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劇音楽作曲家にとって作曲技術より大事なものが何かをご存知でしょうか。

座学以上、実践形式で

ミュージッククリエーション専攻の映画音楽の授業「フィルム・スコアリング」では、私が実際に音楽を担当した映画やドラマの映像を監督や制作会社からお借りして教材として使用させていただいております。

実際にプロの監督が演出し、プロの俳優が演技し、プロのカメラマンが撮影した、プロの編集が入った、プロの美術が、照明が、、、、と、並べるとキリがありませんが、そういった完璧な映像を教材として使用させて頂いております。

そして、実際にその映画やドラマの音楽を担当した作曲家(私です。)が、どのように音楽をつけていくのが良いのかを指導しているのが、本専攻のフィルムスコアリングです。

でもね。この授業には圧倒的に欠けているものがあるのです。
それは、監督との対話です。

監督との対話

このnoteのタイトルの問い「劇音楽作曲家にとって作曲技術より大事なものが何かをご存知でしょうか。」の答えがこれですね。
作曲技術より大事なもの、それは「監督との対話」なのです。

監督はどのような思いを持ってその映画を企画したのか、脚本にはどのような思いを込めたのか、俳優には何を語ったのか、撮影には何を込めたのか、音楽に何を求めているのか、これらを監督との対話(生の言葉)を通して自身の身体に取り込み、音楽に変換できてこその劇音楽作曲家なんです。

作曲が上手なだけでは何の意味もないのです。

ところが、自主映画が昔ほど盛んではなくなった今、劇音楽作曲家を目指す学生にとって、監督との対話を通して音楽を作るという機会を得る事が難しくなってきているのです。

どうにかしたい。

武蔵野美術大学とのコラボレーション

そんな時に声をかけてくださったのが、武蔵野美術大学で映画制作を教えておられる岡太地監督でした。その内容とは「武蔵美の映像学科とミュージッククリエーション専攻の学生でコラボしませんか?」というとっても素敵なお誘いでした。

断る理由はありません。食い付き気味で、「やります!」と即答。

締切のプレッシャー

そこから、武蔵美の学生さん達が作った映像作品に、うちの学生が音楽をつけていくという制作が始まった訳ですが、うちの学生達が宿題の提出期限とは違う、「作品作り」という締切からくるプレッシャーに目を白黒させている様は、とても微笑ましかったです。何故なら、その瞬間瞬間にとても成長している様子が見られたからです。
宿題には責任も名誉もありませんが、作品作りにはそれらがあるので、そういうのがとても良いのでしょうね。

大学で私と話をしているだけでは駄目なんです。同世代のクリエイターと意見をぶつけ合わせて、神経すり減らす事がいかに大事かを学んでくれたのではないかと思っています。

上映会

十三シアターセブン


そして作品は完成し、武蔵美での講評会とは別に大阪でも映画館(シアターセブン)を借りて、上映会を企画しました。
その上映会には武蔵美の学生さん達も駆けつけてくれて、とても温かく有意義なものとなりました。(トップの写真は今回のコラボに関わった両大学の学生達です。皆さん、とても素敵です。)

作曲を担当した学生

感想戦(飲み会)

そして、映画を作ったらするべき事は唯ひとつ。作った作品や世にある映画を肴に映像制作についてとことん話し合う事です。

そう。感想戦(飲み会)ですね。
その中で次回作の制作についての話なども持ち上がっていました。素晴らしい。

余談ですが、今回のコラボと上映会の為に奔走してくださった、作曲家の侘美秀俊さんと彼らの感想戦を横目に見ながら、牛タンをつつくのはとっても良い時間でした。

はい。今回は映画音楽作曲家にとって大事な監督との対話についてでした。

また、この場で学生の頑張りを伝えていけたらと思います。
ではでは次のnoteで。

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