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本当に必要なものはわずか

人間の強欲に限りはないが、
自然の欲求を満たすだけならほんのわずかなもので足りる。
それゆえ、追放のみで困窮したとて不幸にはならない。
追放の境遇はもともとみじめで、豊かな暮らしなどできるはずないのだから。
~セネカ『ヘルウィアに寄せる慰めの書』~

「この言葉の由来は自然にしたがって生きることを良しとしたキュニコス派だろうね。」
口火を切ったのはドレイクだ。
「『足るを知る』に代表されるように、キュニコス派はできるだけ所有しないことを美徳とした。
ストア派の開祖であるゼノンはキュニコス派のクラテスの弟子であるから、さもらりなんってことだ。
この言葉の指し示すことは、身の丈にあった生活の中で豊かさ、心の充実を果たすことの大切さだね。」

ルーピンは待ってましたとばかりに言った。
「言葉だけで真意はわからないさ。背景まで理解しないとね。
これはセネカがコルシカ島に流刑にあっている時に母親のヘルウェアに出した書簡の言葉さ。
母親を心配させないとするために気丈にふるまった言葉とも言える。
セネカ自身が伝えたかったことは、自分の権内と権外を切り分けられる成熟した精神を持てば、
どのような環境でも自分を見失うことはないと言うことだよ。」

「好きに生きることを至上としている私にとってはね・・・」
トランブルが微笑を携えながら語る。
「何事にも上には上がいるものだよ。
たとえばチェス。当黒後家蜘蛛の会でチェスにおいて負け知らずの私だが、
世界一強いというわけではない。
それでもルーピン、君の悔しがる顔を眺められるだけで私は満足さ。
上を見上げると果てしない、自分の手にしたもの、その範囲で楽しむことが肝要さ。」

今にも煙が出そうなルーピンをなだめながらアヴァロンは言う。
「ヘンリー、ルーピンに水を。このままだとトムにとびかかりかねん。
とにもかくにも、私はこの言葉を君たちと違う方面でとらえるね。
『仕事において初心を忘れてはいけない。』と。
君たちが今の仕事を選んだ理由は何だい?
給料がいいから?やりがいがあるから?自由に仕事ができるから?尊敬されるから?
理由は様々だろうが、初心を忘れてはいけない。
一つ目は日々の業務に謀殺されて、忘れてしまうこと。
二つ目は欲が出て他の物も欲しがること。
いずれにしても自分の初心を忘れないことが大切何じゃないかな。」

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