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[1] F1エンジニアになるのが「難しい」と言われる4つの理由と、その妥当性

日本からF1エンジニアを目指す人を助けたい。そこで経験者として、F1に憧れる人へ連載を始めました。筆者は:日本の高校→イギリスの大学→英F1チームインターン(2017-18)等してました。
・収録マガジン:「F1で働く
・前回記事「『F1エンジニアを目指す人へ』F1で働くための方法、考え方、ヒント、経験…連載始めます。
・毎週日曜更新予定

こんにちは、わたぽんです。

記念すべき第一回目。
まず最初に、目指すところについてちゃんと把握しておくべき必要があります。

F1のエンジニアになりたいと言うと、知らない人はともかく、F1を知ってる人はこう思うでしょう。

「まじか、大変そう。」
「F1のエンジニアなんて夢の世界。」

人によっては、「無理だ」と言うかもしれません。果たして、なぜそんなにも遠い世界の様に言われるのか? その理由は4つに集約できます。


(1) 専門的で求められるレベルが高い

エンジニアとしてF1で求められる学問レベルは、ハッキリ言って高いです。

最先端テクノロジーの塊とも言われるF1マシン。ただ車を300km/hで走らせるだけでも大変なことですが、それに加えブレーキ性能、コーナー等での運動性能と共に、レース戦略やドライバー・マネジメント等、極限的な効率化が進められている分野は多岐に渡ります。

難易度の高い開発や分析が求められているので、求められる学問レベルも自然と高くなる。技術をちゃんと理解してない人に、最先端マシンの開発なんてできるはずがありません。

その中でライバルよりも早いペースでマシンを速くし、不安定要素の多いレースでも確実に勝ち残っていくひつようがあります。それには、それ相応の人材が求めらます。ただ専門的に理解が深いだけじゃダメ。頭にある情報や与えられた情報を元に考え、限られた時間の中で最適な答えを導き出さなければいけません。

また、ライバルチームより一歩、いや二歩先に進むために、未だ他チームが出していないアイデアを、考えられる人であることも求められます。クリエイティビティですね。ただ上司に言われたことをこなせるだけだと、F1のエンジニアとしては三流です。


(2) 相手は世界の名門・優秀校卒業生だったりする

そんな専門的かつ素早い考察・判断ができ、クリエイティビティもあるエンジニアが求められる職業。誰がやってるのかと言うと、その多くが世界的に名の知れた大学・大学院の卒業生であったりします。(実際は、全員がそうというわけではないと断っておく必要があるでしょう。エンジニアと一般的に言われる職の中でも、名門校出身とか正直関係ないものもあります。が、やっぱり多いです、名門校・優秀校出身の人達。)

例えばケンブリッジ大学。世界大学ランキングで一位にも輝くこの大学ですが、工学が強いことでも有名です。日本でもケンブリッジ大学と言えば、結構名が通りますよね。そんな名門校を大学院修士課程や博士課程を卒業した人が、F1にはちょくちょくいます。(ほんと、なんでF1にいるんやって最初は思った。)

ケンブリッジ大学を例に出しましたが、それに限らなければ、世界的に名の通る大学の優秀な卒業生がたくさんいます。それこそ、ゴロゴロと。F1エンジニアを目指すというのは誤解を恐れずに言えば、これら世界的有名校の卒業生と就職バトルを繰り広げるということになるのです。


(3) 海外中心、少数精鋭の遠い存在

同時に日本人にとっては、F1 = 遠い世界とも感じるでしょう。心理的距離があります。

その主な理由はやはり、F1というスポーツが未だ欧米中心に回っているということでしょう。F1チームの多くはヨーロッパにあるし、仕事場は欧州各国のオフィス、あるいは世界中のサーキットだったりします。作ってるのはF1マシンだし、色々特殊。

特殊な世界なので、特殊な行動をどこかで起こさなきゃいけない場合が多い。学生でも、F1で働くには的を絞って行動していく必要があるし、社会人の方であればキャリア構築を綿密に行う必要が往々にしてあります。ビザ等も関係してきますし、一筋縄ではいかないことも多々あります。

しかもF1関係、特にF1チームで直接雇われて働くとなると、その人数は多くはありません。ザっと見積もって、1チーム400人~1000人(エンジン開発含む)、それが2019年現在10チームなのですから、世界で約7000人いるとしましょう。ちなみになんとなく東大の生徒数をググってみたら、2018年5月時点での学部生の数が14024人。なのでだいたい東大学部生の数の半分ですね!笑


(4) なのに憧れる人は世界中に大量にいる

少数精鋭であっても、志願者数も少なければ問題ないはず。だけどF1に憧れているのは、このNoteを読んでくださってる方だけではないのです。世界中でF1に憧れる人がいる、働きたいと思っている人がいます。

F1での新卒就職倍率は100倍だとか200倍だとか、いやいやそれ以上とも言われるし、需要と供給はマッチしていないです。それだけF1のエンジニアが魅力的だとも言えます。



では、本当に夢のまた夢なほど難しいのか?

ここまでなるべく客観的にF1エンジニアの難易度について書いてきました。が、読者の方が気になるのはその先でしょう。本当に日本人にとって、F1エンジニアを目指すのは難しいことなのでしょうか?

そもそも、「難しい」「簡単だ」というのは結構主観的で曖昧な表現です。確かに、F1チームへの就職には高いスキル・能力が求められます。ただ、何が求められるか分かっていれば、鍛えるのは不可能なことではありません。運動神経が問われるわけでもない。大事なのは、何が求められているのかをハッキリ知ること。例えば「東大に入るのは難しい」とは言われますが、センター試験があって、二次試験があって、そこでは○○という科目でこれくらいの点数取って…と求められるものをハッキリさせることができます。すると、「難しい」と思っていた雲の上の存在でも段々霧が晴れてきて、「もしかしたらそう難しくはないのかも」と思えるかもしれません。

実際F1チームへ入っていった友人や、インターン先で見てきた社員さん達を見ていると、彼らがF1で働けているのには納得がいきました。みんな頭の回転が早かったり、現場で機転が効いたり、技術理解が深かったりしています。言い換えれば、彼らの持つ能力が、F1チームで働くために求められる能力だと言えるでしょう。(その具体的な能力や考え方については、別記事で書いていきます。)

今回覚えておいてほしいのは、みんな目指すところをちゃんと知らないから、難しく感じるということ。実際難易度は低くないけど、不必要に難しく感じる必要もない。だからまず、目指すところを知ろう、と。



F1を目指す人へのまとめTips

この連載では、各記事の最後にまとめとして、内容を統括したTips(記事の論点、コツ、ポイント)を送ろうと思います。

今回の場合、

F1エンジニアの客観的な難易度を知る」ことで、
目指すところがあるということを知る」、そして実は「敵を知る」ことができました。要はケンブリッジ大学卒業生と"何らかの形"で対等以上に渡り合えれば良いわけですね。笑 あるいは、比較されないようにすればいい。何が必要か分かれば、それを重点的に鍛えられる。鍛えて自分を成長させていけば、F1にも手が届く…かもしれない。

では目指すところとは何なのか?

その点について、次回以降もう少し続けていきます。

毎週新しい学びを届けられるよう頑張ります!


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