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僕らはInstagramでモノを買う 〜2016年に始まった、静かなマーケティング革命〜

Instagramユーザーの約8割が、なんらかのかたちでInstagramに影響を受け、購買につながる行動を起こしている」という衝撃の事実があります。

Instagramが公式に発表しているデータです。

Instagramユーザーの...
・83%が、Instagramで「新しい商品やサービスを見つける」
・81%が、Instagramで「商品やサービスについて調べる」
・80%が、Instagramで「商品やサービスを購入するかどうか決める」

Instagramでブランド認知度の向上や販売促進につなげるには より)

このnoteでは、そんな「Instagramで物を買う」というテーマについて深掘っていきます。

なぜInstagramでモノが売れるようになったのか

かつて「Instagramは販促には向かない」と言われていました。
そのときよく引き合いに出されていたのは、同じSNSであるTwitterとFacebookです。

「TwitterやFacebooはシェアで投稿が拡散するのでリーチが増えやすい」
「TwitterやFacebookは投稿のURLからサイトアクセスが獲得できる」

Instagramにはシェア機能がなく、フィード投稿にはURLを掲載できない。だからサイトアクセスを獲得しづらいので売上が直接的に伸びない。
よって、Instagramは販促には向かない、というロジックでした。

これらは一面的には正しかったのですが、現在はかなり状況が変わってきています。

例えば、Instagramプロフィールに掲載しているたった1つのURL経由で、月間240,000アクセス(2020年7月)を獲得しているアカウントがあります

Instagramの5,971企業アカウントを業界別データ分析 〜5つのグラフで見る企業アカウント運用の裏側〜 より)

さらに、現在では「ストーリーズ」や「ショッピングタグ」からもECサイトを閲覧してもらえるようになりました。

これにより、実際には月間100万PV単位のアクセスを集めることができるようになっています
しかも、アカウントや投稿に興味を持っている熱量の高い顧客のみを送客できるのです。

もちろん、アカウントを育てるまでに時間はかかりますが、長期的に取り組むことで安定した流入を獲得することができるのです。

Instagramのユーザー行動は複雑化している

さらに、この4年ほどで多くの機能がアップデート・追加され、よりECとの結びつきが強化されてきました。

・「発見」タブでのレコメンド
・「ストーリーズ」の「ハイライト」
・「Instagramライブ」「IGTV」
・「インサイト」の拡充

これにより、Instagram内におけるユーザーの行動は大きく変わりました。

多くの人がご存知であろう「AISAS」というマーケティングフレームワークがあります。

Webの誕生で一般化した「認知」「興味」「検索」「購入」「共有」という一連の流れのことですね。

AISASの考え方では、Instagramユーザーは例えば下記のようなカスタマージャーニーをたどります。

もともと好きだったブランドのアカウントをフォローした。

フィードで毎日投稿が流れてくる。きれいな写真だと思ったら「いいね」をする。

そのブランドが先月発売した新商品の投稿を目にした。可愛い!

