見出し画像

気分が乗らないときに役立つトリガーと 面と線と点でとらえた集中力の話

書き続けるという行為には、高い集中力が要求される。ひとたび中断すると元の状態に戻すのにとても時間がかかるので、SNSやメールなどを一度遮断した状態で一気に書き上げるのが効率的だ。

私の場合、集中力が長続きするタイプの人ではないという自覚があるので、生活の中にいくつものトリガーを用意している。例えば、次のようなものである。

・特定の匂い(過集中状態に持ち込むときだけに使うアロマ)を嗅ぐ

・執筆開始前に決まった運動をしながら特定の音楽を聴いて、脳内を空っぽにする

・毎朝、同じ時刻に同じ場所を散歩する(お気に入りの緑地)

やっていることはすべて五感刺激で、ある条件下に身を置くことで、半ば強制的に過集中で書く、という精神状態にスイッチする方法だ。パブロフの犬みたいになってやれ、と思って始めてみたのだけど、めちゃくちゃ効果が高い。意志力とか、もはやどうでもよくなる。

___________________________________________________

さて、ここからは少し話が逸れて、私が過集中状態で一気に書かねばならないときに、どんなことを意識しているかについて話をしてみる。興味がない人はスルーしてくれていい話。

そして、これを話すとちょっと頭のおかしい人だと思われるリスクがあるので、緊張する(苦笑)。

私は普段、一風変わった物事のとらえ方をしている。

文章を読んだり書いたりしているときに、どの五感刺激を使っているのかといえば、視覚や聴覚よりも、触覚の方が優位に働いているような感覚がある。たぶん、共感覚にすごく近い。読むという行為を触覚変換しているような気がするからだ。

文章ばかりではなく日常生活の中でも、人、物、場所の印象を、温かい、冷たい、硬い、柔らかい、尖っている、丸い、ザラザラしている、つるつるしている、流れている、詰まっている、赤い、青い、緑っぽい、とかなり触覚や視覚寄りの情報に変換してからインプットしているという自覚がある。(そのため、人が多い場所で長時間過ごすと、情報過多でとても疲れる)

編集中や執筆中は、違和感を感じる部分をまずは“面”で大きくとらえてから、次に文章の塊の”線”、次は単語単位の”点”というように、対象を絞り込んでとらえ直して修正していく感じ。

書き手が自分である場合は、線と点だけを意識して書けばいいのだけど、別の人が書いた文章だったり、自分が誰かになり代わって書くタイプの文章の場合、面と線と点のレーダーを総動員させて、全体をとらえる鳥の目、文章の流れや著者の語り口をとらえる魚の目、微細な表現をとらえる虫の目、みたいにスコープをかなり頻繁に変えながら精査していく。

これをしている間は、周囲の環境から自分が消えてなくなるぐらいの過集中になっているので、脳内はトランスなのだと思う。

持続時間は大体2時間ぐらい。それを過ぎると一気に睡魔が襲ってくるか、少しボーッとした放心状態になるので、よっぽど気分が乗っているとき以外は、長時間やるべき作業ではないように思う。(他の人はどうなのか知らんけど)

同時通訳の仕事を休みなく10時間以上に渡ってやり続けたことで、一生通院が必要なレベルの脳障害を負ってしまったという友人がいるので、2時間を超える場合は、適度に休憩を入れながらやると決めている。何事もやり過ぎはよくない。

文体を気にしながらスコープを調整して書く、というのはライターレベルが中級以上になると必要になってくるスキルだと思うので、参考までに載せてみた。

鳥の目、魚の目、虫の目の距離感で、文章をとらえる訓練をぜひしてみてほしい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?