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てのひら小説作品集

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愛媛の作家によるてのひらサイズの短い小説。 500文字以下の小物に印刷したら映えるサイズ。 それが「てのひら小説」です。 1000文字超えてても2000文字以上でも「いや、これが…
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#てのひら小説

雨と彼女

雨の日は嫌だわ 決まって頭が痛くなるの 前日から片鱗が ふわふわとまわりを漂って じわじわと…

水川ぽとす
2か月前
4

月あかり

どっぷりと暗い 暗闇の中を 煌々とひかる電車が ガタンゴトンと過ぎていく 銀河鉄道の夜 みた…

水川ぽとす
8か月前
6

しっぽ

化け猫は尾が9つあるという では5つ目の尾が生えた ミケはなんになるんだろう もう何年 一緒…

水川ぽとす
9か月前
2

カーテンの隙間から 明るくなってきたのがわかる また、夜が明けてしまう 眠れないまま ベッ…

水川ぽとす
9か月前
4

【極短編】冬の休日

いつもの時間に目が覚める 今日は布団から出ない 一日中、絶対に出ない 「一日を無駄にする」…

10

疾走

おへそのあたり からだのぐんと内側の方が 煮えたぎるようにあつい トットットットッ 早歩き…

水川ぽとす
9か月前
2

一歩

涙が出そうになって 下を向いたら かわいらしく咲いてる 花を見つけた 紫色で小さくて 丸くてかわいい花 かわいいと思いながらも こぼれ落ちる涙がいやで 上を向いた 夕焼けに染まった空は ピンク色できれい ああ、空はこんなに広くて綺麗 私はとてもちっぽけ 泣けるだけ泣いたら また一歩踏み出そう 怖くても 綺麗な世界を見るために 世界はもっときっと広い

冬の季節

冬が来た 妙に静かな外の空気に ああ、冬だと思う 雪は音を吸収するらしい だから冬の朝は  …

水川ぽとす
10か月前
4

風がザァーッと通り過ぎて 髪が顔に降りかかる 春 この時期の風は 透明な虹色 そこかしこに咲…

1

「あい」

私は小学1年生の女の子。 私の席は、教室で一番右側の最前列になります。 そう、私の出席番号…

鈍亀
1年前
4

境界線

夢の中に何度も 現れる場所がある 現実では見た覚えのない でもみると懐かしくて ここを知っ…

2

心筆スコープ 【ショートショート】

神社や寺院に保存されている、古くから伝わる書物などには「角筆」なるものが記録されているこ…

鈍亀
2年前
12

鳥居の向こう側

木々がそびえ立ち ところどころに影を落とす 日常とはどこか 切り離された空気の漂う所 少し…

9

ごちそうさま

私は長く生き過ぎた。病院のベッドの上で自分の意志では指先一つ動かすこともできないで横たわっていた。看護婦が体をふきながら聞いてきた。 「今日は何が食べたいですか?」  人間、体は衰えても食欲というものは衰えないものだ。 「そうねぇ、豪勢にフランス料理のフルコースといこうかしら・・・久しぶりにワインも頂くわ。デザートは私の大好きなプリンにしてね」  看護婦は点滴の針を刺しながら言った。 「ゆっくり味わってね」 「いい世の中になったわねぇ。点滴で栄養を送り込むだけでなく、食べたい