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てのひら小説作品集

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愛媛の作家によるてのひらサイズの短い小説。 500文字以下の小物に印刷したら映えるサイズ。 それが「てのひら小説」です。 1000文字超えてても2000文字以上でも「いや、これが…
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記事一覧

Melody

 北海道の冬は厳しい。除雪された雪をよけながら、陽平は久しぶりになじみの居酒屋を訪れてい…

冨永眞吾
2か月前
5

俺が悪霊を殺(や)る理由

3分間バトル小説「悪霊ハンター@MATUYAMA」   初出 2019年11月8日 ⚠️ショッキングなシ…

坊ちゃんを読んで

 小学生の頃、担任の先生に「素直さがない」と言われたことがある。きっと子供らしくない子供…

冨永眞吾
3か月前
8

牛乳パックの秘密

 「あれ、なぜだ?」  牛乳パックを再利用して作った金魚鉢の中の金魚が、いつのまにか水に…

冨永眞吾
4か月前
6

入学式

 生まれて初めてのスーツ。親から依頼を受けた背広の仕立て屋さんが、自分のアパートにやって…

冨永眞吾
4か月前
8

砂時計

ピ ピ ピ ピ 何か音がしてる ピー 走る足音がする 鼻に管があてられ 呼吸が楽になる 意…

水川ぽとす
4か月前
2

雨と彼女

雨の日は嫌だわ 決まって頭が痛くなるの 前日から片鱗が ふわふわとまわりを漂って じわじわと 頭をしめつけてくる それでも彼女は 雨が好きだという 濡れた草木は あざやかに色を放つ 降り始めの雨のにおい カエルが楽しげに歌い出す 考えただけで ほんの少しだけ いい気分になるの もうずいぶん 会っていない気がする ふと思い出しながら 雨の音に耳をかたむける 彼女は今も 頭痛薬を片手に やはり微笑むのだろうか

雨音と冒険

気づけば雨音がしている ポタポタ サー 周りの音が少なくなる たまに通りすぎる 車のタイヤが …

水川ぽとす
5か月前
4

肌寒さ

はあ、今日も疲れた くたくたになりながら 残業の後の夜中 月明かりの下自転車を漕ぐ 帰った…

水川ぽとす
5か月前
3

田舎町のタクシー

 「来月からうちの町のタクシー、午後10時までだってさ」  「え〜、じゃあゆっくり飲んでも…

冨永眞吾
7か月前
6

猫と一緒に暮らす犬の悩み相談

 私は8歳のバーニーズとニューファンドランドのミックス犬である。体重も40kgほどある。ご主…

冨永眞吾
7か月前
9

宝くじに当たったら

 私の母は宝くじマニアだ。若い頃は1回に5万円ほど使っていたらしい。定期的に5万円購入す…

冨永眞吾
7か月前
3

「ワイルドターキー、ロックで」

 バーボンはロックに限る。やや太めのグラスに氷を入れ、コトコトと手で揺らす。しばらくなじ…

冨永眞吾
7か月前
5

由布岳の輝き

 四国愛媛から一路湯布院を目指す。1時間のフェリー乗船の後、一般道路から高速道路に乗る。しかし、あいにくの雪模様の中、高速道路は通行止めに。仕方なく高速道路を降り、車のナビを頼りに別ルートを行くこととなった。  道は山道、山越えである。当然の如く、雪は深い。しかし、私の車は四輪駆動でスタッドレスタイヤをはき、南国愛媛にもかかわらず、寒冷地仕様の車だ。かつてタイヤチェーンを装着するのに2時間かけた上に断念した自分は、車を買うなら四駆と固く心に誓っていた。このような天候の1日のた