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2023年1月 中山道旅2

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 木曽福島の路地をあちらこちらと散策し、もう一度駅前から町中へと下りていく。とりあえず旅行支援の地域クーポンもあるし、けれど余ったら嫌だし、かといって旅の荷物になるのも嫌だし、というわけで、何かないかなと漆器店へ入る。入ってすぐ、箸の並んだ棚がお出迎え。箸。確実に荷物にはならないし、今使ってる箸に不満はないけれど、別に新しいのがあってもいいし、というわけで十分近く悩んで、シンプルな、黒檀だか鉄刀木(たがやさん、と読むらしい)だかの黒くて太い箸をクーポンで購入。残り900円分は近くのパン屋で使おうと思ったけれど、登録店ではなかったので現金でおやつみたいなパンを三つほど買う。まぁ、長野県抜ける前にもう一つ県内の町には寄る予定なので、そこで使おう(県をまたぐと地域クーポンは使えない)。

 そうして一つ先の上松駅へと電車で移動。ここからは以下の通り。

(道中、22分過ぎの二軒の茶屋跡はまったく知らずに通りかかったので、ため息こぼしこぼし振り返っておりました。とってもいい雰囲気なのだけれど、自分が歩いた中で中山道っぽいのって、この一角だけだったように思います。
 あと、最後のほうに一度カットしていますが、その間、こいつコケてます。背中から倒れ、リュックがクッションとなったので、何も痛みはなかったけれど、もう足下が少しでも悪いような場所では撮影やめましょうね)

 ねざめのとこ。浦島太郎伝説の残る地で、この奇岩巨岩列なる川べりで浦島太郎は玉手箱を開けて、目覚めると爺さんになっていた、という言い伝えがあるとか。こんな内陸部なのに、と思うものの太郎は竜宮城から帰って、日本全国を旅したという話のようなので、筋は通っています。まぁでも、そういった話を知らずとも、この景観はちょっと度肝を抜かれました。まるで山水画の中に迷い込んだかのような心地で。近くの飲食店も今日は休みのようなので(動画のカット中に探し歩きました)、さっき木曽福島で買っといたパンをこの巨岩の上で食べましょう。風が少しあるけれど、日射しのあるところに腰掛ければ、あたたかで。パンはカレー、ドーナツ、元祖ミルクパンにラムレーズンを挟んだの、を買ったけれど、カレーパンが美味かった……。近所にあったら通うレベルでした。ごちそうさまでした。こちらを見下ろすように、電車が高いところを通過していきます。ここからはバスで上松駅まで戻る予定だけれど──、と川ん中の巨岩に腰掛けたままスマホで調べればバスは出たばかり。あれ、これは結構マズいのか。ルート検索し、これなら歩きで何とか間に合うと知り、行きの旧中山道とは違う下道をてくてく。もう少しゆっくりしたかったけれど、旅先あるあるで電車一本逃すとかなり予定が狂うのです。

 というわけで十分くらい前に上松駅に戻ってくる。切符を買うついでに、駅員さんに地域クーポンを使える店を尋ねるが存じておらず(そりゃそうだ)、すぐ近くの窓口だけ休業中の観光案内所をインターホン鳴らして同様に伺えば、このへんだと寝覚の床のほうしかないと言われ、今行ってきたばかりだしその店休みだったしで地域クーポン900円が泡と消えること確定。うたかた。

 さて、次の町へ。前回、歩きに歩いてたどり着いた南木曾(なぎそ)駅を過ぎ、中津川駅へやってくる。栗きんとん発祥の地と書かれた石碑やら案内文を横目に、駅前通りを進み、左折。旧中山道の道筋を少し行けば、中津川宿の高札場(江戸時代、役所からの御触書=規則やら命令やらを記した木の看板、が集まった場所)。その脇にある成田不動尊の小さな祠。ただいまです、と手を合わせます。この場所。この場所から、前回の木曽路旅では落合宿、馬籠宿、妻籠宿、そうして南木曽駅と歩き旅を送ったのでした。だから少し思い入れのある場所なのです。振り返れば、旧中山道の街道筋がすっと一直線。というわけで今日は中津川宿を歩くことに。

「デ味ノ栗ハ栗」と書かれた書を掲げた古びたお店の前、ふと足を止める。逆から読むだろうから、栗は栗の味で。なんだか物静かな構えの店だ。栗きんとん発祥の地だし、栗菓子屋だろうか。今日は休みのようだけれど、すごい趣。栗は栗の味で。素材本来の味を大切に、ということだろうか。シンプルな言葉で、言わんとしているところがすっと入ってくる。間違いなく良いお店だろうなぁ、とようやく歩みを再開する。
 脇本陣跡や、時代感たっぷりの枡形(宿場町で良く見かける、敵の襲撃を遅らせるため道を直角に二度曲げた構造)をふむふむと眺めつつ、宿場町の外れに当たる(この書き方、面白いな)だろう中津川橋へ。腹減った。夕飯までも持たなそうなので、割と人気そうなチキンハウスで唐揚げを三つ購入。ビニール袋を提げて、真新しいお宿Onn中津川へイン。

