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思考は柔軟に、でも自分軸は強固に。

対面での取材がほとんどなくなり、打ち合わせもすべてZoomに切り替わる生活がもう一年以上も続く中で、心のバランスを整えることが難しいと感じる瞬間が少なからずあった。

特に、日々膨大な文字量を扱うような特殊な仕事をする人種は、自分の中にだけ溜まっていく言葉の澱が、放っておくとどうしようもないぐらいにまで膨れ上がって、何かの拍子に爆発する。酷くなると、自分で自分に合格点を出せるような文章が全然書けなくなってしまうから厄介だ。

そして、特殊な環境に慣れきってしまうと、普通という感覚がわからなくなってしまうことが多い。そうならないためにも、

「普通であり続けるために、他人に染まらないこと」を、かなり意識しながら生活している。

職業柄、自分の身の丈以上の方とお会いすることが多い。それに浮き立ち、染まってしまうのではなくて、“いち消費者”としての普通の感覚をずっと見失いたくないと思っているのだ。だからこそ、自分の身体に耳をすましながら、なるべく穏やかな心持ちで日々を過ごすことが大事になる。

その日に食べたい物が思い浮かばなくなってきたとき、入眠までの時間が長くかかるようになったときが、注意信号だ。ひたすら無心で運動をしたり、美味しい物を食べたり、自然の中を散歩したり、小説を読んだりしながら心と身体を整える。

昔はいつも緊張感をもって相手と向き合っていたのだけど、今はその逆で、“緊張する”よりも“弛緩する”ことの方がずっと大事なのではないかと思うようになった。なぜならば、媒介となる私自身が柔らかい思考でいないと、誰かの目や耳となり言葉を紡ぐことができないからだ。

私という個性を出さずに“無色透明”のまま、ひたすら相手の思考に近づけていく行為は、ともすれば相手に飲まれて自分の心が死滅していくような感覚に陥る。

「共感はしても、共振してはいけない」

影響を受けて強い感情の波に飲まれないようにするためには、自分軸を強固にしておく必要がある。受け取った言葉に共感できるように、

「思考は柔軟でありつつも、自分軸は強固に」

力を入れる場所と抜く場所を、冷静に選び抜く訓練が必要だ。長く書き続けるためにも、日々、心と身体のバランスを整えながら感性を研ぎ澄ませておきたいと思う。

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