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2023年9月 どこかにビューン旅4(浦佐編)

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 一本指を立て、店内へ。自分が本日初めての客のようで、座敷がいくつかとカウンター席が。もちろんカウンターへ。ほどなくして大将が奥から出てこられる。とりあえず日本酒は呑み損ねたのがあるから、今日は生中で。それに合うとなると、カウンターの目前の冷蔵ケース内に、色々入っていて砂肝が見えたので串焼きで。ほんでもって海鮮食べたかったし、イカ刺し。
 と、少しして小ぶりなアジフライが二尾。これがお通し。やっぱビールで良かった。お通しにも関わらず揚げ立て。ソースを絡めてうまし。そうしてイカ刺しと、砂肝の串焼き4本が350円て安いだろうて。味は格別うまい! という感じには自分はならなかったが、でも値段も含めてこういった雰囲気が良いのです。っと、そんなところで会話を。
「自分が無学で申し訳ないのですけれど、店名のひさごってどういう意味ですか?」
 と尋ねれば、大将、自分も分からないとの回答。瞬間的に今朝のパンダ騒動が頭に過ぎる。何でも昔はこのあたりのお寺に名付けを請け負う坊さんがいたらしく、その人に頼んでつけてもらった縁起の良い名前とのこと。ちょっと無粋かなとも思えたので、「どんな意味がネットで調べていいですか」と伺いを立てて検索すれば、ヒョウタンという意味があるようで。確かに瓢箪だ。またはヒョウタンを縦に切った形を利用して柄杓として使われたなんて昔話も見つかる。お寺の方ということなら、手水舎の柄杓という連想もあったかもしれない(今調べたら、酒器としても使われていたようだから、そっちのほうかもね)。なんて話をしていたら、新たにお客さん二名。ホワイトボードのメニューが一枚しかなくお座敷のほうに持って行かれたが、そのお客さんが自分(渡辺)の位置からでも見やすいようわざわざ向きを変えて下さる。ありがとうございます。
 というわけでお次はハムカツとアスパラバターを注文。立て続けにオーダーが入っていて忙しそうだったので、自分のはゆっくりでいいですよとお伝え。ビールはお替わり。まぁのんびりやりましょうや。しかし一皿一皿の量が多いから、結構お腹にたまるね。
 しばらしくしてからハムカツ。やぁ美味しい。付け合わせにサラダとポテサラ。もうしばらくすると、バターの香りが漂いだし、マヨネーズの添えられたアスパラガスがやってくる。同じ付け合わせ。あぁうむ。これも結構な量だ。まぁでも美味しく食べていく。そうして常連であろうお客さんがいらして、またもや厨房は少し賑やかに。ビールと一緒にゆっくりと料理を味わい、良い腹心地に。昨日のこともあったし、今日は控えめにしましょうとお会計。多分ビール3杯は呑んだと思うが、3000円。安い。そんなこんなでごちそうさまとお店をあとにして、ホテルはすぐ近くなのだけれどわざわざ駅前まで行って、新幹線駅特有の横に長い駅舎の明かりを眺める。観光資源のあまりない町を旅したい、というよりは、新幹線駅があって、でも少なくとも観光地としてはあまり賑わっていない町、というのに何だか少し惹かれるものがあるのです。

 ホテルに戻り、小さめの紙コップでもあったら先日から持ち越しの日本酒でもやろうかと思ったが、ないとのこと。部屋にあるのはマグカップのみ。さすがにそれはなぁ。もっとちびちびとやりたいんだが……と、アメニティの中に使い捨てのマウスウォッシュがあって、あぁ、その中身を空にしたら、容器は日本酒に適しているだろう。てなことを考えるが、さすがに洗浄液が入ってた器に日本酒ってのは、とククク。そのほかペットボトルのキャップやら考えたけれど、馬鹿らしくなって家に持ち帰ることにしました。まぁ、おつまみのポークジャーキーは食べたけどね。というわけでもう一度大浴場で温まって、眠りにつきます。おやすみなさい、浦佐。

最終日

 朝。新幹線がさぁっと通過していく走行音がうっすらと枕元に。
 少しうとうとして一階の朝食会場に。ガラス張りの向こうは小雨。朝食はあまり珍しいメニューはなかったけれど、ちゃんとした和定食で美味しかったです。牛乳もいただきます(どうしてホテルの朝食についている牛乳はどこもうまいのだろうか)。
 さて、雨がやむまでぼんやり。顔を洗うついでにもう一度大浴場へ。普通のお湯なのに、昨日の温泉より入ってやがるとおかしくなる。
 雨の止み間を見計らってチェックアウト。施設は少し古いけれど、いいホテルでした。というか歯ブラシが使い捨てなのにちゃんとしててびっくりしました。お世話になりました。

