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FF7R:既知なのに未知な不思議な体験

 ファイナルファンタジー7リメイクが発売になったと発売日当日にTwitterで知り、一応原作にわかファンとして、どんなもんなのかと3人ほど(NottinTVさん、ゆうなchannelさん、中川翔子の「ヲ」さん)のゲーム実況を拝見した。

 もう観ているだけで楽しすぎて嬉しすぎて、(バトルタイムを除いて)全く目が離せなくなり、何時間と浸ってしまった。「リメイク」という言葉の定義が変わるんじゃないかと思うくらい素晴らしいものだった。


 原作が発売されたのは1997年で、私まだ9歳。9歳…。ゲーム機は初代プレイステーションで、「FF初の3Dポリゴン」というのがよく聞く触れ込みだった。今見るとカクカクしすぎて不自然だけど、当時としては超画期的で、FFの世界観というものに没入できる凄いゲームだと思った。また当時の競合「ドラクエ」(株式会社エニックス)との映像美による差もすごいもので、「CGのスクウェア」というフレーズが懐かしく思い出される。のちにスクウェアとエニックスが合併して「株式会社スクウェア・エニックス」という単純に社名同士をくっつけただけの会社名になると知った時は、幼いながら目ん玉が飛び出るほどびっくりしたのを覚えている。日本でトップ2のRPGを発売しているライバル社同士が統合って、 うまくやってけんのかよ、毛色が違うのでは…、と。


 そもそも私がどのくらいFF好きだったかというと、原作のプレイと父&兄のプレイ視聴に加えて、『解体新書』という解説本を読み込んだり、兄が買ってきた『ファミ通』の該当ページを読みあさったり、ゲーム中に流れる音楽の楽譜を買ってきてピアノで弾いてみたり、更に言えば女性キャラクターのイラストを真似て描いてみたり、同人誌(?)、ドリーム小説(?)を見つけては夜中に読んで感慨にふけるというところまでいっていた。まだ携帯がFOMAのiモードでパケ死を恐れている頃だったと思う。


 こう書き出してみると、私はゲームとしてのFFよりも、物語や世界観としてのFFが好きなのだなということがあらためてわかる。そして私と同じように思っているユーザーはとても多い(ということを昨日今日のゲーム実況内のチャットで再認識した)。


 なので、自分の手でクリアできなくても、まぁ、構わないのだ。兄や父や他の誰かがラスボスと世紀の戦いをして、勝ってエンディングに向かえることが私の喜びだったのだ。自分がプレイして買ったわけではないのに、エンディング映像を見て一番感動していたのは私だと思う。YouTubeでのゲーム実況とまさしく同じ。


 で、FF7リメイクの何がすごかったかというと、ただでさえ素晴らしかったFF7の骨格に、最大の想像力が駆使され、最上の肉付け・最高の増強がなされている点であると思う。キャラも世界観も不動のものなのに、深掘り度合いが凄まじすぎる。


 そもそもFF7リメイクが発売される前まで、私の中でFF7シリーズ評は右肩下がりだった。日本だけでなく世界でも人気を博しているせいなのか、関連作品のリリース数がすごくて、FF7以前の物語だとか、FF7後の物語だとか、別キャラ視点の外伝シリーズだとか、もう追いつけない、金儲け主義はやめろ、ぐらいに思っていた。というかゲーム産業自体にもうほぼ興味を失っていて、3DSとドラクエは買ったけどやる時間がなく、ドラクエウォークはイマイチつまらなくて、時々ゲーム音楽を聞いたり、麻雀アプリで遊ぶくらいなもんが楽しいと思えているほどだった。


 話をリメイク版に戻す。

 しょこたんのゲーム実況中の言葉はどれも的確で、こちらも一人で「うんうん」と声に出して賛同することが多かった。 その中でも印象に残っているのが、「うちらの“思い出補正”を軽く凌駕してるね」というような言葉で、まさに私たちが知っている、私たちが駆けていたFF7の世界が、何百倍、何千倍となってそこにある、というのが正直な感想だったのである。


 ストーリーにほとんど関与のないキャラクター、名も無い「ただの人」にも、家があり、生活があり、家族が居て、人生がある。夕暮れや夜空の景色、街並みから手すりの錆、壁の汚れや照り、人・街・ビル、世界の隅から隅まで、全体から細部までへのこだわりがとにかく凄まじい。


 「作り手の人生がかかっているね」「そりゃ5年もかかるわな」 「ってかよく5年で出来たよね」。しょこたんの言葉にまたうなずく。

 自分たちが体験していたFF7の世界、そこでの思い出。

 プレイしているのは確実にFF7(既知の世界)だという実感を持ちながら、私たちが全く知り得なかった世界がそこにある。既知なのに未知、これはとても不思議な感覚で、原作をプレイしたユーザーから度々漏れ聞こえた感想だった。「リアリティ」という言葉では全く足りず、リアリティを超えたリアルとしか今は言えない。これを他のユーザーと共有できたことはとても嬉しく、一方で原作未プレイの方も「初見でもめっちゃ楽しい」と言っていたのでホッとした。「あの頃は良かった」に戻らなくて済む。完全に未来志向の作品だと思う。


 そこで感じたのは作り手側の気持ちで、相当にこだわって、相当に議論を重ね、一切の妥協を考えずに作り込まれている印象が強い。目指すべき「完全」がどんどん底上げされていったプロジェクトなのかななどと思った。「もう金じゃないんだ。それは二の次で、自分たちが作りたいものを徹底的に作るんだ」という気概が、ゲーム画面から伝わってくるような気がした。


 「スクエニ本当にありがとう」


 ゲームをプレイした訳ではなのに、YouTubeを見ただけでこんな感想を書いて、申し訳なさが募る。PS4を買えるあてはないのだけど、何かスクエニさんに御礼がしたい。

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