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2023年9月 どこかにビューン旅1(浦佐編)

 どこかに旅したい。別に行きたいところはない。ただ、どこかに行きたい。

 はい。疲れていたのです。6月頃に大きく体調を崩し、かなりストレスを蓄えておりました。というわけで特にどこかという希望はなく、ただただ旅をしたいなぁ、と。
 そんな心境に打ってつけだったのが、JR東日本の「どこかにビューーン!」でした。JREポイント6000円分で、大体JR東日本管内の旅先の候補地(新幹線駅)を4つ挙げてくれ、その4つの組み合わせが気に入るまで旅先ガチャを何度でもすることができ、申し込みの数日後にその中の1つの駅への往復指定席券が当たる、というお得なサービスなのです(お得だけれど、JREポイントって、結構貯めにくいのよね。自分はマイナポイントをぶち込んだので、あと2回ビューンできます)。自分の場合は何十回もガチャをして、二戸、角館、新花巻、浦佐、という組み合わせで申し込みました。角館と新花巻は旧い町並みやら温泉に惹かれてのことだったけれど、二戸と浦佐に関しては「そこに何があるのかよく分からないから」という理由で佳しとしました。人がたくさん集まるような場所よりも、あまり人がいないような場所を巡りたいのです。
 で、決まったのが浦佐でした。浦佐。正直その駅名だけではどこのことだか分かりませんでした。越後湯沢の先。南魚沼。調べてみて場所は分かったが、やっぱり何があるのか分からん。しかし米は美味いだろう。というわけで地図をぐりぐり動かしながら、ざっくりとした2泊3日の旅程を組んだのでした。というわけで行ってきました、浦佐。