 白木でしつらえられた空間。床まで木の柔らかな凹凸が(館内は土足禁止で、入口で靴は下駄箱へ)。中津川、というか木曽自体、白木の産地だから、多分そういうところから来ているデザインなのだろうな。とってもいい感じ。そうしてチェックインを終えて、エレベーターに乗ろうとしたらフロントの方が唐揚げの入ったビニールを手に追っかけて来て下さる。粗忽者で誠に申し訳ありません。
 で、部屋へ。こちらも白木を用いたデザインであることに変わりはないけれど、スイッチの形やら、袱紗っぽいのに包まれた予備のトイレットペーパーやら(いや上品だけれど、そこまでするかと驚き)、ベッドスペース手前のドアを引いたら、それがそのままテーブルの切り込みに入り込んだりやら、洗面所ドア前の床に小さな凹みがあり、そこでドアを軽く固定できたりやらどれも考えているなぁ、とそのデザインの新しさにうなりを上げる。そうして腹もうなってるので、買って来た唐揚げを。うむ。まぁまぁだけれど、旅先のお店で空腹で、なので嬉しいものです。

 さてしばしベッドで休み(今日も結構歩いてる)、そろそろ夕飯の店を探しに行くかと外へ出る。中津川、と川の付く地名なので、うなぎ屋はあるだろうなと事前に調べ、ちょっと軒先を覗いてみようと街道筋を外れて駅のほうへ下りていけば、うなぎの文字。岐阜県の地域クーポンも使えるお店。もう少し足を進めるも、もはや頭と口と腹はうなぎ色。飲み屋で酒飲もうかと思ってたけれど、もう疲れてるし、今日は地域クーポンでうなぎにしよう、と入店。割と広い店内。クーポンもあるし、上を注文。うん、結果から言えば、ふたを開いた瞬間、一鼻で濃いと感じる香り(匂い?)のたれで、美味しいことは美味しいけれど、少し好みではなかったかなぁ。あるいは、かりっと焼かれてる感じだから、これがいわゆる関西風なのかな。関東風しか食べてこなかったから、ふわふわしたうなぎが好みなのよね。まぁでも、ごちそうさまでした。そうして宿に戻り、黒を基調としたデザインの大浴場でじっくりと体を休める。と、これは意図したものだろうか。水面にライトを当て、その反射が天井に当たり、幻想的な模様を描いていて、アートだなぁと、しみじみ。そうして二日目、おやすみなさい。

最終日

 夜明け前に起きる。そうして以下の通り。

(人の少ない時間に動画を撮りたくて、早朝に撮影。ようやりますわ)

 動画撮影後、宿に戻り、またまた大浴場で体を温め、朝食。相変わらず床の木のさざ波が心地いい。というかここの朝食バイキングがまた良かった。五平餅や、岐阜のグルメ 鶏(けい)ちゃん焼きに、栗おこわのおにぎり、飛騨牛の牛丼。うまうまでした。
 さて、腹もくちくなったところで、出発。栗きんとん、食べた記憶がないし、発祥の地だし、何だか評判だし、買っていってみようかと。中津川では「栗は栗の味で」の標語を掲げている「すや」と、「川上屋」がどちらも栗菓子の老舗で人気のよう。ただ川上屋は今期の栗きんとんは終売していたので(基本、冬だけの商品なのね)、最初に前を通ったとき気になっていたし「すや」へ赴く。素朴な和の店構え。開店直後だったので、客は自分一人。薄暗い、けれど清廉な感のあるしつらえ。店員さんにお土産として栗きんとんを注文(あとから食べてみて、自分は栗きんとんにするよりも、やはり栗は焼き栗で食べたいなぁと思いました。小布施を旅したときも書いたけれど、なぜ国産の焼き栗て少ないのだろう)。さて、中津川をあとにします。きっとまた木曽路を歩くことはあると思うので、また会う日まで。

 そうしてあとは名古屋へ出て、以前じっくりと見ることのできなかった有松へ。まずは2度目となるKONMASAさんのビルでお茶をする。アートのお話と鑑賞(自分の書いた小説も飾られています)。その後は中山道ならぬ東海道、有松の町並みをゆったりと歩く。天満社でお参りし、またまた動画を撮って、有松をあとにする。
 その後、また名古屋へと行き、いつもは土産を買って帰るだけだった「味仙(みせん)」で台湾ラーメンの辛さにむせぶ。というわけで帰りは、東海道新幹線で一直線。動画もあるため、文字数は今までよりぐんと減りましたが、以上、中山道を行き、東海道で帰る旅でした。お粗末様でした。
 というか一ヶ月以上前のことでも結構覚えていますね。
 ではまた。

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