Google検索をして、まず口コミを読んでみた。評判は良さそうだ。

そのブランドのECサイトを確認し、商品を購入した。

満足度が高かったので、Instagramでタグ付けしてシェアした。

これを読んで、「そうそう、これがInstagramにおけるユーザーの行動だよな〜」と思った方、やばいです。

今のInstagramユーザーは、実際には下記のような行動をとります。

ご飯を食べ終わり、一息つきながら発見タブを眺めて暇つぶしをしている。

発見タブで目を惹かれる投稿があった。自分の好きな雰囲気の冬物の洋服だ。ちょうど寒くなってきたし、ウインドウショッピングしようか迷っていたところだった。

投稿からプロフィールに飛び、ブランドのコンセプトや世界観を確認する。
うん、自分に合いそうだ。値段も手頃で信頼できそうなブランドだ。

ハイライトを見たら、いろんな人のコーディネート例を確認することができた。過去のフィード投稿もざっと見て、気に入った商品をとりあえず『保存』していく。

その中でも、この冬に着られそうな服のショッピングタグをチェックしてみる。ショッピングリンクからECサイトを確認したら、今だけクーポンが使えるらしい。

同じカテゴリの似たような服をハッシュタグ検索してみる。うーん、ピンとくる服はなさそうだ。デザインは似ていても、質感に不安があるものが多い。

そのブランドのハッシュタグ投稿も調べてみた。PR投稿は少なく、個人の感想が多い。評判はかなり良さそう。自分と同年代、同じような趣味の人たちが絶賛している。

IGTVの過去配信を見てみた。スタッフさんも親切そうで好感が持てる。

でもネットでいきなり買うのは怖いな。一度、店舗に行って実物を確認してみよう。プロフィールに掲載された位置情報をクリックして場所を調べた。うちから30分ぐらいだ。

「AISAS」で言うとまだ1つ目の「S」の段階ですが、このまま書いていると日が暮れるのでやめます。

何が言いたいかというと「Instagramのユーザー行動は驚くほどに複雑化している」ということなんです。

そして、その複雑化した中に無数に存在するタッチポイントすべてで、ユーザーが購買につながるアクションを取る可能性があるのです。

今のInstagramでは、「認知」「興味」の獲得はもちろん、「検索」「比較検討」「購入*」「口コミの投稿」すべての対策を行うことができます。

かつて、こんなマーケティングチャネルは存在しませんでした。

※Instagram上で決済することはできませんが、ワンクリックでECサイトに遷移することができるので「購入」ができると表現しています。そして、決済機能もまもなく実装予定と言われています。


「インスタ映え」はもはや必要ない

「とはいえ、うちの商品はインスタ映えしないんですよね...」
と思う方もいらっしゃるでしょう。

「インスタ映え」が流行語になったのは2017年末のことでした。
それからまだわずかに3年足らずですが、「インスタ映え」はとっくに死語になっています

例えば、一時的なブームに乗っかり非日常的な写真をアップするアカウントが溢れ、ユーザーが「インスタ映え疲れ」するようになりました。

例えば「インスタグラマー」によるステマが問題となり、ただ商品を紹介するだけの熱量が低く共感しづらい投稿は注目されなくなりました。

かつては高いエンゲージメントを獲得できていたはずの「インスタ映え」で、エンゲージメントが伸び悩む状況に陥ったのです。

しかし、先見性のありすぎるInstagramは、先手を打つようなかたちで2016年12月ごろに「保存」機能をリリースしていました。

この機能追加により、それまで「いいね」「コメント」しか投稿へのアクションがなく、ユーザーと投稿との関係性がその場限りで終わりがちだったInstagramに、「保存」=「後で見る」というアクションが選択肢に増えたのです。

これは革命的なできごとでした。

「後で見る」という行動は、その情報に見返すような価値がなければ発生しません。
それまで「綺麗!」「可愛い!」「欲しい!」が溢れていたInstagramですが、「保存」機能が追加されたことにより、「とりあえず保存しておこう」「買うかどうか後で悩もう」「役に立ちそうだから取っておこう」「今度これ試してみよう」という冷静な投稿の評価をユーザーがするようになったのです。

この「保存」機能が浸透し始めたのが2017年〜2018年ごろですが、この流れに拍車をかけるように、2017年7月ごろから日本で「いいね」が非表示になりました。

つまり、ちょうど「インスタ映え」が流行した2017年ごろを境に、Instagram自体は「インスタ映え」から遠ざかり始めていたのです

現在、Instagramでは「レシピ」「美容」「ファッション」「子育て」のような様々な切り口でお役立ち情報を発信する、Webメディアのようなアカウントが急増しています。

また、商品やサービスを持っている企業でも、ユーザー目線で情報価値のある投稿をしようと努力しています。
もはや綺麗な写真だけでは、ユーザーを惹きつけることはできないからです。

既に「インスタ映え」はInstagram運用において不可欠とは言えない要素になっているということです。

次なる革命は、もう始まっている

そして昨日、ここ最近で最も大きなアップデートがありました。

ついにアプリ下部のメニューに「ショッピング」タブが追加されたのです。

ショッピングタブでは、ユーザーが好みそうな商品がレコメンドされ表示されます。
このレコメンドは、これまでInstagramが蓄積してきたユーザーの趣味趣向を反映した、かなり精度の高いものになっているでしょう。

つまり、自分のお気に入りのお店ばかりが立ち並ぶモールで、ウインドウショッピングを楽しむような感覚で買い物ができるのです。

現在はまだInstagram内での決済ができませんが、先述のように近いうちに機能として公開されるでしょう。
これが実現すれば、InstagramはECアプリとしてその地位を確立することになります。

Instagramはこれまで、様々な機能の追加で他にはないショッピングアプリとしての基盤を固めてきました。
その集大成が今回のショッピングタブ追加と見て間違いないでしょう。

今後、この流れはさらに加速するばかりです。
まだ「インスタ映え」時代のイメージを引きずっている方は、本腰入れてInstagram対策について考える必要がありそうです。

次なる革命は、もう始まっているのです。

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