 小雨の中、川向こうの八海山にご挨拶をして土手の上を歩いて行く。初日からそうだったけれど、川の中に入って釣りしている人を結構見かける。橋を渡り、ちょっとした住宅街を抜けて、田んぼの中に佇む工業地帯へ。が、すぐ向こうに見えるのに、なかなかたどり着かない。しまいには雨が強くなってきた。ようやくここでずっと持ち歩いていた折りたたみ傘が役に。できることなら靴先が濡れる前に軒下へ。
 というわけで辿り着いたのは魚沼醸造。こんな書き方をすると酒蔵みたいだけれど(まぁ、そういう目で醸造という二文字を見つめたのは否めない)、現代的なとってもきれいな工場。その見学施設です。ここは糀(こうじ)の工場で、甘酒をメインとして発酵食品をつくられているのだとか。ただ見学には予約が必要で、昨夜見たらすでに予約でいっぱい。当日も空きがあれば、という感じで、自分が着いたときには客は自分しかいなかったので少し期待を持ちつつ、カウンターに行けば今日は団体予約が入っていて午後なら、とのこと。さすがにそこまでは待てないので見学は見送ることに。といわけでガラス張りの広く清潔な施設内で、予約不要でも見れる展示物を眺めていく。
 日本酒造りに欠かすことのできない麹(こうじ)。そうしてこちらでつくられている糀(こうじ)。どっちも同じ響き。違いはなんだろうと思えば、ただ単に字の違いというだけで、麹は中国からの漢字で広義的な意味で穀物を蒸してコウジカビを繁殖させたもので、糀は日本独自の漢字で米由来のコウジカビのことを指しているのだとか。なあんだ。と、階下が何だか賑やかに。すぐに「団体予約」の中身を知りました。「こんにちはー!」と元気いっぱいに階段を上がってくる子供たち。小学校3-4年くらいでしょうか。そのままシアタールームへと進んでいきます。わぁ、社会科見学だ。何だか懐かしくなっちまいまいした(行きのバスで酔って吐いた思い出が特に)。しかし小学生が糀、甘酒を学んでも親近感が湧くものだろうか。とりあえず自分が翻したクイズパネルの答えを戻しておくことにします。ついでに何かいただこうかと、糀甘酒ソフトクリームの浮かんだクリームソーダなんかを食べちゃう(飲んじゃう)。もうしばらくしたら、ここも賑やかになりますよ、と店員さん。まぁ、子供の賑やかさも悪くはないけれど、長居する時間もないし退散しておきましょうか。で、クリームソーダ。色からして懐かしいものでした。ソフトクリームも何と言えばいいのか、優しい甘さで。そういえば発酵食品の資料ということで、昔のお酒の広告グラフィティなるものを少しばかり読み込んだ。まぁ今も大して変わらないが、女性がモデルとなっているものが多いこと多いこと(当時はすべてイラストだけれど)。たまに夏目漱石めいた口ひげを生やした男性も出てくるが、どうしてお酒(今は特にビールのポスター)の広告は女性が多いのだろう、当時で言う水着を着ているものまで。単純に考えれば、スケベ心から男たちが釣られるからだろうか、やっぱそれが売り上げに繋がるんだろうか、なんてことを思う。

 さて、魚沼市と書かれた子供たちの乗ってきたバスの前を通り、魚沼醸造をあとにする。雨も止んできた。だだっぴろい田んぼ地帯を歩いて行く(余談だけれど、だだっ広い、と書いて半濁音で読ませる記述って他にあるだろうか。開けっ広げ。開けっ放し。あったわ)。橋を渡り川を越えていくと、歩道にぶどうっぽい畑が点々と。というわけで南魚沼にはワイナリーもあります(ここも雪室貯蔵だった。ちなみにビールは初日に寄った魚沼の里で造られていた)。公園内を抜けて、まっすぐと向かえば浦佐駅が見えてくる。戻ってまいりました。そうして良い時刻。最後のお昼は予め決めておりました。
 国内外問わず様々な受賞歴のあるファミリーレストラン、浦佐駅前の小玉屋さんへ。もうメニューが色々あって迷ったけれど、人気のハンバーグと中落ちカルビの鉄板焼きセットにライスとコーンスープ。これがめちゃくちゃうまかった。とっても肉々しい味。価格も結構攻めてるけれど、それ以上の満足感がありました。というか、観光客っぽくない見た目だったから浦佐でお仕事している人かもしれないけれど、店内は外国のお客さんが何だか多いような。まぁ、とにかくとっても美味しいランチでした。ここはまた機会があれば、ぜひ食べに来たい。お店の方にも、とっても美味しかったです、とお伝えし、浦佐駅へと。
 お土産屋はなく、駅構内のニューデイズでお土産をいくつか扱っているという感じ。新米でもあれば、と思ったけれど、昨日の志んこ餅が箱で売っていたので買い求める。あぁ、これは良いお土産だ。

 そんなわけでホームに水飲み場のある(昔の公園にあるような、丸く細い蛇口が天を向いているやつ)ホームで、帰りの新幹線を待ちます。いやはやかなり楽しめました南魚沼、六日町、そして浦佐。
 またいつかどこかにビューンを利用して、こういった旅をしたいものです。では長々とお付き合いありがとうございました。アイお世話!

 そしてお知らせですが、来年一月に展覧会を開きます。
 詳細はまたいずれ投稿しますが、まずは告知の動画を。
 それでは。


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