をしていました。

中盤で書きましたが、最近はそこまで気にされていません。
でも、綺麗に揃っている中にもそんな微妙なズレがあるということを知っていたら、さらに観戦が楽しめるかも!

ではまた次回!

井藤 亘(いとう わたる)
・シルクドゥソレイユアーティスト(Cirque du Soleil)
Twitter:@wataru_cirque
Instagram:@wataru_cirque

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