初日

 朝六時に起きる。まずは上野駅へすたこらさ。今回の駅弁は何にしようかと考えたが、久しぶりに崎陽軒のシウマイ弁当が食べたくなり購入。袋の底に手を添えると温かいぞ。上越新幹線に乗り込めば、自分の指定席に座っている若い女性が。声を掛けたら、そそくさとどこかへ行ったので、自由席切符の方だったのでしょう。とりま温いシウマイ弁当をパクつきます。安定の美味しさ。
 そんなわけで国境の長いトンネルを抜け、やってきました越後の国。天気予報では曇りと雨だったけれど、割と晴れてるぞ。そして浦佐駅に降り立てば割と閑散としているぞ。観光案内所も今日はお休みで、とりあえず八海山口(東口)に出て、あたりを見回す。岩が低く積まれた、多分今は稼働していない感じの噴水。ウラサと看板を掲げたホームセンター。なんかいいぞ。駅構内へと戻れば、西口は毘沙門天口との通称があるようで。まぁ今は上越線で南に戻り、窓の向こうの田園景色を目に映しつつ、六日町駅へ。東口を出てすぐの南魚沼市図書館は「本の杜」というネーミングとシンプルな様子の入り口で期待が持てる感じだったけれど、まだオープン前。というかやっぱり晴れてる。と青空を眺めたところで開店したばかりの観光案内所へ。1泊2日で電動スポーツバイクを予約しておりました。充電器も貸して下さるということで、予約していた長時間乗れるシティタイプではなく、スポーツタイプに変更していただく。薄手のキャップの上にヘルメットを着用し、商店街を抜け、緩やかにくねる川沿いを北へとのんびり進んでいきます、というか日射しがあっつい。と、道の向こうに素朴な感じのお社を発見。無論行く。手を合わせる。もう少し行くと、民家の前にとても小さな鳥居と石造りのお社。こんなかわいらしい神社は初めて見たように思う。というかここいらの田は刈り取ったばかりのようで、稲の茎の切り口が整然と並んでいました(たまに実るほど頭を垂れる稲穂の一角もあったけれど)。ということは全然意識していなかったけれど、新米が。そんなこんなで「魚沼コシヒカリ発祥之地」なる石碑の前へやってくる。もちろん田んぼの真ん前。このへんは江戸時代の道が100mばかり残っているとのことで、少し戻って石の道標なんかを見つけて一人喜ぶ。
 さて、田園地帯を抜けて橋を渡り、住宅地へ。相変わらず北へ。見えてくる八海醸造株式会社の看板。八海山の蔵本です。ここでは見学的なことは行っていないので、もう少し先へと進む。「禁葷酒」と彫られた門前の石塔が気になり立ち止まっていたら、車の中から「ここは○○ですか?」と尋ねられるが、地元民じゃないので、その旨を告げる。で、「禁葷酒」。あとから調べてみたら、お寺の境内に入るとき、酒と葷(くん)=ニンニクやネギ等の匂いの強い野菜の持ち込みを禁じるという意味のようで。酒は分かるが、ニラとかもダメであったか。この標語を掲げているお寺は結構あるようだけれど、今でもこの教えを守っているのか気になるところではある。
 そうして到着したのは「魚沼の里」。さきの八海醸造が運営する酒のテーマパーク的な、かなり新しめの施設です。が、道路に看板があまり出ていないかったような……。広い駐車場に自転車を停め、端から施設を攻めていこうとタンクの脇を行けば、ガラス張りの建築に何だか観光施設っぽくない質素なドア。鍵はかかっていなかったので入れば、ひんやりとした見学施設内。解説をしているツアーの後ろを通り過ぎ、重厚そうなドアを押し開けておもてに出れば「八海山雪室」。こいつ逆から入りやがったぞ。まぁツアーは予約とのことで、併設するショップに行けば、今までの鄙びた景観からは想像もできないようなシックな空間が広がっておった。次のツアーは20分後とのことで予約を済ませ、館内を見て回る。主にキッチンまわりのあれこれが販売されているようで、食器やらどれも洗練されているのだけれど、結構なお値段。を物色しつつ、時間になったのでさっき出てきた雪室の入り口へ。
 雪室。かまくら的なイメージがあるけれど、雪室には二種類あって、かまくら型と、一つの部屋内に雪と貯蔵物を置くというタイプ(何て呼ばれていたのか忘れたけれど、これは昔の冷蔵庫だなと思っておりました)。八海山雪室は後者で、これからその貯蔵室内に入っていくけれど、通年5℃くらいなものなので服装にお気を付けくださいみたいなことを言われ、10名くらいいた見学者の中で半袖は自分だけだったような……。まぁ、自転車転がして汗かいたし涼しいくらいが丁度いいのです。で、昔の雪室の写真なんかを見つつ、厳重っぽい扉の奥へ。あぁ、心地よい寒さ。巨大なタンクがいくつも並んだ隣に、10m四方くらい雪の塊が。表面はところどころ黒ずんでいて、これは空気中の塵や埃とのこと。毎年二月頃に雪を足しているが、これでも半分くらいな量とのことで、毎年1/3は残るので理論的には言えば10年前の雪も残っているんでしょう、みたいなお話も伺う。暖冬だとこの近辺の雪ではまかなえなくなるので、奥只見のほうまで雪を稼ぎに行く、なんて話も。その後、焼酎の貯蔵室にも案内され(こっちは常温)、所狭しと並んだ樽の向かいに、例え方が良くないかもだけれど、お寺の位牌堂よろしくたくさんの焼酎の黒瓶がきれいにぎっしりと陳列。よく見るとラベルには手書きの文字。面向未来、というメモリアル焼酎のようで、最長5年間ここで焼酎を貯蔵し熟成させ、ご希望のお日にちにお手元にお届けしますよ、記念日や退職の日、子供の成人の日なんかにどうぞ、という唸る感じのサービスなのだけれど、価格が1万2000円と聞いて、やりおる、と。でもよく考えられた面白い商売だなぁ。その後は試飲カウンターへと案内され、八海山はじめ様々な日本酒があり、先ほどの雪室で貯蔵されていた日本酒の三年物、八年物も飲めるようだけれど、それだけは400円、800円と有料試飲。でも、結構飲んでいる方がいらっしゃいました。自分はというと、まぁ自転車だし少しくらい、という気持ちがあるにはあったが、試飲は甘酒だけにして(口ん中、あっま)、三年物をミニボトルで買って、あとはつまみに新潟のポークジャーキーなんかも求めました。今晩が楽しみなのです。
 っと、雪室をあとにすれば、ざーざーと雨が。軒先からきれいに透明が流れていきます。雨予報が出ていたから折りたたみ傘も持ってきてはいるが、雨雲レーダーを見れば、少し待てばやむはず。というわけで、小雨になってから動くが、また降ってきたので近くにあった古民家を活用した感じのお蕎麦屋さんへ。窓の前の席で、草地に降りしきる雨を見ながら、十割の地蕎麦を注文。いやはや期待を裏切ることなく美味い。つゆも濃いめにして好みでした。しかし雨がなかなかなぁ、とのんびり蕎麦湯を嘗めておりました。
続→

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